ツボ押しを「ちゃんと」効かせるための8つのルール。

セルフのツボ押しにはそれなりのルールがある。確かな効果を得るために、これだけは知っておきたいセオリーを明治国際医療大学鍼灸学部教授、伊藤和憲さんに伺った。しかと頭に入れてから実践に移ろう。

取材・文/石飛カノ イラストレーション/Azusa 取材協力/伊藤和憲(明治国際医療大学鍼灸学部学部長・教授、鍼灸博士)

初出『Tarzan』No.891・2024年11月7日発売

教えてくれた人

伊藤和憲(いとう・かずのり)/明治国際医療大学鍼灸学部学部長・教授、同大学院鍼灸学研究科大学院研究科長・教授、附属鍼灸施設臨床部長。著書に『はじめてのトリガーポイント鍼治療』『トリガーポイントマップ』(共に医道の日本社)など。

ルール1.「同身寸法」で場所を探る。

まずはツボの探し方。「へそ下3寸」と言われても何のこっちゃという人、指で測るなら3寸とは人差し指から小指までの4指の幅のこと。基本単位の1寸は親指の幅となる。

「この測り方を同身寸法と言います。私とあなたの指の太さは違いますよね。カラダが小さい人のツボを私の手で測ってしまうと私のサイズになってしまいます。ツボの位置はその人の手で測るのが基本。たとえば、お子さんのツボはお母さんではなくお子さん自身の手で測ってください」

同身寸法で場所を探る

親指の第1関節の横幅が1寸。人差し指、中指、薬指を合わせてまっすぐ伸ばし、人差し指と薬指の第1関節のラインの横幅が2寸。人差し指から小指までの4指の小指の先と他の指の第2関節のラインが3寸。

ルール2.痛気持ちいいと感じる強さで。

親指の腹でツボをグリグリ刺激。だって押せば押すほど効果が期待できるはずだから……なんてことはない。強さはあくまで“痛気持ちいい”程度。

「逆に押しすぎるとカラダが過剰に反応してしまう。少し押すだけで痛い人は強く押してもあまり痛くない人に比べて不健康という印象がありますが、体調によって変化します。ツボを押すと押している側の指の爪の色が白くなるので、その程度の強さが適正。押す時間は3〜5秒を1回として5〜10回程度です」

痛気持ちいいと感じる強さで

ツボを押している方の爪の色が本来のピンク色から白っぽくなるのは、圧迫刺激によって血管が収縮し、血液が指先に行き渡らなくなるから。このくらいの強度で押すことを念頭に。

ルール3.掌や拳で刺激を変える。

ツボ刺激の方法は指で押すだけではなく、掌や拳で押す、指先や掌でさするという方法も。

「指で押すと圧が強くなりますが、掌で押すと圧迫する面積が大きくなるので圧が弱まります。複数の症状があってツボ周辺にいろいろな反応が出ているときは、弱い圧で全体を刺激するのがおすすめです」

拳で刺激する部位は顔や腰。腰は椅子の背と腰の間に拳を入れて上体を倒す、仰向け姿勢で拳を腰の下に入れるなど、体重を利用する手も。

「すごく痛いときは無理に押すのではなく、さするだけでもツボ刺激の効果が得られます」

掌や拳で刺激を変える

お腹周辺のツボが広く反応しているときは掌でじんわり押す。頰骨近くのツボは拳を握って押す。少し刺激するだけで痛みを感じる場合は指先や掌で優しくさするだけでもよし。刺激方法は体調と相談。

ルール4.一度に押すツボは4か所まで。

1回に続けて刺激するツボは1〜2か所。カラダの正中線上にある督脈や任脈のツボ以外は基本的に左右1対あるので、一度に刺激するツボは多くても合計4か所までとする。

「あまり多くのツボを押すと刺激が過多になり、揉み返しのような症状が起きてしまいます」

目が疲れていてお腹の調子が悪くて歯も痛い。そんなときは一番痛いところを優先する(この場合はおそらく、歯)。

「今日はAという症状に対処したら明日はBという症状に対処するというように、ツボをローテーションしていく方法もあります」

.一度に押すツボは4か所

一度に欲張ってツボを刺激すると逆効果。たとえば今日のターゲットは左右の掌にあるストレス対策のツボと左右の足の裏にある疲労回復のツボの4か所、というふうに優先順位を決めて刺激を。

