真冬の空気で肺にダメージ!? 今すぐ口呼吸をやめるべき決定的理由
取材・文/廣松正浩 イラストレーション/加納徳博 取材協力/田中幸夫(東京農工大学大学院工学研究院先端健康科学部門教授)
(初出『Tarzan』No.752・2018年10月25日発売)
口は消化器、鼻は呼吸器だ。消化器に本来の仕事以外のことをさせてはいけない。呼吸は鼻に限るのだ。
なぜか? 鼻には鼻毛が生えている。鼻毛は異物やアレルギー反応をもたらす物質、アレルゲンの侵入に立ち向かい、呼吸器を守る免疫システムの最前線だ。けれど、喉にはそんなありがたいものがなく、よからぬものを空気と一緒に吸い込めば肺まで直行しかねない。口はしっかり閉じておくべきものだ。
とはいえ、ランニングやバイクなどリズミカルなスポーツをする際は、鼻で吸って口から吐いても構わない。
高齢者の訃報にしばしば死因は肺炎と書かれている。これは外来のウイルスや細菌のほか、飲食物や唾液、あるいは唾液とともに歯周病菌などを誤嚥して起きた肺炎の可能性がある。就寝中、口呼吸だとさまざまなリスクを伴う。
第一、常に口が緩んで半開きでは、インフルエンザのシーズンには大きなリスクを背負うことになる。
「鼻腔を通過する際に外気は鼻粘膜でほどよく加湿されます」(東京農工大学・田中幸夫教授)
冬季、インフルエンザの予防に部屋に加湿器を置く人は多いだろう。対インフルエンザという点でも、万難を排して鼻で呼吸すべきだ。
また、加湿される際に空気は体温近くまで温められる。
「真冬の冷たく乾燥しきった空気を口から肺に直送すれば、目に見えないダメージを負うでしょう。北国の人は顔を丸出しにして、氷点下の空気を吸い込んだりしません」