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「バイオロジカル検査」でわかること|最先端検査ってナンだ!? ①

自分の健康は「日々の己の選択」からの回答の一つ。自ら健やかさを獲得しに行く術を知っておこう。ヘルスリテラシーの高い人々に注目される「バイオロジカル検査」を解説する連載『最先端検査ってナンだ!? シリーズ』。今回は「オーダーメイド医療」について。

40の大台を迎えてからの同窓会で級友たちと久々に会ったとしよう。シワひとつなく髪もツヤツヤ、びっくりするほど若々しい彼女がいるかと思うと、ど、どうしたの? と尋ねるのも憚られるシワだらけ白髪だらけの彼がいる。学生時代はみな等しくぴちぴちの若人だったのに、この差は一体なに?

毎日の食事運動習慣生活環境仕事の特性ストレスのレベル、そして生まれ持った遺伝子。同級生一人ひとりは異なるルートを辿って今に至っている。その数十年の積み重ねが容姿の差となって表れるのだ。

それと同様、病気や不調の原因も「あなた」と「わたし」ではそれぞれ異なる。さらに現代は、未知のウイルス、身の回りの化学物質、知らずに摂取している食品添加物など、カラダに影響を及ぼすさまざまな要因が満ち満ちている。もはや十把一絡げで同じ診断、同じ投薬で根治するのが困難な時代と言ってもいい。

さまざまな条件が生化学的な作用を引き起こし、病気や不調の引き金になってしまう。不調を感じて病院を訪ね、あれこれ検査をした結果「原因不明」と言い渡されるのにはこうした背景がある。

で、近年、ヘルスリテラシーの高い人々に注目されつつあるのがバイオロジカル検査(以下、バイオ検査)だ。これは尿や唾液、血液などの情報から代謝のバランス、アレルギー、毒素の蓄積、遺伝子の働きに至るまで、生化学的状態を「見える化」し、問題点を洗い出す検査のこと。

となれば、『ターザン』も指をくわえて見ていられない。最新の検査について詳しく知るべく、連載形式で切り込んでいくことにした。手ほどきをしてくれるのは、日本国内でバイオ検査による医療をいち早く取り入れた本間龍介先生だ。

教えてくれたひと
本間龍介(ほんま・りゅうすけ)
本間龍介(ほんま・りゅうすけ)/スクエアクリニック副院長。日本抗加齢医学会専門医。米国抗加齢医学会フェロー。15年前から日本国内でバイオ検査を導入。

日本人は予防意識が薄い国民かもしれない。

「バイオ検査はここ15年くらいで、かなり進化を遂げました。検査会社は日本国内にはほとんどありませんが、アメリカには山ほどあります。ロジスティクスやITの進化で、アメリカの検査会社に尿や唾液などの検体を送ることができますし、データもメールで簡単にやりとりできます。

また、新しい論文が出たらその内容が遺伝子の解析結果に逐一反映されるので、常に情報がアップデートされていくんです」

最先端検査とは
従来の医療や投薬は年齢、体型、生活環境などによる、遺伝子情報とは無関係の画一的処方。バイオ検査が目指すのは個別処方だ。

その気になれば、己のカラダの最新情報を比較的簡単に入手することが可能。とはいえ、日本はバイオ検査の先進国・アメリカに比べて5〜10年くらい後れを取っているという。検査会社が国内にほとんど存在しないというのが、その証拠。

理由のひとつは、日本の保険制度がほぼ均一であること。残念ながらバイオ検査は保険適用外。ひとつの検査につき数万円の費用がかかるので、コストの高さがハードルを上げている。

「一方、アメリカの一部の保険ではバイオ検査の多くがカバーされています。検査をして対策すれば心筋梗塞や脳梗塞のリスクが減ります。すると、保険会社は1人につき毎年何百万円という出費を10万円程度に抑えられます。

アメリカでは1回の手術で1000万くらいかかることもあるので、予防にお金を投入した方がずっと安上がりというわけです」

非常に合理的。日本も高齢化社会で医療費は膨らむ一方。このままではいかん、ということで国は2000年頃から「健康日本21」の名のもとに、食事、運動、心の健康を管理し生活習慣病の予防や健康寿命の延伸を目指しましょうという運動をスタートさせた。

