• 休肝日に医学的根拠はなかった! 酒飲みたちの言い訳を科学する
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2018.10.10

休肝日に医学的根拠はなかった! 酒飲みたちの言い訳を科学する

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週に1~2回、肝臓を休ませれば大丈夫。水を飲んで、汗をかけば抜ける。蒸留酒なら残らない…。酒飲みたちの言い訳は数あれど、度を越せば百薬の長も害をなす。なにが正しく、どんな飲み方ならカラダに負担を掛けないのかを科学した。数値管理を徹底して、健康作りに生かすべし。

言い訳1. 休肝日を設けてるから、他の日は深酒もOK

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適量の酒は百薬の長。だが、週に1回だけ“抜き”で、他の日は忘年会状態では肝臓はやがて音を上げる。適量とはほろ酔い、半酔いまでのこと。日本酒なら1~2合、アルコール換算で20~40g程度。この量で抑えられれば、休肝日を設ける必要はない。

ということは1週間で14合以内。これを7日間に振り分けるのが、酒との賢い付き合い方だ。でも、1回で2合では飲んだ気がしない! そんな呑み助なら1日に3合までとし、総量を守るため、週2回の休肝日を設定すれば、まずまずだ。

実は、休肝日に医学的根拠はない。毎日ひたすら働き続ける心臓に休日がないのに、肝臓だけ休まなければならないはずもないでしょ?

酒が健康によいかどうかは、結局、飲む総量と頻度で決まるのだ。

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存分に食べて飲んで、快楽の先に待つのはありとあらゆる異常。
厚労省が主唱する一大プロジェクト『健康日本21』が2000年にスタートして以来、肥満と高コレステロール以外は現状維持だが、2005年以降、高中性脂肪以外は急増した! 肝機能異常の数値もうなぎ上り。
出典/『2015年人間ドックの現況』公益社団法人日本人間ドック学会

言い訳2. 焼酎はあとに残らないから、カラダへのダメージが少ない

ワイン、ビールや日本酒のような醸造酒と異なり、蒸留酒の焼酎は糖質をはじめ、不純物が少ないから、飲み過ぎても体内で暴れず、“抜け”がいい。そううそぶく大酒家は多い。

確かに、焼酎は量を飲みやすい。巨大なペットボトル入りでもお手ごろ価格のものがあり、大酒家、アルコール依存症患者の多くは、ここに辿り着く。欧米ならウォッカだ。

だが、何を飲むにしろ、問題はアルコール量。アメリカでは2時間で5杯(※2杯が下のイラストで表現した日本の1単位に相当)以上の飲酒をビンジ・ドリンキング(大量一気飲み)として問題視し、こうした飲酒家の減少を図っている。

実は5杯どころか、4杯以上でも大量一気飲み。血圧は上昇し、脳卒中などによる急死や事故が増える。蒸留酒か否かが問題ではないのだ。

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言い訳3. 自分は酒が強いから、ある程度いっても大丈夫!

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わしは酒豪だから問題ない。わしの酒が飲めんかあ! 昨今めっきり減ったものの、いました昔、こういうおっさん。

確かに、飲める人がアルコールで“鍛える”と、代謝速度が3割くらい速くなるという。が、1合の酒の代謝には平均で約3時間を要する。4合も飲んだら12時間だ。翌日の仕事や自動車の運転に支障が出かねない。計算のうえ、自重すべし。

アルコールはそれ自体に発がん性があるほか、中間代謝物のアセトアルデヒドにも強い毒性がある。もともと体質的に飲めない人が、鍛えていくらか飲めるようになると、非常に危険。こういう人は食道にアセトアルデヒドを溜め込みやすい。おかげで食道がんのリスクは約5倍に跳ね上がる。大酒飲みとはカラダを壊すまで飲める人、なのだ。

言い訳4. 日本人はアメリカ人より酒飲みが少ない!?

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ドイツ人は朝からビールを飲み続けるし、ロシア人は急ピッチでウォッカをあおり、アメリカ人はバーボンでわっしょーい。そんなイメージを勝手に抱く日本人は少なくない。

彼らはカラダもでかいし、多少飲んだくらいでは酔わんだろう。それに比べれば、日本人の酒飲みなんかかわいいもんだ。そう思っている。

現実は全然違うのだ。2015年5月、経済協力開発機構(OECD)が世界40か国の飲酒状況を調査した。その結果によると、国民1人当たりアルコール消費量で日本は加盟国の平均を下回ったが、日本国内の全アルコール消費量のうち7割を消費するのが、実は人口比2割の呑み助。この連中が飲む量は英米仏よりも上!

