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タンパク質と、何が同じで、どう違う?ジェーン・スーと〈味の素(株)〉社員が語るアミノ酸のこと。
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サプリは薬ではないから、摂ればこうなると言えないのが建前。ならば何を選べばいいのか。ケースワーク別に摂りたい栄養素の指針をご紹介! 今回は【エイジング編】。
サプリは薬ではないから、摂ればこうなると言えないのが建前。ならば何を選べばいいのか。目的別の指針を提供しよう。
サプリはあくまで栄養“補助”食品なのだ。メインではなく、アシスタントだ。つまり、食事を摂ることが大前提であって、食事の代わりになるものではないから、朝飯抜きをフォローしてくれるものではない。というわけで、出社前にいそいそ買い食いをと……。
「店頭に並ぶ持ち帰り食品に何かが欠けているわけではありません。そもそもあそこには何もない、エンプティだと考えてください
そう語るのは本間龍介医師(スクエアクリニック理事長)だ。大切なのは食事と生活習慣。サプリなど枝葉だと断言する。ジャンクフードにエネルギーはあっても、ビタミン、ミネラルは乏しく、保存料など食品添加物はどっさり。こういうものを解毒するため、体内のビタミン、ミネラルや酵素を消耗するから、栄養泥棒を体内に導き入れるようなもの。
だが、「ビタミン、ミネラルにはあまり機能性はなく、体内で調整能力を発揮するのはむしろファイトケミカルでしょうね」と話すのは岩崎真宏医学博士(日本栄養コンシェルジュ協会代表理事)だ。
「近年、トマトのリコピンが体脂肪の燃焼にいいとか、肝機能にいいとか議論が盛んですが、こういうサプリが注目を集めています」
もちろん、ビタミン、ミネラルも大事だが、ユニークな機能を持つ栄養素に関しても勉強しておきたい。求めるものが何かによって選ぶべき役者は変わる。いま知るべき選択肢の整理を試みた。知れば次にサプリの売り場に出かけたときに、迷うことなく素早く正解に辿り着けるだろう。
目次
摂るべきは……【ノコギリヤシ、ペポカボチャ、バナナ】
女性ホルモンは更年期に急激に減るから、いろんな不定愁訴が表れ、女性を悩ませるが、オトコの劣化は徐々に進むので、始まりも終わりもはっきりしない。
「精力の減退に対して、何かを食べたら元気になるというような論文はなかなかありません」と岩崎博士。「男性ホルモン、テストステロンがいずれ減るのは当たり前。テストステロンの低下でEDになると考えがちですが、恐らく半分はメンタルの問題でしょう」と矢澤博士は言うが、強いて挙げるなら昔から言われているようにノコギリヤシや、新顔ではペポカボチャの抽出物が前立腺肥大や夜間頻尿の改善にいいという。
「最近ではバナナの抽出物でバナチン ®や、バナナの皮に含まれるシクロユーカレノンといった成分にも女性ホルモン様作用が認められ、こうした働きが期待されています」
摂るべきは……【ショウガオール、ジンゲロン、ビーツ】
末梢の毛細血管まで酸素たっぷりの赤血球が走り回れば、顔は健康的なピンク色を帯びるだろうが、ストレスが高まると交感神経が優位になり毛細血管は収縮する。これも顔色が悪くなる理由の一つ。
「脂質摂取過多で血液が脂でどろどろになると、毛細血管は詰まったような状態になって、末梢まで栄養や酸素が行き渡らなくなり、皮膚の衰えを招きます」と岩崎博士。
40歳以降のアンチエイジングでは血流が重要な改善ポイントだ。
「ショウガの成分、ショウガオールやジンゲロンが役立ちますし、ビーツ(赤カブ)を摂ると血管内に一酸化窒素を産生し、血管を拡張して顔色をよくしてくれるでしょう」
摂るべきは……【マグネシウム、クエン酸、ビタミンB1、イチョウ葉エキス、ビタミンE】
男女を問わずオフィスワーカーに多いのが肩こり。だが、生活習慣からこの不快を悪化させていないか? 日中は微動もせずパソコン業務。行き帰りの電車内でもスマホに釘づけで終始、前傾姿勢…。
