過剰な塩分で上がる悲鳴!肝臓・腎臓・膵臓の愚痴を聞いてみた。

肝臓さん、腎臓くん、膵臓くんが緊急集合。乱れ切った生活のご主人様に警鐘を鳴らす!

取材・文/石飛カノ イラストレーション/森 拓馬、野村憲司(トキア企画) 取材協力/川口 巧(久留米大学医学部主任教授)、川村哲也(東京慈恵会医科大学客員教授)、糸井隆夫(東京医科大学医学部主任教授) 編集/星野“cap”徹

初出『Tarzan』No.916・2025年12月11日発売

肝臓腎臓膵臓のイラストが悪魔の囁きに脅かされているイラスト
教えてくれた人

川口 巧(かわぐち・たくみ)/久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門主任教授。専門は肝臓病の栄養療法、運動療法。「人間味あふれた臨床医の育成と患者さんに役立つ研究」を目標に、異なる診療科と連携した栄養療法やリハビリを含めたチーム医療を実践。

川村哲也(かわむら・てつや)/〈虎ノ門ヒルズレジデンシャルタワー健康相談クリニック〉院長。東京慈恵会医科大学客員教授。臨床と研究に携わると同時に、腎臓病や高血圧の知識の啓発に努める。著書に『腎臓病(よくわかる最新医学シリーズ)』(主婦の友社)など。

糸井隆夫(いとい・たかお)/東京医科大学消化器内科学分野主任教授。同大学病院国際診療部部長、がん研究事業団理事長、膵臓・胆道疾患センター長、学長特別補佐などを兼任。専門は膵がん、胆道がん、胆管結石など。正確な診断と低侵襲治療を目指している。

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肝臓くん(以下・肝)
黙々黙々黙々……。
腎臓くん(以下・腎)
肝臓さん、相変わらず黙々と働いてますねー。
おっ腎臓くん。今、ぶどう糖からグリコーゲンを作りながら、サプリを分解しながら、胆汁を作りながら、その他もろもろの仕事をしていたところさ。
栄養素の分解・合成、 解毒という働き。

黙々と働く肝臓のイラスト

肝臓のメインの働きは栄養素の分解と合成。たとえば糖質は肝臓でグリコーゲンに変換されて貯蔵され、アミノ酸は肝臓経由で血液によって各所に運ばれタンパク質に合成される。この他、薬やアルコールの解毒も肝臓の重要な働きのひとつ。

胆汁を作り出すことも肝臓の重要な役割。

胆汁を作り出している肝臓のイラスト

脂肪やタンパク質の分解に必須の胆汁を作り出すことも肝臓の役割。肝臓で作られた胆汁は肝臓のすぐ下にある胆囊に蓄積され、膵臓を経由して十二指腸の内部に分泌される。栄養の代謝、解毒、胆汁生成が肝臓の3大タスク。

すごいですよね。噂によると肝臓さんのマルチタスクは500を超えるとか超えないとか。生成AIもびっくりの仕事ぶり。
まあな、よく知られた代謝や解毒や胆汁生成ばかりじゃなく、免疫機能を果たしたり血液を固めたり。もう何やってんのか自分でも分かんないくらいだぜ!
例を挙げたらキリがない、 肝臓の果てしないタスク。

肝臓にあるクッパー細胞という細胞は免疫の最後の砦で小腸から門脈経由で侵入してくる異物を攻撃する。また、肝臓は血液を固めるタンパク質を生成する役割も果たす。肝機能が低下すれば出血時に血が止まらなくなるのだ。

お疲れさまです。
そういう腎臓くんだってすごい仕事ぶりじゃないか。あれ? なんかキミ2重にブレて見えるんだけど。
あっ、僕ら双子なんで。
どうりで瓜二つ。ふたりで心臓からひっきりなしに流れてくる血液を濾過し続けてるんだろ? 1分間に何リットルだっけ?
大体1リットルですかねー。心臓から送り出される血液の4分の1は僕らが濾してます。ま、1リットルの血液から作る原尿っていう尿のもとは100mLくらいなんですけど。
血液を絶え間なく濾し、要/不要のものを仕分け。

腎臓が尿を作り出しているイラスト

毛細血管の固まりの糸球体が心臓から流れ込んでくる血液を濾過して作り出されるのが原尿。カラダに必要なタンパク質はここで濾されて再吸収される。原尿は1日150L程度作られるが尿として排泄されるのは1日1.5L程度。

