翌朝はフルーツとタンパク質。名医の外飲み・アフターケア。
街に出ても、名医はブレない。飲む前の仕込みから一杯目、つまみ、翌朝まで、すべてに医学的理由あり。悪酔いを防ぎ、酒を楽しみ尽くす“名医流・外飲みの作法”を完全解剖。
取材・文/石井 良 撮影/園山友基 イラストレーション/谷端 実
初出『Tarzan』No.916・2025年12月11日発売

名医の外飲みのリアルとは?
街へ繰り出しても名医はブレない。飲む前の準備から、つまみの選択まで、すべてに医学的な「理由」がある。悪酔いを防ぐ外飲みの流儀と、さらには彼らが愛する名店を覗いてみよう。
飲む前の備えあれば憂いなし。
名医たちは、飲み会の前にも独自のルーティンを設け、カラダをいたわることを欠かさない。特に多かったのは、飲む前に軽く食べ、空腹でお酒を飲まないようにすること。胃の粘膜を守り、アルコールの吸収を遅らせる力がある乳製品が人気だ。
また、「5kmほどランニングをする」(虎の門病院消化器外科部長・進藤潤一さん)など個性的な回答も。良い飲み会は、計画的な準備から。名医の技に学びたい。
走ってから飲み会に。

「時間があったら5kmほどランニングしてから飲み会に行く」(虎の門病院消化器外科部長・進藤潤一さん)という人も。最初の一杯が極上の味になる。
卵と牛乳を食べておく。

「1食分の主食を卵2個に置き換える」(川西輝明さん)、「牛乳、ヨーグルトを摂取する」(栗原クリニック東京・日本橋院長・栗原毅さん)などの回答が目立った。
1位はやっぱりビール。

乾杯のドリンクは、22人中18人がビールを選んだ。日本の飲み会文化における“儀式”としてのビールは、名医たちにとっても健在だ。ただし、2杯目からはすぐハイボールやワイン、日本酒に移行する傾向が強い。やはり糖質やプリン体が気になるようだ。「一人飲みならビールは頼まない」(東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科講師・福井亮さん)というコメントも。
飲み会前のお守りは?
アルコールの代謝を助けたり、脱水対策にもなるサプリや漢方を活用する名医たちも多かった。酢酸菌酵素を含有した《よいときOne》、ドラッグストアなどで手軽に手に入る《ソルマック5》や《ヘパリーゼ ドリンクⅡ》、さらに古来の漢方薬《五苓散料》など、こだわりはさまざま。自分に合った一品を見つけておくと安心だ。
あったら頼むマイ定番。
外飲みのおつまみも、「おいしい」だけでは選ばれていない。悪酔い防止に役立つ練り物やはんぺん、抗酸化作用のあるトマト。意外にも唐揚げは単体なら悪くない選択というコメントも。一皿ごとに「役割」が決まっている名医の定番おつまみはこれだ。
唐揚げ|脂質のガードで吸収を遅らせる。

「脂質にはアルコールの吸収速度を遅らせる効果があるので意外にOK。糖質が少ない点もビールのお供にお勧めです」(栗原クリニック東京・日本橋院長・栗原毅さん)
はんぺん&つみれ|適度な塩分が悪酔いを防ぐ。

「魚が主原料でタンパク質が豊富。塩分が多いのが難点ですが、少しの塩分摂取は悪酔いを防いでくれる効果もあります」(栗原クリニック東京・日本橋院長・栗原毅さん)
枝豆|代謝を助けて肝臓をいたわる。

「タンパク質とビタミンB群、カリウムが豊富です。アルコールによる代謝や肝臓への負担を和らげてくれるのが魅力」(埼友クリニック外来部長・高取優二さん)
冷や奴|肝臓にやさしい良質タンパク。

「最強のおつまみは高タンパクな食材です。豆腐は手軽に良質なタンパク質が摂れるので、定番にしています」(栗原クリニック東京・日本橋院長・栗原毅さん)
冷やしトマト|酸化ストレスをリコピンで軽減。

「トマトのリコピンによる抗酸化作用で、肝臓の酸化ストレスを軽減。味がさっぱりして飲みすぎ防止にも効果的です」(埼友クリニック外来部長・高取優二さん)
柿|分解を促進して二日酔い防止。

