【パラスポーツを10倍楽しむ豆知識】パラでもお家芸、水泳のはなし
パラスポーツは、パラリンピックをはじめとする障害者スポーツのこと。ユニークなルールから個性的な選手たち、最新鋭の競技用具など、奥は深いものです。そんな魅力の一端を紹介します。
取材・文/宮崎恵理 撮影/吉村もと
初出『Tarzan』No.781・2020年2月13日発売
早速ですが、ここで問題です。
次の障害のうち、東京パラリンピックに出場できるのはどれでしょう?
- 精神障害
- 知的障害
- 聴覚障害
- 内部障害
正解は、2の知的障害。東京パラリンピックで知的障害クラスがあるのは、陸上競技、水泳、卓球の3競技だ。パラリンピックでの知的障害の参加が始まったのは2000年のシドニー大会。しかし、大会後にバスケットボールでの不正が発覚したため、いったん凍結されてしまった。12年ロンドン大会から、改めて正式に採用された。
日本は、知的障害の水泳で、ロンドン大会平泳ぎで金メダル、16年のリオ大会では2個の銅メダルを獲得。世界で若手選手が続々登場するなか、躍進しているのが、東海林大(三菱商事)と山口尚秀(四国ガス)だ。
2人はともに、リオ大会以降に急成長を遂げてきた。19年9月にイギリス・ロンドンで開催された世界選手権で、東海林は200m個人メドレーで2分08秒16の世界新を叩き出して金メダル、100mバタフライで銅メダル。山口は、100m平泳ぎで同じく1分04秒95の世界新で金メダルを獲得した。
東海林は高等養護学校1年生の時にデビューし、18年に100mバタフライで55秒72という世界記録を樹立するなど、メキメキと実力を発揮。世界選手権では、緊張して前日の夜はよく眠れなかったというが、ゴールして電光掲示板の一番上に自分の名前を見つけると「ちょー、気持ちいい!」と、オリンピック大スターの言葉を借りた。
山口は、身長187cm、体重85kg、足のサイズ30cmというアスリートとして恵まれた体格を生かし、「水の抵抗が少ない泳ぎ」を目指して猛特訓を積んでいる。世界選手権では、「1キック、1ストロークをしっかり意識して泳いだ」。大好きなおばあちゃんが育てる野菜をもりもり食べて、力にしているという。ゴールした後、両手を合わせてお辞儀を繰り返し、支えてくれる人たちへの感謝を表した。
パラでもお家芸の水泳。知的障害の若い選手たちに、注目!