約1割が尿のもとになるんだ。
とはいえ、原尿の99%は栄養とともにカラダに再吸収されちゃうんですけどね。
なんだか賽の河原のような作業だな……。他にもpHの調節とかしてるらしいじゃないか。
そうなんです。水素イオンを排出して弱アルカリ性の環境を保ってるんです。この作業は肺さんとの共同作業なんですけどね。
肺との共同作業で 弱アルカリ性環境を保つ。

腎臓が肺との共同作業で、水素いおんを排出しているイラスト

水素イオンが体内に溜まるとカラダが酸性に傾き、細胞が正常に働かなくなる。これを防ぐのも腎臓。腎臓が水素イオンを排泄する一方、肺からは二酸化炭素が排出され、カラダにとって最適な弱アルカリ性の環境が保たれる。

あんまり知られてないけど、血を作ったり骨作りにもひと役買ってるって聞いたけど。
えへへ。エリスロポエチンっていうホルモンを出して血液を作ったり、骨作りに必要なビタミンDを活性化させたり。おかげさまで、いろいろやらせてもらってます。
造血や血圧調節に関わる ホルモンも作り出している。

造血は骨髄担当だが、この作業は腎臓が作るエリスロポエチンというホルモンが不可欠。また、血圧が低下したときは腎臓がレニンというホルモンを分泌して血圧を上げるアンジオテンシンIIというホルモンの生成を促す。

骨作りに欠かせない ビタミンDを活性化する。

カルシウムの吸収を促し、骨の強化にひと役買うのがビタミンD。ただし、食事由来や紫外線を浴びて皮膚で作られるビタミンDはそのままでは役に立たず、腎臓で活性型ビタミンDに変換されることで本来の役割を果たす。

膵臓くん(下記・膵)
あの〜。
肝・腎
わっ! びっくりした! 膵臓くん、影が薄すぎて気が付かなかった。
はぁ、いつも胃さんの陰に隠れてるもので……。お二人の仕事ぶりがすごいなぁと思って出てきちゃいました。
そんなことないでしょう。膵臓くんだって陰でいろいろ働いてるって聞いてるよ。
いやお恥ずかしい。腺房細胞というところから、糖質と脂質とタンパク質を分解する消化液が含まれた膵液をせっせと出してます。
栄養吸収に不可欠な 膵臓の外分泌機能。

膵臓が栄養吸収不可能なものを十二指腸へ渡しているイラスト

膵臓本体にある腺房細胞からは糖質を分解するアミラーゼ、タンパク質を分解するトリプシン、脂質を分解するリパーゼといった消化酵素が作られ、これらを含む膵液が十二指腸に向かって分泌される。これが膵臓の外分泌機能。

膵臓くん、目立たないけど実はすごい強力な消化能力を隠し持ってるんだよね。
僕なんてお二人に比べたらまだまだです。あ、肝臓さんが作る胆汁も僕のところから一緒に出させてもらってます。
いつもすまないな。俺の胆汁と膵臓くんのリパーゼ、俺らの共同作業がないと脂っこい食事が消化できないからね。
膵臓くん、それだけじゃなく血糖値のコントロールもしてるらしいじゃないですか。
それは内分泌の方の仕事ですね。インスリンやグルカゴン、ソマトスタチンというホルモンを出して血糖値を上げたり下げたりしてるんです。
血糖値をコントロールする 膵臓の内分泌機能。

ランゲルハンス島を持っている膵臓のイラスト

膵臓の末端の膵尾部に多く存在するランゲルハンス島には血糖値を下げるインスリンを分泌するβ細胞、血糖値を上げるグルカゴンを分泌するα細胞、これらふたつのホルモンを抑制するソマトスタチンを分泌するδ細胞がある。

なんか別荘でその仕事してるって噂を聞いたけど。
あっ、知ってる! なんとかっていう南の島を持ってるって聞いたことあります! 羨ましいです〜。
ああ、ランゲルハンス島のことですね。島っていっても実際は僕の中に点在している小さな組織で、その中の3つの細胞が血糖値を調節するホルモンを作って出しているんです。
ふうん、何度も言いますけど、膵臓くん、目立たないのにいい仕事してますね〜。
いや、改めてそう言われると照れます。
俺らはひたすら寡黙に仕事しているせいからか、誰も褒めてくれないからな。
肝・腎・膵の心の声
(自分たちの仕事をもっとアピールした方がいいのかなぁ……)
ハッ、こ、これは膵液がドバドバ出そうな予感がします。今、ご主人がご馳走を目の前にしています!
脳→胃→腸→膵臓のリレーで膵液分泌が準備される。