が、国民の方は笛吹けど踊らず。

「日本人は総じて予防するということに対する意識が薄いと思います。保険診療でオレの高血圧や糖尿病を治せ、と言う患者さんは未だにいます。新型コロナにしても世界に比べて患者数が明らかに抑えられているのに、マスコミも国民もみんな政府を叩いていますよね。

自分の身は自分で守るというアメリカ人に比べ、日本人は健康は国が守ってくれるもの、と思っている節がある気がします」

み、耳が痛い。

原因不明の不調の正体をバイオ検査で暴く。

ここで、自分の健康に向き合うモチベーションを高める耳寄り情報を。バイオ検査がもたらす光明のひとつは、医師にかかっても病名がつかない不調を改善する可能性があるということだ。

医療エリア技術のレベルがあったとして、昔のレベルはそんなに高くなくても1人の医者が多くのエリアをカバーしていました。現代の医療は特定のエリアの技術がすごく立っている状態。

心臓の弁膜や脳のグリオーマ(悪性腫瘍の一つ)には詳しいけど、それ以外は分からないというように。だからエッジとエッジの間に隙間が生まれている。それで分からないことは精神科や心療内科などに回されてしまいがちなんです」

最先端検査とは
縦軸は医療技術レベル、横軸は医療エリア。その昔の町医者はレベルは低いものの、すべてのエリアに通じていたが…。

本間先生の専門領域のひとつ、「副腎疲労」もエッジの隙間に潜む病態。これはストレスをコントロールする臓器、副腎が疲弊して原因不明の疲労や体調不良を引き起こすというもので、一般の病院で「うつ」と診断されることも少なくない。だがバイオ検査でストレスホルモンの代謝などを「見える化」し、サプリメントの投与で改善を図ることは十分可能だ。

ライム病って知ってますか? ダニが媒介する細菌が引き起こす感染症なんですが、これが原因で副腎疲労に陥ることが分かっています。アヴリル・ラヴィーンやジャスティン・ビーバーなどがライム病と診断されてアメリカでは大きなトピックになっています。畳文化の日本には少なくない患者がいる可能性が高いと思いますよ」

副腎疲労の原因はさまざまあるが、ようは「天秤」の構造、と本間先生は言う。

食生活や化学物質が毒副腎が分泌するホルモンが解毒剤だとします。副腎が疲れていても毒が少なかったら問題ありません。また毒が多くても副腎の許容量があれば大丈夫。その天秤のバランスが崩れたときに不調が表れます。そうした個々人の天秤バランスを評価するのがバイオ検査なんです」

オーダーメイド処方で日々の健康を担保する。

巷では盛んに「人生100年時代」などと言う。でも、白内障で視力は落ち、血圧は上がり、生活習慣病でカラダがボロボロ状態で長生きしても楽しいはずがない。バイオ検査で不調の原因を洗い出し、栄養や運動のコントロールや生活習慣を改善することでパフォーマンスは確実に上がる。ならば活用しない手はない。

不調のない人にとってもこうした技術は役立つ。たとえばサプリメントでミトコンドリア代謝の弱点をサポートすれば、そこそこハードな筋トレをしても筋肉痛を軽減することは可能。翌日の仕事のパフォーマンスアップに繋がる。

最先端検査とは
唾液などの検体から生化学的アンバランスを見える化する。なかでも遺伝子検査は数十万円と高額だが、一生ものの健康に役立つ。

「もちろん人によって対処法は違います。がんなのか心筋梗塞なのか、おじいちゃんおばあちゃんの死因は全員違うはず。それは代謝がそれぞれまったく違うからです。

さらに仕事がデスクワークなのか外回りなのか、ストレスがものすごいのかほどほどなのかでも代謝は変わってきます。“F=ma”のような一定の運動方程式のような数式は成り立たないんです」

自分の特性を知って長所は伸ばし、短所は極力目立たないようにする。これが現代人が自分の身を守る最適解と言えそうだ。次回からは、個別の検査レポートへ。

取材・文/飯田橋うらん イラストレーション/上田よう 取材協力/本間龍介(スクエアクリニック副院長)

初出『Tarzan』No.808・2021年4月8日発売