• なぜかくも筋トレにハマったのか|立川談慶の「腹割って話そう」(1)
COLUMN
2019.05.10

なぜかくも筋トレにハマったのか|立川談慶の「腹割って話そう」(1)

立川談慶の腹割って話そう(1)

筋トレが好きすぎる落語家・立川談慶さん。過去に『ターザン』誌上のベンチプレス選手権に出場し、また普段から週4日のトレーニングをこなすガチのトレーニー。そんな談慶さんはいかにして筋トレにハマり、また筋トレから何を学んだのか。〈Tarzan Web〉連載で、軽妙に語っていただきます。

というわけで、第一回目となる、〈Tarzan Web〉での連載。私、現在53歳となる筋トレ歴12年の落語家です。CX系『アウトデラックス』に「本業より筋トレを優先する落語家」として出演させていただいたり、プロテインメーカーのケンタイが発行する季刊誌に筋トレにまつわるコラムの連載を持ったり、そして何より週4回近所のジムに通い、ベンチプレスはMAX120キロを挙げるという中年肉体改造実行男であります。

実際、前述したテレビ番組でマツコデラックスさんにも「YOUは何しに落語界に?」などといじられました。「実際、仕事が優先だよね。そんなわけないよね?」とお客さんから尋ねられたりもしましたが、「週4回のジム通いのスケジュールをきっちりとまず管理した上で、そのあとで仕事やら打ち合わせなどを決めている毎日を送っている」という意味では、本業の落語の仕事より筋トレ重視を貫いているのですから、ある意味事実でした(笑)。だって、筋トレというのは、「カラダ作り」、もっというと「命作り」です。身体や命と仕事とを比べたらどっちが大事でしょうか?もうそうなると答えは言わずと知れていますよねえ。

そんなトレーニング至上主義男が語るこのコラムの題名は、「腹割って話そう」。文字通り、筋トレにまつわる話を忌憚なく面白おかしくしゃべるつもりで名付けたのですが、やはり12年もやり続けている目下の目標が、「腹を割ること=6パック」なので、ならいっそそれも兼ねてみようというご趣向なのであります。「落語家として、談志の弟子として言いたいことをズバズバ言いながらも、50代にして腹筋をバキバキに割ることが出来るか」。

二律背反のような目指すべき着地点にたどり着けますようにとの願いを込めて、そんなアクロバティックなドキュメンタリーを楽しみながら、毎月、落語を聞くような気軽なお気持ちでお付き合いいただけたら幸いです。

「頭重視」で頸椎ヘルニアに。

さて、第一回目のテーマが「なぜかくも筋トレにハマったか」。物事はなんでもキッカケが肝心です。私の場合は、12年以上前の「頸椎ヘルニア」がそもそもの始まりでした。これは、それまでに経験したことのない激痛でした。首の後ろの神経の集中した部分に釘が刺さっているような痛みといえばご想像いただけますでしょうか?

ロキソニンを大量に飲んでも痛みは消えず、一週間ほど苦しんでいた時、人づてに聞いたカイロプラクティックの名医のもとに駆け込みました。すると名医は、慣れた手つきで「3番と4番がズレていますね」と患部を指で押さえたかと思うと、瞬時にお悩み解決してもらってしまったのです。まさも「一発ググっただけ」の神業でした。こんなことってあるのかなと思っていましたら、「あくまでも今日の施術は応急処置です。筋肉でガードするしかありません」との言葉。「そんなに筋肉って、すごいんですか?」「はい! 変形性膝関節症を患って、膝関節の骨がすり減ってしまったおばあちゃんでも、足の筋肉を鍛え続けて、山登りすらできるようになったりします」。

「筋肉ってすごいんだな」。

申し遅れましたが、その当時までの私は、なんでも頭で解決する「頭でっかち男」でありました。頭を使って、大学にも入り、卒業後ワコールにも入り、退職後談志門下に入りました。談志もロジカルな人でした。「未来とは修正できると思っている過去」だの「愛情とは相互のエゴイズムのバランス」などとロジカルに分析し、「落語は人間の業の肯定」とまで定義した天才です。その元で真打ちにまで昇進しました。「頭重視」で40年以上生きてきた人間でした。

いわば、そんな傾斜生産的に頭ばかり大きくしてきたツケが、「頸椎ヘルニア」だったのです。

そんな時ふとささやいてくれたのが、カラダ中の筋肉でした。「な、談慶。俺たちいつでもお前のそばにいるからよ。俺たちを鍛えられるのはお前しかいないんだぜ!」。

内なる筋肉の声は、漫画『ROOKIES』のような不良野球部員のようでした。それに覚醒させられた格好となり、まずは西川口のボディビル専門のジムに通うようになりました。以来気が付けば、12年。あっという間の感じでもあります。

マイナス局面で筋トレと出会う。

そうなんです、つまり、筋トレとの出会いは頸椎ヘルニアという「マイナス局面」から。考えてみたら、マイナス局面からの出会いって、人間のリカバリー機能が働くせいか、いいことが多発するような気がしますなあ。日本の歴史においても、西洋諸国への遅れを取り戻そうとしたのが元となった「明治維新」、大戦の災禍から始まった「戦後復興」などを見れば一目瞭然でしょう。

いや国家という大げさなレベルではなくとも、実際いまのカミさんとの出会いは「お互い第一印象最悪同士」でもありました。カミさんは、大学時代ワコールの得意先でアルバイトしていて、私がそのお店の担当セールスという初顔合わせでしたが、カミさんは私のことを「全然使えない新人セールスマン」、私はカミさんのことを「小生意気な女子大生」というイメージしかありませんでした。それが、縁は異なもので、いまや結婚19年目。17歳と15歳の男の子にも恵まれています。

ま、とにもかくにも、最初からプラスの最高点から始まった事柄って、あとは落ちる一方という気がしますな。逆に、マイナスからスタートしたものって、失うものは何もありません。プラスだけですもの。

「あの頸椎ヘルニアの痛みに比べたら、へっちゃら」といまだに激しく追い込んだ時でもつぶやくようになっています。いまとなっては、あの頸椎ヘルニアにすら感謝しています。だってそれがなかったら、こんな楽しい筋トレに巡り合わなかったのですもの。ほんと以後、充実した日々を過ごさせていただいています。

それでは最後に、「筋トレなぞかけ」を。「ハードに追い込むショルダープレスとかけまして。モテない男と解きます。その心は、片思い(肩重い)」。

立川談慶

立川談慶さんの写真
たてかわ・だんけい/1965年、長野県生まれ。1988年に慶応義塾大学経済学部を卒業後、〈ワコール〉に入社。その3年後に独立し、立川談志門下へ入門。2000年に二つ目昇進、談志より「談慶」と命名。2005年に真打ち昇進。『大事なことはすべて立川談志に教わった』(KKベストセラーズ社)など著書多数。近著に『老後は非マジメのすすめ』(春陽堂書店)。

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雑誌『ターザン』765号