日本では一部の大酒飲みが飲んでいる。実はこれアメリカでも同じだとか。いやはや、困ったものですね。

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実は飲まない人が4割以上。飲んでもせいぜい3合未満。
日本酒換算で4合以上たしなむ大酒家は、実はわずか4%と超少数派だ。なお、赤ワインのポリフェノールによる健康効果には疑惑が。適量のアルコール自体の効果であるらしい!

言い訳5. 飲み会前の乳製品が胃を守ってくれる

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今夜は飲み会だから、出発間際の職場で牛乳をぐいっと。あるいはチーズをひとかじりで、胃腸に乳脂肪の保護膜を張って、準備万全!

てなわけがない。アルコールは非常に小さな分子であるうえ、水にも油にもよく溶けるため、仮に油脂の膜があったとしても、瞬時に通り抜け、五臓六腑に染み渡る

しかも、空腹のまま飲めば吸収は最速。消化器内のアルコール濃度を急上昇させないためにも、何かを食べて濃度を薄めることが肝心だ。とはいえ、これは吸収速度を遅くするだけで、吸収量は変わらない。

また、酒量の多い人向けに販売されているエキス類、ドリンク剤、サプリメントなどは明確なエビデンスが乏しい。とはいえ、飲んでみて結果が良かったら、プラセボ(偽薬)効果にもそれなりの意味はあるかも。

言い訳6. 翌日の運動やサウナで二日酔いはすっきり撃退できる!

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終電を逃したらサウナに泊まり、明朝たっぷり汗をかいたら、すっきり出社。いや、おいらは朝スイムで抜いてるよ、など次々と秘策を繰り出す呑み助。だが、本当に回復できている?

アルコールを代謝するのは肝臓だが、最終段階では酢酸になり、肝臓だけでなく筋肉でも分解され、二酸化炭素と水となる。ならば、運動やサウナで筋肉から汗を振り絞れば抜けていきそうなものだが、違う。汗腺には本来アセトアルデヒドやアルコールを排出する能力はない。汗や呼気、尿などから排出されるアルコールはせいぜい2~10%止まり。

そもそもアルコールには利尿作用があるから、二日酔いの朝はほぼ脱水状態だ。ここで汗をかけば、症状が悪化するだけ。飲酒中や直後の運動はタブーです。第一、酔いが抜けてないのに運動では、転倒したりでケガの元。給水し、静かに過ごせ。

言い訳7. 検査前に1週間断酒したら、数値が良くなって安心だ!

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ばんざい、今年もγ-GTPがセーフだった。でも、やってることはカンニングと同じ。その場逃れの節制は重大疾患の始まりを見逃す一因になりかねない。

γ-GTPとは飲酒などにより肝細胞が破壊されると血中に現れる逸脱酵素のこと。血液1ℓ当たり男性は50IU(国際単位)、女性なら30IU以下が基準値。100を超えたら脂肪肝の進行が疑われる。即座に受診し、再検査、必要なら治療を受けるべし。

適量飲酒なら心血管死、脳卒中、糖尿病などメタボ系疾患のリスクを下げるが、過剰飲酒は間違いなく死の確率を増す。さらに、アルコール度数の高い酒は食道がんや咽頭がんの一因だ。度数が20%に達すると、胃の血流も悪化する。水や氷で割って、せいぜい10%止まりとしたい。百薬の長も付き合い方次第だ。

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存分に食べて飲んで、快楽の先に待つのはありとあらゆる異常。
厚労省が主唱する一大プロジェクト『健康日本21』が2000年にスタートして以来、肥満と高コレステロール以外は現状維持だが、2005年以降、高中性脂肪以外は急増した! 肝機能異常の数値もうなぎ上り。
出典/『2015年人間ドックの現況』公益社団法人日本人間ドック学会

取材・文/廣松正浩 イラストレーション/林田秀一 取材協力/加藤眞三(慶應義塾大学看護医療学部医学部兼担教授、医学博士)

(初出『Tarzan』No.707・2016年11月10日発売)

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