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正しい呼吸、できてますか? 「呼吸機能UPエクササイズ」にトライしよう!

しっかりと深い呼吸を行えるようになれば、酸素が全身の隅々まで行き渡り、カラダや脳にもいい効果を与える。正しく呼吸するポイントは胸郭にあり。歪みがちな胸郭の左右バランスを整えれば普段の呼吸が劇的に改善するのだ。

深い呼吸のポイント「胸郭」。

運動や食事などと異なり、呼吸は無意識のうちに行っている行動。だから体操などで深呼吸をすると、自分の普段の呼吸がいかに浅いかを思い知る人も多いことだろう。

私たちが1日に行う呼吸の回数は約2万回にもなるが、その一回一回で深い呼吸ができれば、その分たくさんの酸素を取り込むことができる。そのことが脳やカラダ、メンタルにもたらすメリットは計り知れない。

「深い呼吸をするには胸郭をスムーズに動かすのが大事な要素。胸郭は肋骨と胸骨、胸椎で構成されますが、残念ながら歪んでいる人がほとんどなのです」

そう話すのは文京学院大学保健医療技術学部教授の柿崎藤泰さん。日本人の約9割は利き手に関係なく胸郭の中心が左にずれ、左側が詰まり、右側が緩んでいる状態。肋骨が斜めになっている状態なのだとか。

「原因としてはさまざまな可能性が考えられますが、人間が二足歩行に進化する過程で重心を少し左に寄せると筋出力が最大限に発揮でき、姿勢が安定しやすいのもひとつ。つまり胸郭が多少左にずれている分には問題ないですが、大きくずれていると呼吸が浅くなってしまうのです。自分の胸郭のずれや呼吸の深さは簡単にチェックできるので試してみてください」

胸郭の「ズレ」をセルフチェック!

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呼吸の深さを測るにはこんな方法がある

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メジャーをみぞおちの高さでカラダに軽く巻き付け、まずは息を吐き切った状態で胴囲をできれば人に測ってもらおう。続いて同じ場所で息を大きく吸った状態で計測。最も息を吐いたときと吸ったときの差が5cm以上あればしっかり呼吸ができている。しかし3 cm以下だと呼吸が浅い証拠。トレーニングで呼吸機能を高めたい。

鎖骨の下にある肋骨の硬さを左右で比べる

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左右の鎖骨の下にある肋骨の上から2本目(第2肋骨)あたりを肩の方に向かって親指で押すと、弾力が左右均等ではないことがわかるはず。ほとんどの人は左より右の方が奥まで指が入るのではないだろうか。柿崎先生の研究によると、日本人の約9割がこの状態。硬さの違いの原因は、胸郭全体の歪みにある。

「爪先体重で前傾」は吸息筋が硬い証拠!

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息を吸うときに収縮する脊柱起立筋は大事な吸息筋のひとつ。ここが硬いと呼吸も浅くなる。試しに、立位姿勢から徐々に爪先に体重をかけてみよう。耐えられずに前につんのめったり上体が大きく前傾する人は脊柱起立筋の柔軟性が不足している証拠。54ページ下のエクササイズで背中全体の筋肉を伸ばそう。

肋骨下部のバランスもしっかりチェックを

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最初のチェックで肋骨上部の柔軟性に左右差があると、肋骨全体も歪んでいる可能性が。すると肋骨下部に斜めに走る弓状線(肋骨弓)は片方が水平気味になったり、肋骨の最下部の位置が上下する形に。写真のモデルの場合、肋骨弓はどちらも斜めだが肋骨の最下部はやや左上がり。ニュートラルに戻したい。

チェック方法は上の通り。でもそれがわかったところで、胸郭のずれなんて整体院や整形外科にでも行かないと改善できないのでは…?

「そんなことはありません。左に偏りすぎている胸郭は意外にシンプルな方法でニュートラル、つまりほんの少し左にずれた状態に戻せます。すると無意識のうちに深呼吸ができるようになり、ひと呼吸ごとの胸郭の膨らみも大きくなります」

柿崎先生がおすすめするのは、仰向け姿勢で脊椎の下にボールを置いて胸郭を開き、さらにタオルやクッションを使って尻の位置を高くし、足を椅子に乗せてゆっくり呼吸を繰り返す方法である。

「理想的な深呼吸は胸部と腹部の両方を使った胸腹式呼吸です。息を吸うときに横隔膜が下がり、吐くときに上がることで肺に空気が出入りします。つまり横隔膜の動きをよくすれば呼吸は自然と深くなるのですが、この姿勢で呼吸を繰り返すと横隔膜の上下運動がより大きくなり、意識せずとも腹式呼吸がマスターできる。さらに脊椎の下にボールを置けば、胸郭を大きく広げた状態で胸式呼吸を同時に行うことができるのです」

