憧れの“スノーモンスター”を探して、豪雪の山へ。|3月の山・蔵王

季節によって異なる表情を見せる日本の山。その時期だけに出会える風景や体験を求めて、写真家の根本絵梨子さんに毎月おすすめの山と、その歩き方を教えてもらいます。

取材・文/小林百合子 撮影/根本絵梨子

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今月の山 蔵王
ざおう
|山形県

標高/1,736m(地蔵山)

おすすめコース

蔵王ロープウェイ地蔵山頂駅(20分)地蔵山(50分)熊野岳(40分)地蔵山(10分)蔵王ロープウェイ地蔵山頂駅
歩行時間計:2時間

蔵王でしか見られない巨大な樹氷に感激。

3月。街ではそろそろ春の足音が聞こえてくる季節ですが、高い山や北国ではまだまだ冬。この時季は少し微妙な心境で、日常生活では寒い冬が終わって早く春にならないかなと思いつつも、山のことを思うと、もう少し雪を楽しみたいなと感じて、なんだか矛盾していますね(笑)。

冬の間、各地の雪山で遊んでいると、同じ日本の山なのに、雪質や自然の風景がそれぞれ異なることに気づきます。森に降り積もる雪、ふわふわのパウダースノー、どれも魅力的で、もっともっと色々な雪に出合ってみたいと思うのです。

ある3月、友人と蔵王に出かけました。目的は “スノーモンスター”を見ること。スノーモンスターとは、主に蔵王や八甲田山で、アオモリトドマツなどの針葉樹に雪と霜が凍りつき、巨大化した樹氷のこと。例年の見頃は1月下旬から2月下旬ごろですが、3月上旬でもまだ間に合うだろうと、出かけてみることにしたのでした。

気心の知れた幼馴染みとふたり、夜行バスで蔵王へ出発。早朝に到着して、まずは公共浴場で温泉に浸かります。せっかく雪深い蔵王に来たのだからと、初日はレンタルスキーでゲレンデを滑り、ロッジに宿泊。翌日、山の上で樹氷と日の出を見ようと日の出前から出発しました。

蔵王では冬でもロープウェイが運行していて、スノーモンスターを見る人はそれで地蔵山頂駅まで上って、そこから地蔵山と熊野岳の2つの山に登ることができます。スノーシューがあれば安全に歩けて、あちこちにスノーモンスターが見られます。

私たちはというと、日の出が見たかったことと、もう少し自分の足で山を登ってみたいという気持ちがあり、ロッジから歩いて地蔵山頂駅を目指しました。運悪く、その日はものすごい強風で、地蔵山頂駅に着いた頃には寒さと疲労でへとへとに……。山頂駅で少し休憩し、カフェで温かい飲み物を飲みつつ晴れ間を待って、地蔵山へと歩き出しました。

雪面からもこもこと盛り上がるように育ったスノーモンスターは大迫力で、これまで見たどんな雪の山の風景とも違った、不思議で美しいものでした。日本の中でも限られた地域でしか見られないスノーモンスターは、シベリアからの季節風が日本海で水分を含み、それが針葉樹に衝突して凍結することでできます。

どの針葉樹でもいいわけではなく、アオモリトドマツのように葉が多く、その表面に凹凸がないと、大きな樹氷にはならないそうです。気象条件や植生が揃ったことで生まれる奇跡のような現象。それを目の前にして、日本の自然の多様性、面白さに改めて気づかされました。

近年は温暖化の影響や、アオモリトドマツにつく害虫の影響などで、スノーモンスターができづらくなってきていると聞きます。この美しい風景をずっと残したいと思うと同時に、見たいと願う風景は、その時に見に行かないと。そう強く思ったのでした。

厳しい環境だからこそ見られる、奇跡の風景。

蔵王はスノーモンスター観賞の名所で、観光客も多く訪れますが、ベストシーズンの1月〜3月にかけては極寒かつ強風の日が増える時季。ロープウェイ駅の周辺で樹氷観賞をする際でも、しっかりした防寒具や手袋、サングラス、スノーシューを持参すること。

地蔵山や熊野岳までスノーハイキングするには、天候の見極めが重要。悪天候になると視界が悪くなり、道迷いや低体温症に陥る危険もある。雪山初心者はガイド付きツアーに参加するなど、経験者同行で入山すること。

経験者であってもコース外への立ち入りは厳禁。冬山の中でも特に厳しい環境であることを頭に入れて、悪天候時や積雪が多い時は、迷わず計画の見直しをしよう。

おすすめスポット情報

三五郎小屋
蔵王温泉スキー場の中央ゲレンデ直結のスキーロッジ。スキーやスノーボードのレンタルがあり、ワックスやチューンナップ用品も揃う、スキー愛好家のためのロッジ。スノーモンスター観賞とあわせてゲレンデも楽しみたい人にはおすすめ。夕食もおいしい!
山形県山形市蔵王温泉スキー場中央ゲレンデ
023-694-9330
https://sangoro.co.jp/

3つの共同浴場
蔵王には「上湯」「下湯」「川原湯」の3つの共同浴場があり、それぞれ泉質や趣が異なります。どこも朝6時から夜10時まで営業していて、入浴料は大人300円。山に登ったり、スキーをした後に入ると格別で、冬は本当に癒やされます。足湯も3か所あるので、温泉三昧です。https://zaomountainresort.com/about/