教えてくれた人
菅原洋平さん(すがわら・ようへい)/作業療法士。民間病院精神科勤務後、国立病院機構で脳のリハビリに従事。働き世代の脳を活性化して病気を予防するビジネスプランを考案。著書は『快眠アイデア大全』など。
相談した人
四千頭身/都築拓紀さん(つづき・ひろき)、後藤拓実さん(ごとう・たくみ)、石橋遼大さん(いしばし・りょうだい)によるお笑いトリオ。2016年結成。脱力系の漫才でテレビでも幅広く活躍。FM FUJIでは毎週水曜21時より『四千ミルク』を放送中。ユーチューブ公式チャンネルは『YonTube』。石橋さんは本誌『ターザン』でエッセイを連載中。
クロノタイプを把握して理想の生活へ整える
睡眠を制する者は朝を制す。まずは自分のクロノタイプを把握したうえで気持ちよく朝を迎えるための手を打ちたい。
今回招いたのは睡眠パターンが三者三様というお笑いトリオ〈四千頭身〉。クロノタイプ診断(詳しくはTarzanWebの記事:朝型? 夜型? あなたの睡眠パターンを知る「クロノタイプ診断」)を受けた3人が、テストを考案した作業療法士の菅原洋平さんに、目覚めと睡眠の関係性について学ぶことに。
都築拓紀さん(以下、都築さん)
オレは夜型寄りのフクロウでした。
都築さんは…フクロウタイプ
どちらかというと夜型。朝に弱く、目覚まし時計に気づかないことも。日中よりも夕方以降の方が作業がはかどる。在宅勤務が増えた2020年以降、最も増えているタイプ。
夜型寄り。起きている間も脳は寝ている半覚醒状態が長く続く。「でも朝型には憧れが。洋楽をかけコーヒーを淹れて読書に耽りたい」(都筑築さん)
後藤拓実さん(以下、後藤さん)
フクロウいいな。僕は超夜型のコウモリ。
後藤さんは…コウモリタイプ
真の夜型。深夜まで起きていても比較的早起きできるなど短時間睡眠に対応できるが、常に寝不足を感じている人も多い。質の高い睡眠を心がけて朝を爽快に迎えたい。
真の夜型。目覚めから起床に30分以上かかり、休日は普段より5時間以上長く寝る。「早起きできたら公園のカフェで読書したい」(後藤さん)
石橋遼大さん(以下、石橋さん)
僕は朝型寄りのスズメ。この診断で分かるのはどんなことなんですか?
石橋さんは…スズメタイプ
どちらかというと朝型。現代人に最も多い。必要に応じて早起きはできるが、休日は数時間遅く起床したり寝溜めしがち。連休を経ると図らずして夜型になることも。
朝型寄り。1度目のアラームで起床でき、休日と平日の起床時間はほぼ変わらず。「家の周りを散歩して近所の柴犬を撫でる朝が理想」(石橋さん)
菅原洋平さん(以下、菅原さん)
そもそも睡眠パターンを決定づけるのは、遺伝子要因が50%。残り50%は自分の行動や環境で変えられる要因です。前者を明らかにするのが今回の診断。
タイプが分かれば、朝型になりたいと思った時にどれだけのコストがかかるか、見積もりができますね。
ニワトリ(真の朝型)は朝向きといえるし、コウモリなら他のタイプより起床時に苦労するはずで工夫が必要。どのタイプも2週間単位でリズムを変えていくことができます。
菅原さん
現代は日勤帯の仕事が中心で週末に寝溜めする社会人が多いので、一番多いのはスズメ。続いてニワトリ、フクロウ、コウモリの順に多いです。
ただコロナ禍で在宅勤務が増えたことで、ニワトリが減りフクロウが増えている傾向があります。
起きにくく寝落ちしやすいなら自己覚醒法
後藤さん
ニワトリは僕らの中にもいないな。ただですね先生、この中で一番ヒドいのは間違いなく都築ですよ。こいつ寝坊して飛行機に乗り遅れて舞台を飛ばしましたから。
後藤さん
昨日も地方営業から新幹線で帰京しまして。終点に着いた時に車両前方で乗務員さんが「終点です!!」とずっと言ってて。全然起きねえヤツいるなと思ってたら都築でした。
都築さんの失態を後藤さんが“告発”。地方営業を終え新幹線で帰京。終点の東京駅で「あの〜お客さん!?」と延々と起こされても寝続けた猛者の名は、都築拓紀。
都築さん
終点だと乗務員さんが起こしてくれて乗り越す不安がなくて。
石橋さん