「アルコールの分解を助け、二日酔いを防いでくれる働きがあります。ただし、便秘になることもあるので食べすぎ注意」(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門主任教授・川口巧さん)
名医の行きつけ。
多忙な仕事と会食続きの名医に、羽を伸ばしに出かける「いつもの」お店をアンケート調査。おまかせのみの高級寿司店から、ビアバー、朝6時まで営業する大衆酒場まで。今夜はどこで一杯やる?
名医のアフターケア。
酒宴の終わりは、ケアの始まり。飲んだ後のケアこそ、名医の本領発揮。〆のラーメンを潔く断ち、寝る前のたっぷりの水と、翌朝の戦略的な食事。翌日を棒に振らないいたわりの術とは。
〆は食べない。

飲んだ後の「〆」は、一般的な感覚と最も差が出るポイントかもしれない。回答した医師の約7割が「何も食べない」と答えている。
「カロリーオーバーになると太るから」(アシュラスメディカル代表・浅部伸一さん)とシンプルに理由を述べる医師もいれば、「〆のラーメンなど禁忌」(栗原クリニック東京・日本橋院長・栗原毅さん)とまで断言する医師もいる。「水分と塩分を補いながら、アミノ酸やビタミンも摂れるシジミの味噌汁で我慢しています」(栗原さん)。

ラーメンを食べる、という医師も。もちろん、他の食事で帳尻を合わせるなどの工夫のうえだ。
おやすみ前のルーティン。
「必ずコップ2杯の水を飲みます」(埼友クリニック外来部長・高取優二さん)という回答をはじめ、ほぼ全員が水を飲むと答えた。アルコールには利尿作用があるため、必要以上に水分を排泄してしまい、カラダは高確率で脱水状態。二日酔いを避けるためにも、睡眠前の水分補給はマストだ。
湯船に浸かる。

「アルコールを飲んだあとは眠りが浅くなり、途中覚醒をすることが多くなるので必ず入浴します。もちろん酔って溺れない程度の酒量を守ります」(栗原クリニック東京日本橋院長・栗原毅さん)
とにかく水を飲む。

「水は意識的に摂取しておいたほうがよく、私は500mL飲んでいます」(サルスクリニック日本橋院長・山下徹志さん)。コップ2杯、300mLなど、飲酒量によっても水分量は変わるようだ。
飲んだ翌朝の食卓。

飲んだ翌朝の食事は、「失われたものをどう補うか」という発想から、食べ物を選んでいるようだ。
「納豆、牛乳、ヨーグルトを摂り、タンパク質を多めに摂取すると回復が早い気がします」(JA尾道総合病院副院長・花田敬士さん)、「幹細胞の修復に必要なアミノ酸を含む納豆と、アルコール代謝を助けるブロッコリースプラウトを混ぜて食べるのもオススメです」(用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニック・菊池真大さん)と、体感と理屈が合致した選び方をしていた。
また、スポーツドリンクやフルーツ、オートミールといった水分、電解質、糖質をまとめて補給できる食品も意識的に摂取されている。
二日酔いの改善法は?
名医たちも「最後は時間が解決」と認めるも、回復を少しでも早めるヒントは2つありそうだ。
「アルコール摂取後は糖新生が抑制されるため、直接の糖質補充が望ましい。実体験として、気持ち悪くても頑張って糖質を摂ると回復が早い印象です」(サルスクリニック日本橋院長・山下徹志さん)
また、「飲水量を増やして尿量を増やし、アルコールの排出を促すことを意識しています」(東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科講師・福井亮さん)という回答も。
糖質補給。

「朝食で糖質を少し摂ります」(アシュラスメディカル代表・浅部亮さん)、「おにぎりやバナナを食べます」(東京都立豊島病院消化器内科医長・野村舟三さん)など糖質補給を挙げてくれた医師も複数人いた。
きちんと反省する。

「二日酔いは酒飲みが反省するために神様が決めたルール。姑息なことはしないでしっかり反省することです」(秋津医院院長・秋津壽男さん)
いざという時の特効薬。
二日酔いを最も解決してくれるのは時間であるが、辛い時、少しでも症状を楽にするために頼れる特効薬を名医たちは知っている。
ただし、「これさえ飲めば大丈夫」という感覚は、名医たちの中には存在しない。薬もサプリもあくまで一助にすぎず、主役はあくまで「(お酒の)飲み方そのもの」。適度な酒量を見極め、その範囲で楽しむのが名医の嗜みであることは今回のアンケートからも明白だ。












