肘をついてスマホチェック。肩こりを回避するチリツモ習慣。
肩こりがないと思っていても、実は自覚していないだけかも。「凝る運命」の日本人の肩、細かな習慣で脱却を目指そう。
取材・文/石飛カノ イラストレーション/金安 亮 監修/高平尚伸(北里大学大学院教授)、山口正貴(東京大学医学部附属病院)
初出『Tarzan』No.918・2026年1月22日発売

教えてくれた人
高平尚伸(たかひら・なおの)/北里大学大学院医療系研究科整形外科/スポーツ医学・北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科理学療法学専攻教授。股関節手術、ロコモティブシンドローム、姿勢など多くの分野で治療を手がける。
山口正貴(やまぐち・まさたか)/東京大学医学部附属病院リハビリテーション部理学療法士。2016年の研究論文で日本理学療法士学会の第8回優秀論文表彰で優秀賞受賞。姿勢や背骨、腰痛、ストレッチなどに関する著書多数。
オフィス・通勤でできる肩こり回避のチリつも対策。
筋肉の活動バランスが崩れ、肩甲骨が本来ある位置からズレてしまう理由の多くは、普段の姿勢にある。パソコンの入力作業に没頭しているとき、いつの間にか背中が丸くなり、頭が前に出ていないだろうか? そのとき、もし真横に鏡があったら己の姿をチラ見して愕然とするかもしれない。
頭の重さは4kg以上。本来は骨盤の真上に頭を掲げるよう、全身の筋肉は協力し合っている。なので、位置がズレればそれを支持する筋肉の働きに必ずアンバランスが生じる。
そうした悪姿勢が最も起こりやすいのは、やはり日中のオフィスや通勤時。忙しさを理由にした放置は禁物。気づいたときにこまめにリセットしていくことが肩こりから解放される方法のひとつだ。
1.背もたれに寄りかかってバンザイ。

重いバーベルをしょっちゅう担いでいる人はオーバーワークで肩に痛みが発生することがあるが、一般的なデスクワーカーで肩が痛いという場合は、逆に肩関節を動かさないことが原因。
「腕を下げている時間が長いと肩の筋肉が引っ張られて張りや凝りに繫がります。両手を上げる姿勢で肩の筋肉を縮める習慣をつけましょう。一度縮めた筋肉は、その後緩むという効果も期待できます」
と、東京大学医学部附属病院の理学療法士、山口正貴さん。仕事中、1時間に1回は背もたれに寄りかかり腕を耳にくっつけるバンザイ姿勢を取ろう。
2.PC設定は低すぎず高すぎず。

いつも使っているあなたのPCのセッティングを改めてチェックしてみてほしい。デスクにじかにノートパソコンを置いて作業している人は視線が常に下方向に向いているはずだ。大きなモニターのデスクトップパソコンで作業している人は、視線がいつも上向きだろう。
前者は首の後ろが引っ張られ、後者は首の後ろが縮んでいる状態。いずれも首に過剰な負担がかかる。北里大学大学院教授、高平尚伸さんのアドバイスは次の通り。
「PCのモニターの一番上のラインが目線に高さに来るようセッティングするのがおすすめです」(高平さん)
3.バランスディスクで不安定に座る。

安定した場所に座るとカラダは居心地がいいと感じるポジションを探して、同じ姿勢を続けようとする。その結果、肩も腰もガチガチに固まった状態に。もちろん、居心地がいい姿勢=正しい姿勢ではないので、よりカラダは歪むし肩こりの症状も進む。
「私が患者さんによくアドバイスするのは不安定な場所に座りましょうということです。空気の入ったバランスクッションなどを椅子の座面に置くだけで、カラダは常に不安定な状態で動き続けます。肩だけではなく腰痛予防にもなると思います」(山口さん)
4.常に骨盤を立てて座るべし。

椅子の座面に座骨が触れていることを自覚できない人は、ほぼ間違いなく骨盤が後ろに傾いている骨盤後傾姿勢。この姿勢で長く座っていると、猫背で首が前に出た状態がデフォルトになってしまう。背骨のS字カーブが崩れるので、首、肩、肩甲骨まわりの負担が増えることは言うまでもない。
「骨盤を立てて座るためにタオルを利用する方法もあります。丸めたバスタオルなどをお尻の端にかませるようにして椅子に座ります。骨盤が立てば、背骨も自然にS字カーブを描くようになるので肩こり改善には有効です」(高平さん)
5.チーム会議では頰杖、腕組みを。スマホチェックは肘をついて。

いつもの会議中、あなたの手の位置はどこにあることが多いだろうか? 膝の上? 机の上? 一見、お行儀はいいが、その間じゅう、肩には結構な負担がかかっている。
「片腕の重さは体重の約8%。70kgの人なら約5.6kgになります。これを常時下に垂らした状態ですと腕の重みがすべて肩にかかってきます。ですので、腕を組んだり、頰杖をつくなどして腕の重みをリリースすることは肩こり軽減に繫がると思います」(山口さん)
ちなみにスマホチェックも肘をついた状態で、腕の負荷を半減させるとよし。
6.バッグはこまめに持ち替えるべし。

辛い肩こりから解放されるためには、通勤時の荷物の持ち方にもひと工夫凝らしたい。まず、NGはトートタイプのバッグをいつも同じ側の肩に引っ掛けて持つこと。片側に負荷がかかるので骨盤や背骨が歪む原因に。ならばやはりリュックがベター?
「確かにそうですが、リュックは背中側で持つとカラダが後ろに引っ張られるので猫背になりがち、お腹側で持つと今度は前に引っ張られて反り腰になりがちです。なので行きは後ろで背負って帰りは前に抱えるなど交互に持ち替えるのが理想です」(山口さん)



