日本の成人男性の3人に1人はBMI25以上で肥満とされる。けれども国際的にはBMI30以上が肥満で、肥満大国アメリカでは成人の3人に1人が堂々BMI30以上である。
監修の菅波先生が国際会議で肥満研究をしていると話すと、「日本人は全然太ってなんかいないだろ!」と冷やかされてしまうとか。でも、日本人は国際基準のデブでなくても、安心していられない。なぜならメタボなどのトリガーとなる内臓脂肪や異所性脂肪が溜まりやすいからだ。
日本人は皮下脂肪に溜めるのが下手
背景にあるのは、糖質を含む食事をすると膵臓から追加分泌されるインスリンというホルモンの分泌力の違い。インスリンは糖質を脂肪細胞へ誘導して体脂肪として蓄積する働きがある。
「インスリンはとくに皮下脂肪に体脂肪を溜める作用が高いのですが、日本人は体質的にインスリンの分泌力が欧米人と比べて弱い。皮下脂肪に溜めるのが下手なので、溢れた分が危ない内臓脂肪や異所性脂肪として溜まりやすいのです」(名古屋大学環境医学研究所の菅波孝祥教授)
異所性脂肪の代表格である脂肪肝の発生頻度をBMI別に調べた研究では、BMI25〜30では欧米人の発生頻度は22%に留まるが、日本人は55%と2倍以上に達した。
さらにBMI23.5〜25の肥満予備群では、欧米人の脂肪肝の発症率はわずか4%なのに対して、日本人は33.3%とかなり高率だった。
日本でBMI25以上が肥満とされるのは、肥満度が低くても内臓脂肪や異所性脂肪の害を受けやすいからなのだ。
教えてくれたひと
菅波孝祥さん(すがなみ・たかよし)/名古屋大学環境医学研究所分子代謝医学分野教授。医学博士。基礎研究と臨床研究を繫ぎ、生活習慣病治療に繫がる研究を担う。京都大学医学部卒業。京大、東京医科歯科大学を経て現職。