トレーニングが身につく! 12の鉄則
トレーニングが続けられる人には秘密がある。トレーニングが好きという人もいるけれど、みんながそうとは限らない。面倒だし、時にはツラいし、ラクしたいのは人間誰でも一緒。しかし、それでも続け、習慣として身につけた人たちのコツは、12個の鉄則に集約されている。
取材・文/井上健二 取材協力/<a href="/tags/nakano_james/">中野ジェームズ修一</a>(スポーツモチベーション)
(初出『Tarzan』No.704・2016年9月21日発売)
目次
1. 今すぐトレーニー宣言をする。
ダイエット宣言したら、3時のおやつに手が伸びそうになるだけで、周囲から「減量中でしょ!」と突っ込みが入るはず。
トレーニングもこっそり始めるのではなく、「細マッチョを本気で目指す!」と公言してアドバルーンを揚げよう。すると周りが冷やかし半分に応援してくれる。
さらに有効なのは、SNSや短文投稿サイトなどでエクササイズ内容をどしどし発信すること。予定通りに続けられたら「有言実行でさすが!」と褒めてもらえるだろうし、しばらく更新しないと「もう挫折?」と皮肉交じりの励ましが得られる。
影響されて鍛え始める知人が出てきたら、互いのログを交換。切磋琢磨しながら前へ前へと進んでいこう。
2. 1か0かではない。「0.3」でもよしとする。
運動が続かない人にありがちな困った発想がある。それが「1か0か(オール・オア・ナッシング)」という考え方。運動ができたか、できなかったかという二者択一で捉えてしまうのだ。
何をするかを決めるのは大切だが、できなかったときに「オレはダメ人間だ」と自ら失敗の烙印を押すのはNG。意欲が落ちる。
贅肉を絞るために5km走る。そう決めて5km走れたら成功率100%だが、3kmしか走らなくても達成率は60%。0%ではない。仕事帰りにひと駅手前で降りて歩いても、体脂肪を燃やす目的の20%は成就している。
「1か0か」という思い込みを捨てると「できなかった」という失敗体験が生じにくく、前向きになれる。
3. カラダを動かしたくなる場所に身を置く。
自宅トレは手軽だが、挫折するタイプもいる。人は環境に流されやすいので、自宅のようにほっとできる空間で鍛えるには、頭の切り替えが必要。
一角にマットを敷いたり、ダンベルを置いたりすると、ギアがちらっと目に入るたびに「運動しなきゃ」とモードが切り替わりやすい。
ランナーだらけの皇居を通りかかると走ってみようと思えるもの。自宅で運動が続かないなら、近くの公園や河川敷へGO。走る、自転車に乗る、スポーツを楽しむ…。そんな姿を眺めるうちにカラダを動かしたくなる。
インドア派はジムに入り、通うだけ通ってみる。朱に交われば赤くなるで、やがて周囲に刺激を受けて筋トレに励むようになるかも。
4. カラダ作りは大プロジェクト。一人でやらない。
自己ベスト更新に挑むアスリートはコーチ、トレーナー、管理栄養士などのサポートを受ける。
同じく、私たちのカラダ作りにも手助けが不可欠。運動と無縁のタイプがワークアウトを続け、肉体改造にチャレンジするのは、運動選手が自己新を出すのに匹敵する困難さを伴う。そんな一大プロジェクトをたった一人で完遂できると甘く見ない方がいい。
ジムに入れば、運動面でも栄養面でも専門的な指導が受けられる。パーソナルトレーナーを付けたら、なお心強い。
お金をかけなくても、共に汗を流す仲間を作ったり、トレーニング系アプリを活用したりすれば、ひとりぼっちで取り組むよりカラダ作りプロジェクトの成功率は高まる。
5. カラダの社長はあなた。やるやらないは自分で決める。
忙しかったり、疲れていたりすると運動をサボりたくなる。どうするべきか。あなたが雇われの身なら、サボりたくてもしぶしぶ仕事場に出かけるしかない。
でも、カラダのオーナーはあなた自身。サボる、サボらないの決定権は自らに委ねられる。
やりたくないときに運動をパスしても誰からも文句は出ない。だが、仕事を1日サボると翌日ノルマが2倍になるように、一度休むとそのフォローのために次の運動量が増える。
選択肢は2つ。今日頑張るか、サボって次回2倍頑張るか。本当に疲労が溜まっているなら休んでOKだが、「何となくやりたくない」というサボり心が芽生えただけなら話は別。オーナーらしく責任ある行動を!
