「走る映画」のプレイリスト|vol11. 春は、別れと出会いの季節。

映画の主人公気分で走りたい! 「走る」シーンが象徴的な数々の名画のサウンドトラックをつないで、ランニング気分を高め、鼓舞してくれるプレイリストを作る試み。第11回のテーマは、別れと出会いの季節・春。卒業や入学、環境の変化、人の移動など、何かと情緒が揺さぶられるこの季節。溢れる想いをエンジンに走り出しましょう。

選曲・文/渡辺克己(サントラ・ブラザーズ) 写真/アフロ

卒業や転属、引越しなど、春はなにかと別れの多い季節。時には切ない思いをすることもある。しかしその分、入学や就職、新天地での生活など、裏を返せば新しい出会いのシーズンともいえる。そこで今回は、春の別れ、そして出会いを描いた映画音楽から、楽しい新シーズンを飾るべく、爽やかでウキウキするような楽曲をセレクトし、“走る映画”のプレイリストを作成した。

まず、1967年公開のアメリカン・ニューシネマの傑作、その名もズバリ『卒業』から。ギターのアルペジオが眩しいM1「4月になれば彼女は」で、ゆっくり走り始めよう。

大学を卒業し、将来に迷う青年の大人への成長も描いた作品だ。若者の葛藤を描いた青春映画にも見えるが、その物語は不倫や略奪愛など、実はドロドロな恋愛ドラマでもある。主人公を演じるダスティン・ホフマンの、焦りと渇望に満ちた猛ダッシュは名シーンとして今も輝き続けている。

続いて、中二病女子の日常を描いた『レディ・バード』からM2。音楽を担当したのは、フィオナ・アップルやカニエ・ウェストのプロデューサーとしても知られるジョン・ブライオン。自意識過剰な女子高生が人生の転換期に直面し、泣くわ、走るわ、挙げ句の果てには運転中の車から飛び降りるわという暴挙を連発。当初は険悪だった家族や友人とも、問題をひとつずつ解決することで関係は雪解けへ。そんな温かいシーンに柔らかく響くM2が印象的だ。

アメリカの学生寮の生活をドタバタコメディとして描いた1978年制作の『アニマル・ハウス』からは、サム・クックの名曲M3。体育会系や不良、さまざまな人種が混ざり合うキャンパスを舞台に、七転八倒しながらも大人への階段を上っていく若者たちの姿は、どこか感動的でもある。

モンスターの世界にも学園生活があり、卒業の儀式もある。『モンスターズ・ユニバーシティ』(2013年)では、前作『モンスターズ・インク』では描ききれなかった学生時代の日常に焦点が当てられている。モンスター界でも、帽子を空に投げるハットトスの儀式は楽しげでいいもの。そんな祝祭ムードにファンキーなM4がぴったりだ。

こじらせ女子高生2人組が、卒業目前のパーティーに参加しようと奮闘する『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(2019年)。ティーンの葛藤を描いた青春映画だが、コメディ色はかなり強め。親友にドッキリを仕掛けようと猛ダッシュするシーンなどで、ダン・ジ・オートメイターのファンキーなトラックM5が見事にハマっている。

リチャード・リンクレイター監督は『ビフォア・サンセット』など長い年月をかけて撮影する作品で知られるが、青春コメディも得意分野だ。高校卒業直後の春休み、大学の寮で過ごす野球部員たちの数日を描いた『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』(2016年)。暇を持て余した愉快な若者が集まれば、やることはひとつ。そう、パーティーだ。女の子を探して街中を走り回る青春のエネルギー。ここではブロンディのM6が胸キュンなアクセントになっている。

ダンスに青春を燃やす『ステップ・アップ』(2006年)からM7。タイトル曲はオールドスクール・マナーのR&B。シャープなビートが走る足をぐいぐい前へ進めてくれる。元海兵隊員の教師が、ロサンゼルスの高校に通う問題児たちと向き合う『デンジャラス・マインド/卒業の日まで』(1995年)。ミシェル・ファイファー演じるジョンソン先生は熱血教師でありながら、生徒たちとハングアウトもする柔軟な人物。そんな中、クーリオのヒット曲M8が印象的に使われている。

ランニングのテンションをさらに上げる意味でも、やはりジャクソン5のM9を聴きたいところ。1969年にリリースされたこのモータウン・クラシックは、映画やCMでも頻繁に使われた、ポップ史に残る名曲。卒業映画といえば、日本では『センセイ君主』(2018年)でTWICEがカバーしたバージョンも話題になった。

アイダホのオタク青年の生活を描いた『ナポレオン・ダイナマイト』(2004年)。ジャミロクワイのM10は、主人公ナポレオンの華麗かつ少し奇妙なダンスシーンで使用され、現在ではダンスクラシックとしても人気の一曲だ。ちなみに本作は日本公開時、『バス男』という邦題でDVDリリースされたが、現在は原題に戻されている。

『ピッチ・パーフェクト』や『スパイダーマン』アニメシリーズでおなじみのヘイリー・スタインフェルドが主演した『スウィート17モンスター』(2016年)。サウンドトラックにはエイサップ・ロッキーやThe 1975など、現在ではアリーナ級のスターが並ぶ。中でもアンダーソン・パークのM11は、スムーズなテンポでランニング終盤の心拍を落ち着けてくれる。

リンジー・ローハン主演の学園コメディ『ミーン・ガールズ』(2004年)では、ブロンディのM12を使用。ティーンを題材にした青春〜卒業映画では、なぜかブロンディの楽曲がよく使われる。一度聴いたら忘れられないサビを口ずさみながら、軽やかな気持ちで春のランニングを終えよう。