一流アスリートも実践! パフォーマンスUPの骨盤メソッド“軸作り”を学ぶ
日常の所作からスポーツまで、あらゆるパフォーマンスに通ずる「軸」という概念。もともと備わっているものなので、誰でも簡単に作れるらしい。骨理学教授・廣戸聡一さんが提唱するこのメソッド。とくと読まれよ!
取材・文/黒田 創 撮影/小川朋央 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/天野誠吾 イラストレーション/西田真魚 監修/廣戸聡一(廣戸道場代表、骨理学教授)
初出『Tarzan』No.826・2022年1月27日発売
そもそも、「軸」って何?
立つ、歩く、走る、座る…。私たちはこれらの動作を何も考えずに行うことができるだろう。
「立つ動作」は、2本足で接地してカラダを直立安定させることであり、「歩く動作」は立位から片足ずつ踏み出しカラダを安定させたまま前に移動させること。
「走る動作」はその延長線上にある。そして「座る動作」は安定した立位から全身で地面を踏みしめることで上体を下降させることになる。
これらを行うとき、私たちは無意識のうちに「軸」を作ろうとしているのをご存じか?
「軸」と聞くとカラダの中心を通る一本の線を思い浮かべるかもしれないが、本来「軸」とは5つの関節のポイントによって作られるもの。それらが直線に並ぶことで、立っていても動いていてもカラダに本当の意味での“安定”が生まれ、より高いパフォーマンスを発揮することができる。
逆に言えば、5つのポイントを意識およびコントロールせず、「軸」ができていなければ、本来の力は発揮できない。では、どうやったら理想とする「軸」を作れるのか。
実は個々の骨格や関節の形状によって違いがあり、「軸」のタイプに沿ったエクササイズが必要となる。これらは後述のSTEP③で分類、説明を行っているのでお楽しみに。
まずは5つの関節のポイントがカラダのどこにあるかを知り、そのうえで万人に共通となる、簡単なエクササイズをやっていただきたい。
これらを習慣にすることで、いつしか無意識のうちに5つの関節のポイントを直線に揃えられるようになり、「軸」が身につき動作を思いのままコントロールすることが可能となるのである。
STEP① 5つの関節のポイントを学ぶ
「軸」を作るうえで基点となる関節のポイントは、首の付け根とみぞおち、股関節、膝、足裏の5つ。これらを垂直に揃えたとき、カラダは最も安定する状態となる。それを踏まえたうえで、すべての動きの基本となる立ち姿勢を体得しよう。
まずは両足を首の幅に開いて立つ。このとき両足の土踏まずに均一に重心が乗り、かつ土踏まずと骨盤の上に肩甲骨が垂直に立っているようイメージ。両足の土踏まずにできる「円」の上に、頭が乗っているような形を想像してみよう。
胸を張り、背すじを伸ばそうとする立ち方は×。この体勢では、体幹が柔らかく使えなくなってしまう。
STEP② 軸を意識してみる
基本の立ち方がわかったら、次にやってほしいのが「軸」を意識した簡単なエクササイズ。
5つのポイントを基点に左右均等に動くことでカラダの緊張が取れ、本来の動きを取り戻すことができる。無意識のうちにカラダに「軸」を作れるよう、毎日根気強く続けたい。
軸を意識したエクササイズ5つ
STEP③ 自分のタイプを知る
5つのポイントを揃えて「軸」を作れば動作のコントロールが可能となることは前述のとおり。しかし、「軸」の作り方は各々異なる。大まかには、足裏の重心位置で4つに分類が可能だ。4スタンスのうち、自分がどのタイプかを知り、「軸」を作るためのエクササイズに進もう。
A1タイプ|伸び上がる動きが得意
土踏まずの爪先寄り・内側に「軸」を作り、手足の指先や内側を中心にバランスを取る。「ダルビッシュ有選手がこのタイプ。肩を対角線上にある股関節と捻るイメージで連動させると大きな力が発揮できます」(廣戸さん)
A2タイプ|外側重心でスピンを作れる
土踏まずの爪先寄り・外側に「軸」を作り、手足の指先と外側を使ってバランスを取る。「足裏、膝裏、みぞおちの裏側で垂直軸を作ることができ、カラダの裏から伸び上がる動作が得意。錦織圭選手がこのタイプ」(廣戸さん)
B1タイプ|軸回転が素早いタイプ
足裏、股関節裏、首の付け根の裏側で垂直軸を作り、踵と手のひら、手足の内側を中心にバランスを取るのが得意だ。「沈み込むような要領で軸を回転させ、左右を入れ替えると動きやすい。本田圭佑選手がこのタイプ」(廣戸さん)
B2タイプ|躍動的にカラダが動く
土踏まずの踵寄り・外側で重心を取る。踵と手のひら、手足の外側を中心にバランスを取り、沈み込むような動きが得意。「肩を対角線上にある股関節と捻るように連動させると力強く安定します。田中将大選手がこのタイプ」(廣戸さん)
あなたはどの軸タイプ?
日常の何気ない動作から、軸タイプを判別できる。4つの動作を確認して、早速自分の「軸タイプ」をチェックしてみよう。
① ペンの持ち方
ペンや鉛筆を持ったとき、指先に力を入れるのがAタイプ。このタイプは指先で物を動かす傾向がある。逆に、手のひらを使ってペンを使うのがBタイプ。どちらが自分にとって持ちやすいかを見極め、タイプを判別しよう。
② 腕の振り方
人に対して手を振る動きでもA、Bタイプがわかる。手首をしなやかに動かして振るのがAタイプで、肘を使って腕全体を大きく動かすのがBタイプ。重要なのは、意識せずに手を振ったとき、どちらの振り方かで見極めること。
③ 立ち上がる動作
椅子から立ち上がるときの動作で1タイプか2タイプかを見極めよう。座った状態で他の人に太腿を内側に捻るように押さえてもらい、立ちやすかったら1タイプ。反対に外側に捻るように押さえてもらって立ちやすかったら2タイプである。
④ 腕を開く動作
指で輪を作り、腕を前から横に大きく開く。親指と人差し指で輪を作った状態で腕が開きやすい人は1タイプ、親指と薬指で輪を作った方が開きやすい人は2タイプ。チェックの際は、一回一回腕を下ろした状態から始めること。
STEP④ タイプ別に“軸作り”のエクササイズ
4スタンスで自分の「軸タイプ」がわかったら、次はタイプに合った動かし方を知ろう。負荷をかけるのではなく、自分本来のポテンシャルを最大限に引き出す目的のエクササイズだ。基本となる「軸」をインストールし、意識せずともそれに沿って動けるようになろう。