都築は寝るのも早いんですよ。新幹線に乗ったらまずマネージャーさんに「乗れました」と一報するんですが、都築はそれをする前に寝る。
菅原さん
都築さんにすすめたいのは自己覚醒法。新幹線の移動時間が2時間半とすると、眠る前に「2時間半後に起きる」と脳内で3回言語化してから眠れば、2時間半後に血圧や心拍が上がるように
脳が調整します。何もせず起こされると心拍を急に上げることになり負担が大きいです。
眠りたくない時間帯は脳に学習させる
都築さん
うわーやべ〜! 僕、ホントに睡魔には勝てないんです…本当は新幹線でも起きていたいんですよ。でも収録中など緊張感がある状況でも、たまに睡魔に襲われますから。
菅原さん
普段の睡眠時間を記録すると大半の人が19時〜21時は眠っていないそうです。人それぞれに必ずあるこの“眠っていない時間帯”には絶対に眠らない、と決めると、そこは“睡眠の脳波が出ない時間”と脳が学習します。
それを数十分ずつ増やし、絶対に眠らない時間を延ばしていくのが一案です。
菅原さん
あと眠気の一因は内臓の温度が下がること。眠いかもと感じたらお尻をギュッと締めましょう。体幹部の筋肉が活性化して内臓の温度が保たれ、眠気も薄れていきます。
寝る前のルーティンは余裕を持って
菅原さん
夜型寄りの都築さんに対し、石橋さんは現代の社会人に最も多い朝型寄りのスズメタイプでした。
石橋さん
…僕は寝る前にやるルーティンがあって、それをすると眠くなるし、朝も調子がいいような。風呂に浸かって、入浴後にヨーグルトを食べて、ストレッチするんですが。
四千頭身イチ、健康に気遣う石橋さん。毎晩入浴後にヨーグルトを摂りストレッチ。就寝前の“儀式”を完璧にこなそうとするあまり睡眠時間が削られるハメに。
菅原さん
入浴前には絶対にやらないわけですよね。入浴が30分遅れるとルーティンのせいで就寝時間も30分遅れてしまう。その時は眠気がマスキングされて気づかなくなっていますが、実は眠りたい状態なんです。
菅原さん
時間に融通が利く休日は夕方に入浴を済ませていつでもルーティンに入れる状態を作りましょう。すると眠い時間がいつでも訪れるようになりマスキングも解かれます。
石橋さん
確かに夜遅くまで起きていることが多かったので気をつけよう。
15分経っても寝れないなら一度布団から出る
菅原さん
そして後藤さんは、超夜型のコウモリタイプという結果でした。
後藤さん
毎朝イライラしながら起きてます。寝つきも悪いし眠くなる時間も不規則で、眠気が来るまでは目をつぶってても絶対寝られない。
菅原さん
朝に休めた感じがしないのは、起床時の心拍数が高すぎるせいです。また横になって15分経っても眠れない時は布団から一度出ましょう。脳がベッドを寝る場所ではなく、“考え事をするため心拍を上げてから頑張って寝る場所”と学習してしまう。
後藤さん
ベッドで15分起きてるなんて常ですよ。汗もかいてきますし。
菅原さん
寝始めに汗をかくのは、心拍数が高く交感神経が優位になっているためでしょう。
自律神経が乱れている結果、寝つきも良くない。
後藤さん
寝つきが最悪で…最近僕、百発百中で金縛りになるんですよ。
寝始めの時間帯に金縛りに陥る。それが恐怖で、スコンと眠りに落ちるよう晩酌するのがいつしか日課に。結果、朝の目覚めも悪く常に疲れを感じているとか。
菅原さん
金縛りは入眠してすぐにレム睡眠が出た時に生じる現象です。通常は入眠後にノンレム睡眠という深い睡眠が出ますが、眠るつもりがない時に突然寝落ちするとレム睡眠から始まることがあります。眠くないのにベッドに入っていませんか。
後藤さん
そんな日ばかりです。金縛りって幽霊じゃなかったんだ。
菅原さん
寝始めの自律神経を整えることで金縛りなどいろんな問題が解決します。手軽なのはホットアイマスクです。濡れたタオルを電子レンジで温めて目に当てると心拍数が徐々に下がる。10分ほどでタオルが冷めたらベッドに行って寝ましょう。
後藤さん
もう金縛りに遭わない気がしてきた。先生、ありがとうございます!
都築さん、石橋さん
僕らも頑張ります!!