「肩こりは筋肉が張った状態なので、マグネシウムが柔らかくしてくれますよ」とは本間良子医師の言。
凝り固まった部位の血流を少しでも回復させるよう、ビタミンB1でエネルギー代謝をサポートしたり、抗酸化力の強いビタミンEで血流にじかに働きかけるのも手だ。
ヨーロッパで血流改善薬として使われてきたイチョウ葉エキスもいい。クエン酸にも血流改善作用はあるし、疲労回復を早めてくれるだろう。
摂るべきは……【EPA、ビタミンC・E、イソフラボン、DHA、アントシアニン】
女性ホルモンの枯渇から平均50歳で女性は閉経を迎える。
「この時期から女性はカラダの代謝が男性と同じになります。ホルモンバランスも変化し、体調不良を意識します」と指摘するのは岩崎博士。
エストロゲンの抗酸化力を失うので、抗酸化物質の補給を本気で考えるべき年代になっていく。
「端境期にはEPAやDHAでホルモンに対する感受性を上げるのもいいでしょう。抗酸化にはビタミンC、E、アントシアニンもお勧めです」
イソフラボンは女性ホルモン様物質とされてきたが、
「女性ホルモンの受容体は脳と生殖器に発現していますが、イソフラボンの受容体は脳だけなんです」
つまり、低下していく性機能を回復させる役には立たないが、不安定になりやすいこの時期の精神にはいいかもしれない。
摂るべきは……【イソフラボン、ビタミンD、飽和脂肪酸、タンパク質、カルシウム、糖質】
女性ホルモン、エストロゲンの枯渇する更年期の数年間で女性は平均約20%もの骨量を失う。小柄でスリム、運動習慣のない女性には、太く頑丈な骨の必要性は低いから、そもそも骨量が少ないので、この時期に骨粗鬆症が忍び寄る。
「強さはエストロゲンの5分の1ほどですが、この時期に女性ホルモン様物質のイソフラボンを摂るのがいいでしょう」と矢澤博士は語る。
骨の材料としてカルシウムの補充は必須とはいうものの、
「カルシウムの吸収を促すためにはビタミンDも必要です。また、飽和脂肪酸や糖質を摂ると、上部小腸からGIPというホルモンの分泌が盛んになり、骨形成が促されます」と語るのは岩崎博士だが、その一方、骨の体積の約半分を占めるのはカルシウムではなくコラーゲンだ。
「タンパク質不足の中高年女性が多いのですが、これでは鉄骨なしでセメントだけ流しているようなもの。丈夫な家は建てにくいでしょう」と本間龍介医師は警告する。
摂るべきは……【グルコサミン、コンドロイチン、ヒアルロン酸、コラーゲン】
動き始めに感じる違和感。これは重大事態に発展するのかどうか。中高年になると関節に関する不安は消えることがない。
「よく名前の挙がるグルコサミン、コンドロイチン、ヒアルロン酸、コラーゲンといった関節成分がいい」と勧めるのは矢澤博士。
「グルコサミンは経口摂取でも関節に届くことが証明されました。ヒアルロン酸も経口摂取で大丈夫。コラーゲンもある意味、正しい」
矢澤博士によると、コラーゲンを構成するアミノ酸のうち3分の1近くが非必須アミノ酸、プロリン。このアミノ酸はコラーゲンの合成を促進したり、壊れたコラーゲン組織を修復する力を持つほか、角質層では天然保湿成分として働くという。
「1日5gのコラーゲンを摂れば大体1.5gぐらいのプロリンを摂れる。1g以上のプロリンが血中に届けば改善が見られます。お菓子のグミに入っている量で十分です」
摂るべきは……【アスタキサンチン、ゼアキサンチン、β‐クリプトキサンチン、アントシアニン、ルテイン】
世の中の文字は小さすぎて読めないっ!と何かのCMみたいに叫びたくなるほど、いまや目には過酷な環境が出来上がった。
ブルーライトと眼精疲労の関係は未確定だが、紫外線が目に活性酸素を発生させることは間違いない。
「活性酸素消去能ではアスタキサンチンが最強で、エビデンスも豊富です。高価な成分なので、1日に6mgも摂れば十分です。ミカンの皮に多いβ―クリプトキサンチンやアントシアニンも目の血流を改善してくれるでしょう」と矢澤博士。