胸郭を大きく開き、横隔膜が動きやすい姿勢で呼吸する。これを毎日繰り返しているといつの間にかその呼吸法をカラダが覚えて、日常生活においても同じように深い呼吸ができるようになるのだとか。

1. この姿勢で呼吸するだけ、かんたん呼吸エクササイズ

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床に椅子を置き、そのそばで仰向けに。次に膝がなるべく90度になるように椅子の座面に両足を乗せ、尻の下に折り畳んで10cm程度の厚さにしたバスタオル2枚やクッションを敷く。椅子の座面が低い場合は、同じく折り畳んだバスタオルを足首の下に敷くなどして膝が90度になるよう調整する。さらには左右の肩甲骨上部の真ん中、脊椎の真下に直径7~8cm程度の柔らかいゴムボールを置く。

この姿勢で頭を動かさず、カラダをリラックスさせ、鼻から大きく息を吸い、口から息をしっかり吐き切る。これをゆっくり10~15回程度行う。

「これが猫背にならず、胸郭が大きく開かれ、横隔膜も動かせる胸腹式呼吸には理想的な姿勢です。時間にすれば3~5分程度ですので、毎日続けてみてください。カラダが本来の呼吸機能を取り戻し、とくに吸気の改善が期待できます」(柿崎さん)

毎日の就寝前や起床時に。鼻の深呼吸はメンタルを静める役割もあるぞ。

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小さめの柔らかいボールを用意しよう

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ボールは100均などで売っている柔らかいゴムボールや軟式テニスボール、または丸めたハンドタオルでOK。これを左右の肩甲骨上部の中間に通る脊椎の真下に置く。これで仰向けになると詰まり気味の左側の胸郭も開かれ、ニュートラルな状態に戻りやすくなる。

胸郭の左右差をなくすもうひとつの方法も

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床に仰向けになり、カラダを伸ばす。左右いずれかの肩甲骨の真下にゴムボールを置き、肩の動きでボールを床にゆっくり押し付ける。これを10回。最初のチェックで左の胸郭が詰まり気味だった人は、これを左側でやれば肋間が自然と開き、胸郭の左右差は小さくなる。

2. バランスディスクで横隔膜エクササイズ

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上述のエクササイズはいわば基礎編。さらに呼吸機能を鍛えたい人はこんな座位エクササイズもあるのでぜひお試しを。

バランスディスク(エクササイズクッションなどとも呼ばれる)を椅子に敷き、頭を動かさずに左→前→右→後ろと重心を時計回りに移動。2〜3周したら反時計回りで同様に行う。これを5セットやってみよう。骨盤を前後・左右・斜めといろんな方向に動かすことでお腹まわりはもちろん、骨盤底筋群のエクササイズになるが、これが呼吸にもいい影響を及ぼすのだ。

腹筋群と骨盤底筋群を鍛えるということは、腹筋を司る横隔膜のいわば底と横の部分の強化にもつながる。腹筋群と骨盤底筋群は加齢によって衰えてくるため、それに合わせて横隔膜の働きも弱くなる。こうした体幹エクササイズは呼吸機能アップにも大事。大きな動きを伴わないため、オフィスワークの最中などにも最適だ。

3. 息を吸いながら吸息筋のストレッチも

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続いては吸息筋のひとつ、脊柱起立筋を中心とした背中まわりの筋肉のストレッチ。「爪先体重チェック」でカラダが前につんのめったり、上体が前傾した人は意識的にやってほしいメソッドだ。

立った状態で両手を胸の正面で組んで口から軽く息を吐く。次に鼻から息をゆっくり吸いながら組んだ両手を前に伸ばし、同時に背中を少しずつ丸めていく。胸と背中を徐々に引き離すイメージでやってみよう。このとき意識的に左右の肩甲骨を開いていき、お腹を凹ませていくのが一番のポイント。続けて息を吐きながらゆっくり元の姿勢に戻していく。これを5回繰り返す。

普段猫背気味の人は背中の筋肉が縮みっぱなしで硬くなってしまっている。このストレッチで筋肉を伸ばすのはもちろん、息をゆっくり吸うことで緩みやすくなるのが一番のポイント。呼吸筋の緊張を取ってあげれば、呼吸機能は自然と高まるのだ。


教えてくれた人
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柿崎藤泰さん/文京学院大学保健医療技術学部教授。医学博士。専門分野は呼吸器および運動器疾患の理学療法。長年胸郭の運動分析や姿勢と胸郭周囲の筋活動の関係を研究。

取材・文/黒田創 撮影/山城健朗(モデル)、角戸菜摘(測定) スタイリスト/山口ゆうすけ ヘア&メイク/天野誠吾 取材協力/柿崎藤泰(文京学院大学保健医療技術学部教授)

(初出『Tarzan』No.752・2018年10月25日発売)

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