ルール5.朝昼晩と時間を決めて。

思いついたときにツボ刺激。ぶっちゃけそんなやり方も悪くはないが、理想を言うなら朝・昼・晩、または朝晩と時間を決めて刺激したい。

「1日1回でもいいんですが、習慣をつけることに意味があるので時間を決めて最低でも朝と晩に刺激するのがおすすめです。たとえば、胃腸などは食後に活動するため、朝の決まった時間に刺激すると、胃腸が働くきっかけとなり、お腹の調子を整えてくれます。痛みがあるときは別として予防的にツボ刺激をするなら、カラダのリズムと合わせて定期的に刺激した方が有効です」

.朝昼晩と時間を決めて

とくに消化器や肺、腎や肝など内臓系のツボを刺激する場合、一日の内臓のリズムに合わせて刺激したい。これから内臓が動き出す起床後、内臓を休息させる寝る前など、時間を決めて予防措置を。

ルール6.症状次第ではお灸を取り入れる。

症状によっては押すという刺激より温めるという刺激が適している場合もある。掌で温めたりお灸によって熱を加えるような刺激だ。

「一番簡単なのはそのツボの周辺が周りと比べて冷たかったらお灸の方が有効、という考え方。その他、胃の痛みや腸の不調など、内臓の症状にはお灸の方が適しているといわれています」

内臓不調にはなぜお灸がいいと考えられているのか、その理由は分かっていない。しかし伊藤先生は次のように解釈する。

「脊髄に感覚刺激が入力されるとき、熱刺激と内臓からの刺激が近いところで処理されているので、相性がいいのかもしれません」

お灸も取り入れて

最も手軽なのはツボを指で押すという方法だが、他の部位と比べてツボ周辺が冷たいと感じたときは、ひと手間かけてお灸で刺激。こうなるともう立派なツボ上級者。より大きな改善効果が見込めるはず。

ルール7.身近なものをツボ押しに併用。

指で押す以外に、身近なものを利用してツボを刺激する方法もある。

たとえば特定のツボを選んでピンポイントで刺激したい場合は、米粒や小豆など突起物をツボに当ててテープで留める、タオルの結び目などをツボ周辺に当てる、刷毛などでツボ周辺を撫でるなど。

もっと強い刺激を与えたいときはテニスボールやゴルフボールを使う手もあり。

「痛みや凝りなど症状の範囲が広い場合は、使い捨てカイロを貼る、ホットタオルで温める、ドライヤーで温める、フォームローラーで刺激するという方法もあります」

短なものをツボ押しに併用

ドライヤーでツボ周辺を温める場合は、ツボに近づけて熱いと感じたら離す、熱さが収まったら再び近づける。これを何度か繰り返す。一定のリズムを繰り返すことでカラダが心地よさを感じるはず。

ルール8.ツボ押しに適さないタイミングも。

ツボ刺激は西洋医学では改善が難しいさまざまな症状にも対応する。ただし、もちろん万能というわけにはいかない。

「2週間ほどツボ刺激をしても効果が認められない場合はツボの位置が間違っているか、他の病気の可能性もあるので専門医などに相談を」

その他、ケガをしている部位へのツボ刺激はもちろんタブー。強い痛みや熱さを感じた場合は回数に達しなくてもただちに刺激をやめる。筋力低下や強い痛みがある場合はそもそもツボ刺激をしない。妊娠中は専門家の指示を仰いでから行い、刺激の弱いものから順番に押すべし。

ツボ押しに適さないタイミングも

ツボの中には子宮を収縮させる働きがあるものもあるので、妊娠中むやみにツボ押しをすることで、母体に悪影響が生じることも。必ずかかりつけ医に相談のうえ、安全安心なツボ刺激を。

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