このほかにホウレンソウの色素成分、ルテインやケールなどのカロテノイドであるゼアキサンチンなどは、黄斑変性症の予防にもいいという。
摂るべきは……【ロスマリン酸、アルクチゲニン、アスタキサンチン、DHA、ジンゲロン、ショウガオール、ホスファチジルセリン】
中年の入り口あたりから、そろそろ顔を出すのが老眼と物忘れ。物忘れを経験すると、いつか自分が認知症になるのではないかと、誰しも強い恐怖に囚われる。
「加齢に伴い脳神経が死んでいくのが問題で、それを少しでも抑えるために抗酸化力を持つビタミンやEPAなどが試されてきましたが、いま話題になっているのがゴボウの持つ成分、アルクチゲニンです」と岩崎博士は話す。
アルクチゲニンとは漢方薬の材料、生薬となる牛蒡子に含まれる化学物質。膵臓がんを小さくするのではと研究の進められてきた成分だ。
「脳神経が死ぬのを約60%抑えたというからすごい。赤シソの持つポリフェノールでロスマリン酸も有望だし、ショウガオールとジンゲロンも脳神経の保護にいいそうです」
矢澤博士はDHAと抗酸化力の極度に強いアスタキサンチン、そしてホスファチジルセリンを推した。
摂るべきは……【葉酸、ビタミンB12、鉄分(グルテンフリー・カゼインフリー)】
女性は月経で血を失いがちだから、このときに過酷なダイエットに挑むと体力がガタ落ちになる。
「鉄欠乏性貧血ならば即座に鉄剤を処方したいところですが、胃の調子が悪く胃酸の出にくい方がよくいます。こういう方に著効はありません。鉄は胃酸によって吸収されやすい形になって小腸で吸収されるからです」と本間龍介医師。
まず胃腸を整えてから鉄剤を使うが、グルテンやカゼインにアレルギーが隠れていたら、これをやめるよう食事指導も行うという。腸に炎症があっては鉄の吸収も難しいから。
不足が貧血を起こす葉酸も大事だ。
「特に妊婦さんは必要量が増えます。赤血球に必要なビタミンB12と一緒に摂りましょう。鉄分の補給も大事です」とは岩崎博士の弁。
摂るべきは……【DHA、EPA、乳酸菌、食物繊維】
入浴したぐらいで消えてくれない加齢臭は何とかしたいもの。
「脂質の摂り過ぎで毛細血管が詰まり気味の人は、老廃物を溜めがちになって体臭を強めます。末梢に代謝のための栄養が届かないので、DHAやEPAを摂って血管をケアしましょう」と岩崎博士は指摘する。
腸内環境の改善も考えるべきだ。
「腸内細菌は水素をはじめ、悪臭を放つインドールやスカトールも産生します。異常発酵が起こっても悪臭の成分ができ、これが血中に吸収されると体臭がきつくなります。改善には腸内細菌叢のバランスを整えるべきで、食物繊維や乳酸菌を摂るといいでしょう」と矢澤博士は語るが、これは気長に取り組むしかない。
摂るべきは……【アントシアニン、アスタキサンチン、ビタミンA・C・E、N‐アセチルシステイン】
細胞の新陳代謝が遅くなっていく世代には、それまでに浴びた紫外線の爪痕が目立つようになってくる。主犯は紫外線が持ち込んだいわずと知れた活性酸素。
「日差しの強い時期は日焼け止めを塗るのはもちろん、内側からはアスタキサンチンで守りを固めましょう。1日に6mgで十分です。あとはアントシアニンですが、野菜で必要量をまかなうのは難しいから、サプリがいいでしょう」と矢澤博士。
また、本間良子医師は、「抗酸化力を高めるためにビタミンA、C、Eを。肝臓で解毒の酵素の合成を高めるN―アセチルシステインもいいでしょう。あわせてデトックスを受けるのもお勧めです」
取材・文/廣松正浩 撮影/小川朋央 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/天野誠吾 イラストレーション/越井 隆 取材協力/岩崎真宏(日本栄養コンシェルジュ協会代表理事、医学博士)、本間龍介(スクエアクリニック理事長)、本間良子(スクエアクリニック院長)、矢澤一良(早稲田大学研究院教授、農学博士)
(初出『Tarzan』No.753・2018年11月8日発売)