「マスクは自分の“色”の出しどころ」(アイスホッケー選手・福藤豊)
text: Kai Tokuhara photo: Takahiro Idenoshita illustration: Shinji Abe
初出『Tarzan』No.781・2020年2月13日発売
凄まじい速さで全方向から飛んでくる硬いパックから、身を挺して自陣ゴールを守る“ゴーリー”。まさに守護神という言葉が似合う花形ポジションで、長く国内屈指の存在感を放っているのが福藤豊選手だ。
日本人初のNHL選手として“本場”でのプレーを経て、37歳になった今も日本アイスホッケー界を牽引。福藤選手は、その原動力の一つにギア選びがあると断言する。
「アイスホッケーは身に着けるものが多いだけに、やはりギアがパフォーマンスに直結します。スケートは当然として、スティックはほんの少し長さやブレードの軟らかさが変わるだけで感覚がずれますし、ゴーリーマスクも視野や機動力に関係してくるので、どちらも自分のプレーする姿勢に最適なものを選ぶよう常に心がけています」
スティックはカーボン製が主流ななか、あえて木製を使い続けているのだという。
「カーボンの軽さに魅力を感じつつも、僕は木の方がシュートを受ける時の感触がいいんですよ。フィット感は本当に大事。幅が広くなる境目のテーピング部に持ち手が来るので、その片側を自分の手に馴染ませやすいよう削ったりもしていますから」
もちろん機能だけではない。氷上で“スタイル”を表現するためにゴーリーマスクのデザインにも強いこだわりを持っている。
「昔から好きなネイティブアメリカンテイストの絵柄をアメリカに住む知人のアーティストに描いてもらっています。ギアは安全性が一番。でも、“魅せる”こともアイスホッケーに欠かせない要素なんです」
スティックはアイスホッケー専門ブランド〈CCM〉のもの。フィールドプレーヤー用と異なり、シャフト下部がオールのような幅広の形状に。マスクはオーダーメードで、同じく〈CCM〉製のガード付き。「マスクは色やデザインに規定がないので、自分の“色”の出しどころでもあります」。