「カラダを動かせばメンタルも上がり、自ずと表情や態度に表れる」森山未來さんのカラダとの向き合い方

毎日を生き抜く人々は皆アスリートだ。とは、どこかで聞いたコピーのようだが、生業によって用いるカラダが違えば、コンディショニングも違う。日課のコンディショニングで「心身のスイッチをONにする」と語る俳優・ダンサーの森山未來さんの独自メソッドを訊きました。

取材・文/門上奈央 撮影/角戸菜摘 ヘア&メイク/須賀元子

(初出『Tarzan』No.757・2019年1月24日発売)

習慣的に行うことで、カラダの変化に気がつく。

最近のコンディションは? そう聞くと、“あえて言うなら最高の状態です”と答えた森山未來さん。

俳優とダンサー、2つの顔を持つ表現者として常にパフォーマンスを磨き続ける森山さんが日課とするコンディショニング。それは、ヨガ、パンプアップ、ストレッチの動きを織り交ぜた独自メソッド。颯爽と稽古着で現れ、約20分間止まらずダイジェスト版を見せてくれた。

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ヨガ、パンプアップ、ストレッチを織り交ぜた独自メソッド。細く長く息を吸って吐く、そのペースに合わせて一連の動作を行って効率アップを図る。

「俳優業やダンサー業のためというより、あくまで習慣の一つですね。最初にライオンの呼吸と火の呼吸で呼吸を整えて、あとは一連の流れに沿って動き続けます。時間は特に決めていませんが、だいたい1時間くらいかな。習慣化したのは、文化庁文化交流使として1年間イスラエルに渡った2013年頃。その時々の自分のコンディションを認識するためには、やりたい動き・できる動きをやるのでは僕には向かない。自分に必要な基本の運動をルーティンとして持っておく方が“今の”カラダの声にも敏感になれると思い、一連の流れを自ら構築していきました」

「僕が取り入れているヨガは呼吸とカラダの動きを一体化させ、ポーズを止めることなく行うヴィンヤサです。またストレッチ中も筋肉を伸ばすというよりも縮むことに意識を向けるので、結果ストレッチとパンプアップを兼ねた動きになる。不必要な筋肉をつけて怪我をすることはとにかく避けたいので、動きに即して正しく作用する、機能的な筋肉をつけることを心がけています」

心身のスイッチをONにするコンディショニング

森山さんにとってコンディショニングとは心身のスイッチをONにするもの。クールダウンではなくウォーミングアップとして、朝一番やリハーサルなど活動する前に行う。

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「とはいえ、その時々で意識させておきたい筋肉も微妙に違うので、そのつど、多少は足し引きしています。2月22日公開の映画『サムライマラソン』で、辻村平九郎役を演じましたが、乗馬シーンの撮影では馬に指示を出すために内股を締めるので、どうしてもパンパンに張りがち。撮影前には重点的にほぐすようにしました。あと、衣装が着物だとカラダを捻る動きは基本的に制限されることもあり、現場ではずっと木刀で素振りをしていましたね」

毎日この時間にこの方法、と厳密には決めていない。またあえて“何もやらない日”も、森山さんにとっては重要だそう。

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どのタイミングで息を吐いて吸うか。そのペースを制御しながら動き続ける。1時間後の発汗量は並大抵ではないとか。

「カラダを動かせばメンタルも上がり、自ずと表情や態度に表れるもの。演じている役柄上、ふさわしくないと感じたときはそういったコンディショニングはしません。結局、いつどの瞬間にスイッチを入れられるか、時には浮世離れした域までいかに飛ばせるかが大事なんですよね。食事でも、例えば自分の感覚を飛ばしたいと思う時にはニンニクやスパイスを摂るとか、気持ちを落ち着けたい時には動物性タンパク質を摂らないとか、そういったことも時には表現につながる。これもコンディショニングの一環と言えるかも。ただ、あくまでも主観的なもので、基本的に食べたいものを食べ、お酒も気にせず飲みます。自分には必要なので」

無頓着なのでは断じてない。むしろ意識的に自身にフィットする方法を選びコンディションを保つことが、パフォーマンスの土台になる。そう森山さんは確信しているのだ。

「役者はアスリートではないですし、誤解を恐れず言えば、ダンサーもアスリートではない。芝居に繫がるなら、ダンサーとして考えたらありえない次元まで健康体を崩すことも僕にはあります。何を表現するのか、何を提示するのか、自分が何を美しいと考えるかを提示するための方法として芝居やダンスがある。いわゆる“正解”とされている方法で心身を整えることが全員に有効とは限らないはず。いかなる状況下でも表現できるカラダなのだと捉えておくことが、自分にとってのベストです」