• 心もお腹も満たされて、長続き。「旨味」がダイエット成功の鍵!
FOOD
2018.11.02

心もお腹も満たされて、長続き。「旨味」がダイエット成功の鍵!

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ペンシルベニア大学で考案されたダイエット法「ボリュメトリクス」。要は、お腹いっぱい食べながら痩せる効果を出せる“かさまし食”で、『Tarzan』No.729では日本人向けにアレンジした日本版ボリュメトリクスを紹介している。毎食満足できる理由は、どうやら旨味にあるらしい?

1. 旨味を活かせば油と糖が少量でも満足できる

カロリー密度(CD)の低い食事で無理のないダイエットを行う日本版ボリュメトリクスを成功へと導く隠し味がある。それは食事の旨味を活かすこと。

「旨味は美味しさに火をつけるブースターの役割がある。糖質と脂質の摂りすぎは肥満の元ですが、旨味があれば少量の糖質と脂質でも満足感が高まり、食べすぎが未然に防げます」と語るのは、旨味研究に熱心に取り組む予防医学者の石川善樹さん。

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旨味は甘味、塩味、苦味、酸味と並ぶ5つの基本味の一つで、食べ物の深い充足感の決め手となる。食事は心もお腹も満たすのが鉄則であり、そうでないとボリュメトリクスも続かない。ここから旨味を活用してボリュメトリクスを成就させるための真実を探求していきたい。

2. あらゆる食べ物に旨味が入っているわけではない

旨味というと、和食の出汁を取るのに用いられる昆布のグルタミン酸、カツオ節や煮干しのイノシン酸、干しシイタケのグアニル酸などが挙げられる。

でも、旨味を含むのはこれらの限られた食材だけではない。たとえば、グルタミン酸はトマト、ブロッコリー、白菜といった野菜の他、パルメザンチーズや緑茶にも含まれる。旨味がない食材の方がむしろ少数派だから、食材本来の味わいを引き出す自然体の料理を心掛けると満足感が高まり、過食が防げる。

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例外的に旨味がまったく入っていないのが、植物油と真っ白な砂糖(精白糖)。アブラと砂糖はカロリー密度が高いうえに旨味がなく、いくら食べても脳が満たされないため、食べすぎに陥って肥満を招きやすい。アブラと砂糖がとくに多い加工食品やファストフードは控えよう。

3. 口の中が乾くと旨味を感じにくく太りやすい

口の中がネバネバしたり、口臭を感じたりしたら、唾液の量が少なくなっている危険信号。唾液が減ると、口腔内の細菌が増えてネバつきや口臭が起こってくる。何らかの原因で唾液が減り、口の中が乾燥するドライマウスに悩む人は全国でおよそ800万人に上るとされる。

「唾液には、旨味の元となるグルタミン酸が含まれており、食べ物の旨味との相乗作用で美味しさを高め、満足感をアップさせます。唾液が減って口の中が乾燥すると、旨味を感じにくくなり、満ち足りた感じが得られずに食べすぎたり、旨味の代わりにアブラや糖質を求めるようになったりするため、肥満につながる恐れがあります」

ドライマウスだと虫歯や歯周病にも罹りやすいから要注意だ。

4. 「唾液を出すなら酸っぱいものがいい」はウソ

減った唾液分泌を増やして、ドライマウス→旨味オンチ→デブという負の連鎖を招かないためにどんな手を打つべきか。

唾液を増やすというと、梅干しや柑橘類といった酸っぱい食べ物が頭に思い浮かぶ。確かに梅干しやレモンをかじったり、イメージしたりするだけでも唾液は増えるが、あまり長続きしない。それより有効なのは旨味。

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「東北大学大学院の笹野高嗣教授の研究では、舌が旨味を感知すると唾液反射が起こり、それが長続きするので唾液の分泌量が増えてドライマウスの改善に役立つとわかっています」

マウスウォッシュを使うように、出汁でうがいして1日数回舌の表面を洗うと、2週間ほどで唾液分泌が増えて旨味が感じやすくなるとか。試してみよう。

5. 味がわからない味覚障害は、亜鉛不足のせい!?

旨味を感じるのは舌に並ぶ細胞(味細胞)に備わった受容体。舌の細胞は10〜12日という極めて短いサイクルで入れ替わる。こうした細胞の新陳代謝に欠かせないのが必須ミネラルの亜鉛。細胞を再生する際、遺伝子を読み出すときに亜鉛が決定的な仕事をしているのだ。ゆえに亜鉛が欠乏すると味覚障害を招きやすく、亜鉛を多く含む牡蠣、肉類、チーズなどの摂取は味覚の正常化に貢献してくれる。

しかしながら、すべての味覚障害を亜鉛が足りないせいで起こると片付けてしまうのは早計。平均的な日本人は亜鉛の推定平均必要量(1日成人男性8mg、成人女性6mg)をきちんとクリアしている。亜鉛よりも影響が大きいのは、前述のように唾液が足りないことなのである。

6. 舌には旨味のセンサーがある

旨味の正体を世界で初めて発見したのは日本人。1908年、東京帝国大学の池田菊苗博士が昆布からグルタミン酸の抽出に成功したのだ。だが、残念ながら世界的には旨味はさほど重視されなかった。昔から出汁の素晴らしさに慣れ親しんでいる日本人にはにわかに信じられない話だが、舌をいくら調べても旨味を感じるセンサーである受容体が見つからなかったためだ。

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事態が急展開したのは21世紀に入ってから。

「2000年、マイアミ大学の研究者が旨味レセプターの候補を発見したと雑誌『ネイチャー』誌上で発表します。02年にハワード医科大学の研究者がレセプターを特定し、旨味の存在が世界中の科学者に認められるようになりました」。めでたし、めでたし。

7. 和食で痩せやすいのは旨味のおかげ!

