動きながら音楽を聴いているとインスピレーションが湧いてくる|TAKAHIROのトレーニングプレイリスト
世界最高峰のエンタテインメントコンテストで史上最高記録を樹立し、あのマドンナのワールドツアーにも参加した経歴を持つ世界トップクラスのダンサー。彼のプレイリストは“摩訶不思議アドベンチャー”のようです。
取材・文/村上広大 撮影/玉村敬太 ヘアメイク/中山智史(TRAVOLTA)
漫画『ドラゴンボール』からインスパイアされたパフォーマンスをはじめ、独創的なダンスで注目を集めるTAKAHIROさん。
過去には、世界一有名なHIPHOPエンタテインメントコンテスト『NY APOLLO Amateur Night TV Show』(Showtime at the APOLLO)で史上最高記録となる9大会連続優勝を達成したほか、2009年にはマドンナのワールドツアーに参加したことも。近年は、欅坂46やA.B.C-Z、SEKAI NO OWARIなどの楽曲で振付を担当していることでも知られています。
そんなTAKAHIROさんが、ダンスを踊ったり、振付を考えるときには欠かせないのが音楽です。童話、合唱、ジャズ、エレクトロニカ、POPSなど幅広く嗜みます。そのなかから今回は、特別なプレイリストを作成していただきました。
ロマンを求めて、歩き続けるのが好きなんです。
僕は歩くのが大好きで、休みの日になると「今日はおいしいご飯が食べたいな」とかなんとなく目的を決めて散歩するんです。
でも、なんとなく良さそうなお店を道中で見つけても、もっと先でおいしいものが食べられるもしれないと思うとなんだか気軽に入ることができなくて。究極の優柔不断です。そうしているうちにどこにも入れないまま時間が過ぎ去ってしまうことも多いんですけど、ロマンを求めてとにかく歩き続けるのがなんだかいいんです(笑)。
そもそも僕は、自分を追い込みたい気持ちが強いんです。待つ時間が20秒あるなら歩きたい。選択肢が電車と徒歩だったら、迷わず歩く方を選びます。そっちの方が鍛えられるから。
『ドラゴンボール』で孫悟空とクリリンが亀の甲羅を背負って修行するシーンがあるんですけど、僕にとってのそれが歩くこと。重たいリュックを背負って、もうダメだと思ったところから、さらにどこまで行けるかを楽しみたいんです。
なんでそんなに歩くのが好きかというと、パーソナルスペースを確保できた方がいろんなことを考えるうえで快適なんだと思います。
それに物事を考えるときは動きたいタイプ。だから、振付を考えるときも座って考えることはまずないです。血がいい感じに循環しているのかわからないですけど、その方が集中できるし、インスピレーションが湧きやすいんです。
僕にとって振付は、音に塗り絵をしている感覚に近いかもしれない。
ダンサーにとって欠かせないのが音楽です。振付を考えるときは同じ曲を何度もリピートして聴いて、イメージを膨らませていきます。僕にとってそれは、音に塗り絵をしている感覚に近い。何もない状態から段々と成長してダンスになっていく。それが面白いです。
あとは、日常や仕事のシチュエーションに合わせて、自分が好きな音楽でリフレッシュするようにしています。そのときに軸になるのが3つ。ものを考えるときの音楽、自分が癒されるときの音楽、自分がテンションを上げるための音楽です。
ものを考えるときの音楽は、作業の邪魔にならないものがいいので、歌のないインストの曲とかをよく聴いています。スロージャズとか自然音など。
自分が癒されるときの音楽は、自分が小さな頃に好きだったアニメのテーマソングとか童話とか。一度好きになったものはしつこく好きなんです。たとえば「流浪の民」は本当に大好きで。いろんな合唱団が歌っているので、バージョン違いのものをいくつも購入しています。
そして自分がテンションを上げるための音楽は、bpmがワークアウトに合うものを聴くようにしています。安室奈美恵さんの「Chase the Chance」はめちゃくちゃテンション上がります。以前、実家で曲に合わせて踊っていたら、飼っていた犬も興奮しちゃって噛まれたことがありました(笑)。
踊るためのカラダづくりが日課になっています。
普段のトレーニングは、基本的に同じメニューに取り組んでいます。まず音楽に合わせてワークアウトをして、その後に体幹トレーニングと筋トレ、そして再びワークアウトをして、最後にゆっくりと自分の動きを確認していく。これが日課になっています。
ただ、自分がプレイヤーとして出演する場合は、カラダを綺麗に見せるために別のメニューを追加することもあります。
たとえばマドンナのツアーのときは、上半身は裸で、しかもサスペンダーをつけることになりそうになった事も。もともと僕は細身なので、観てくれるお客さんにかっこいいと思わせるためにはかなり筋肉を付ける必要があったんです。
だから、マドンナ専属のトレーナーのもとで、1日の公演が終わって次の場所に移動してからホテルのジムで筋トレをして、それから食べる量も増やしました。吐きそうになるんですけど、トレーナーから「もっとだ、もっと食べろ!」って言われるんです。本当に鬼教官みたいでした。
ただ、増量すると同時に無駄なぜい肉を削ぎ落とす必要もあったから、部屋を一室借りて、魔法陣のように電気ヒーターを四方に置いて汗をダラダラ流しながらチューブトレーニングにも取り組みました。
そのときにやればやるほどカラダが変わることを実感しているので、今でも自信を持ってトレーニングに臨めている気がします。
TAKAHIROさんのトレーニングプレイリスト
- 「流浪の民」/ライプツィヒ放送交響楽団、放送合唱団
- 「TOUR DE FRANCE」/Kraftwerk
- 「Battle Zone 2000 Electro Zone Remix」/Def Cut
- 「GO」/ケミカル・ブラザーズ
- 「The Cabinet Of Curiosities」/VALENSIA
- 「Rasputin」/ボニーM
- 「UNDERLINE No.5」/RIP SLYME
- 「Chase the Chance」/安室奈美恵
- 「不協和音」/欅坂46
- 「青春の馬」/日向坂46
- 「憧れミステリー」/Waffle
- 「最終ページ」/久保田早紀
PROFILE
TAKAHIRO(たかひろ)/1981年9月4日生まれ。世界一有名なHIPHOPエンタテインメントコンテスト『NY APOLLO Amateur Night TV Show』(Showtime at the APOLLO)で史上最高記録となる9大会連続優勝を達成してプロデビュー。2007年にNewsweek「世界が尊敬する日本人100人」に選出。2009年にはマドンナのワールドツアーにも参加した。欅坂46・日向坂46・A.B.C-Z・矢沢永吉・SEKAI NO OWARIなどさまざまなアーティストの振付を担当している。「The fastest 20 m moonwalk」ギネス記録保持者。