6. 細切れに達成感を得られる仕組みを作る。
意欲を引き出すポイントは、いかに達成感を得て自分を照れずに褒められるか。「できた! オレってスゴい」という金メダル級の感動があると、「次もきっと同じようにできる!」というポジティブな見込み感が得られる。
達成感は頻繁に得られるほど、やる気は途切れない。
大事なのは、最終的な締め切りを決めたら、そこに至るまでの中間目標を細かく定めて小さな一歩を評価する姿勢。月での一歩が人類に意味があったように。
3か月後に逆三体型に変身するために週3回筋トレすると決めたら3回ごとに「できた!」と成功のスタンプを押す。これだと1か月に4回達成感のご褒美が得られモチベーションは下がらない。
7. 好きな種目を探す。好きな種目からやる。
食べ物なら好物を先に食べるなり、最後に取っておくなり、ご自由に。でも、運動をドロップアウトしたくないなら、好きなものから先に始めた方がストレスは少なく継続性が高まる。
効果の最大化を目指すなら理想の順番はあるが、効果的でも三日坊主で終わったら無意味。筋トレよりランが好きならランから、筋トレでもフッキンが苦手でスクワットが得意ならスクワットからやればいい。
いわゆるトレーニングだけではない。バドミントン、卓球、テニスなど、楽しめそうなスポーツを試して好きな種目に出会ったら、運動は自然に続く。
カラダを動かしている限り、体脂肪が燃えて筋肉がつくから、スポーツもボディメイクに役立つ。
8. 「ベース7」を守り欲張らない。
ジムに入ったばかりの初心者には、ズラリと並んだ筋トレマシンを律儀に全制覇しようと試みる人が多い。何が合うかがわからないうえに、運動経験が乏しいほど遅れを取り戻そうという意識が強いため、あれもこれもと欲張りがちなのだ。
「全身性の原則」に従って全身は偏りなく鍛えるべきだが、最低7種目で上半身、体幹、下半身の主要なパーツは強化できる。これを「ベース67」と呼ぶ。
ビギナーは複数の関節を同時に動かす多関節運動が苦手。関節を一つずつ動かす単関節運動がメインになるけれど、それでも7種目で事足りる。基礎ができて狙いが定まり、多関節運動で一度に複数のパーツが鍛えられたら、より少ない種目数で済む。
9. 締め切りを設定して頻度を決める。
5kg痩せる、お腹を割る、美尻になる…。そんな願望は「目標」ではなく単なる「夢」。夢を目標に変える第一歩は、締め切りを決めることだ。
たとえば、3か月後にゴールを設定したら、逆算して2か月後、1か月後までに何をやるべきかを具体化し、今週のタスクを明確にする。
次に逆算したトレーニング内容と頻度が実行可能かどうかを精査する。2か月後に3kg痩せるために週4回6km走るのがベストだとしても、初心者が週4ペースで走るのは難しい。
ならばウサギのようにせっかちにならず、カメのように着実に。平日1回+週末1回の週2回ならイケそうと思ったら、ゴールを先延ばしして4か月後にリセットすればいいのだ。
10. 客観的な指標でモニタリングする。
トレーニングは裏切らない。誰でも地道に続ければ見合った成果は必ず得られるが、それには時差がある。3日で見た目が変わることはあり得ないのだ。
「頑張っているのに効かない」という誤解を避けるには、初期は運動が続いているという事実を記録し、それを成果として認識する。
加えて重要なのは体重、体脂肪率、お腹まわりのサイズ、心拍数、時速といった客観的な数値の移り変わりをチェックする努力。
主観的には変わったように思えなくても、ミクロレベルで運動は肉体改造を進めており、客観的な数値の変化が先に表れやすい。数値で自らの進化が自覚できるようになったら、効果があると確信できて積極的に続けられる。
11. トレーニングの予定を先に入れる。
世界的な経営者には正しい経営判断を助ける環境作りを行うエグゼクティブコーチが付くとか。
コーチが初めにやるのは休みの予定を入れること。経営者が多忙で休めないと知力も体力も落ちて目が曇るからだが、この発想は大いに見習いたい。
エグゼクティブでなくても、運動で健康で快適なカラダが手に入らないと仕事のパフォーマンスは落ちる。忙しいから余暇にやるという姿勢では、運動は後回しになって常態化しにくい。
そこで、手帳を開いて、時間ができそうなところを見計らって先にエクササイズの予定を書き込む。運動の優先順位(プライオリティ)を高め、緊急事態が起こらない限り、予定通り粛々とカラダを動かそう。
12. トレーニングをイベント化しない。
運動が縁遠い人にとってはランも筋トレも非日常。前日から「明日は走らなきゃ」とか「頑張ってスクワットをやろう」と身構えていると、一種のお祭り、イベントになる。
生活に組み入れないと何事も続かないもの。特別視してイベントと捉えていると、習慣化は難しい。顔を洗ったり、歯を磨いたりするように、運動を非日常から日常へ転換しよう。
そして洗顔や歯磨きが続くのは、構える間もなく短時間でサクサク終わるから。同様に短時間で終わるメニューを作り、生活に紐付けたら、運動のある暮らしが当たり前となり、無意識に続けられて成果も得やすい。朝食前、帰宅後など、タイミングを固定するとより継続化しやすい。