和食はヘルシーなダイエット食の王様。低脂質でカロリー密度が低いから太りにくいのだが、旨味が強いのも痩せやすい理由。旨味を生かすのはなにも和食の専売特許ではないが、他国の料理は旨味を使ってもせいぜい1種類。

和食は旨味を含む醬油などの発酵食品を多用するし、昆布出汁+カツオ出汁のように複数の旨味を上手に使う。2種類以上の旨味を重ね使いすると美味しさは何倍にも跳ね上がり、少量でも充足感が高まるのだ。

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それを世界に先駆けて明らかにしたのは、デンマークの旨味研究者オーレ・モーリットセン博士。生まれて初めて巻き寿司を食べ、あまりにデリシャスで腰を抜かすほど驚いたのが、和食が秘めた旨味パワーの凄さに目を向けるきっかけだったそうな。

8. 歳をとるほど薄味に慣れて痩せやすい、なんてことはない

加齢とともにこってりして油っこいものが食べられなくなり、薄味に慣れて痩せやすいと聞く。でも、それは味覚が正常に働いているという条件付き。

加齢で味覚のセンサーは衰えやすく、唾液不足などによる味覚障害が加わると旨味に鈍くなって何を食べても味気なくなる。そういうタイプはアブラや糖質の刺激を求め、カロリー密度の高いクリームパンなどの菓子パンやスナック菓子を平気でパクつくようになり、太りやすい。

「とくに高齢者には持病を抱えて薬を何種類も服用する人が少なくない。薬には副作用で唾液が減りやすいものがあり、旨味に鈍感になる恐れがあります」

甘いものがやめられない両親や祖父母には前述の出汁を用いた味覚リセットを提案してみよう。

9. 旨味がないと歯がボロボロになる

食生活は味覚だけでなく歯にも影響を与える。歯が丈夫で咀嚼が得意でないと野菜たっぷりのボリュメトリクスは楽しめないが、旨味の少ない食事だと歯がボロボロになる心配がある。

最初に警鐘を鳴らしたのは1930年代に食生活と歯の関わりを研究したカナダの歯科医ウェストン・プライス。世界各地を回り、旨味が少なく砂糖と小麦粉と脂質が多い西洋の現代食を食べ続けると歯が脆くなることを見出した。

唾液には歯を守る働きもあるが、旨味に乏しい現代食だと唾液が出にくいうえに、虫歯菌のエサとなる砂糖などの糖質が多いから歯が悪くなりやすいのだろう。大事な歯を守るため、日々の歯磨きに加え、砂糖とアブラにまみれた太りやすい食生活をリセットしよう。

10. 「香りは旨味を倍増させる」は間違い

風邪をひいて鼻が詰まると、何を食べても無味乾燥に感じる。なぜなら脳に伝わる味覚の情報のうち、舌から送られるのは4割程度であり、残りの6割は鼻から送られる香りの情報だから。旨味が舌からの情報を左右するとしたら、香りの良し悪しは鼻からの情報を左右している。

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たとえ旨味に乏しい料理でも、合成した香料を添加して嗅覚を刺激すると食材の実力以上に美味しく感じやすい。「インスタント食品は香料の使い方が巧み。大盛りのカップ麺を飽きずに完食できるのも、添加された香料の配合が絶妙すぎるからです」。嗅覚は食材由来の天然の香りで満たしたいもの。人工的な香料で無理やり促された偽りの食欲に騙されて食べすぎないように。

11. 和食の次に痩せやすいのはペルー料理だ

ペルー料理と聞いてもいまいちピンと来ないが、料理界で現在もっとも注目を浴びる存在。首都リマの〈セントラル〉は有名なレストランランキングで世界4位に輝いた実績を誇る。「ペルー料理は旨味、香り、スパイスがベストバランス。南米の香辛料と食材にスペインの食文化が入り、日本や中国からの移民が旨味を伝えたのです」。

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ペルー料理の代表格セビーチェは魚介類を野菜とレモン汁と香辛料で和えるし、国民食ともいえる牛肉料理のロモ・サルタードには味付けに醬油が使われており、旨味、香り、スパイスのハーモニーが満足感を高める。ペルー料理を見習い、和食にも香りとスパイスを活かしてやれば、さらにヘルシーで太りにくい料理へと進化を遂げるかも。

取材・文/井上健二 イラストレーション/友田シトウ/取材協力/石川善樹(Campus for H)

(初出『Tarzan』No.729・2017年11月9日発売)

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