ご馳走を目にすると脳からアセチルコリンという物質が分泌され膵臓の腺房細胞を刺激。さらに胃や十二指腸に食物が入るとガストリン、セクレチン、コレシストキニンといった消化管ホルモンが分泌され膵液が放出される。

むっ、膵臓くんが膵液をドバドバ出そうとしてるってことはもうすぐいろんな栄養素たちがやってくるな。こうしちゃいられない!
僕も持ち場に戻ろうっと。

1か月後。

腎臓くん、最近どうだい?
いや〜、しんどいです。年末年始のせいなんでしょうか。僕は余分な塩分とリンを排出するのも仕事のうちなんですけど、加工食品とか外食とかに含まれる大量の塩分とリンがひっきりなしにやってきて。そろそろ限界です……。
石灰化や高血圧の予防にも 腎臓がひと役買っている。

食物に含まれるミネラルのリンは体内でカルシウムと結合して骨の材料になる。一方、過剰なリンは血管や臓器の石灰化を促す。また、血中の余分なナトリウムは血圧上昇の原因に。リンと塩分の排出量を調節するのも腎臓だ。

あ〜、大変だよね。そうか、年末年始だからなのか。ご主人が缶チューハイを1日何回も飲んでいるのは。あれの中に入っている果糖ぶどう糖液糖っていうのがすごいスピードでやってきて、あっという間に脂肪に合成されてしまうんだ。
果糖ぶどう糖液糖が 猛スピードで肝臓に至る。

果糖ぶどう糖液糖はでんぷんから作られる甘味料の一種。別名を異性化糖。果糖とぶどう糖のミックスで含まれる割合が多いものが名称の先頭に来る。果糖は吸収スピードが速いことで知られるが、それ以上に吸収速度が速い。

あの〜。
肝・腎
わっ! びっくりした! 膵臓くん。なんか太った?
分かります? 肝臓さんの脂肪肝のように、私にも脂肪が溜まることがあるんです。
脂肪肝ならぬ脂肪膵。
僕は腎臓さんほどではないけど、ご主人の加齢の影響で小さく縮んだりするんです。当然、膵液を出す勢いも衰えてきます。
だからみんな歳をとるとカルビよりロース、大トロより赤身が好きになるのか〜。
それなのに脂っこいものの過食と運動不足が祟ってこんな姿になってしまいました。
気の毒に……。
そう気を落とさず。ホラ、俺のこのへんにも脂肪たくさんついてるし。
いや、私の脂肪は肝臓さんと違って一度ついたら二度と取れないんです。
膵臓に溜まった脂肪は 運動や食事制限では落とせない。

肝臓についた脂肪は運動や食事制限などで体重を落とせば取り除くことができる。ところが、膵臓に蓄積された脂肪は落ちにくいことが分かっている。腹部のエコー検査で白く輝いて見えることから「高輝度膵」と呼ばれている。

えっ? 一生そのまんま?
マジやばいです。このまま行くと、私の腺房細胞、脂肪に乗っ取られてしまいます。
膵臓の細胞が脂肪に 乗っ取られると手遅れに。

脂肪膵がひどくなると「脂肪置換」と呼ばれる状態に。これは膵臓の腺房細胞が脂肪に置き換わってしまう状態で、二度と後戻りはできない。ただ、理由は不明だがランゲルハンス島だけは脂肪に乗っ取られずに残り続ける。

俺ら、ご主人のためと思って黙々と仕事をこなしてきたけれど、このままでいいんだろうか。
よくないですよね。
このまま黙っていたら、全員共倒れです〜。
沈黙は金、と言ってる場合じゃないな。よし、みんなで注意喚起のサインを送ろう!
あっ、そんなこと言ってる間に昨日の締めのラーメンスープの塩分がやってきたっ! どんどん漉さなきゃ!
うう、しかも今なんか日本酒飲みながら天ぷら食べてる。膵液をドバドバ出さなきゃ間に合わない〜。
頼むからデザートにアイスとか食べないでくれ、あっ、食った! くそう! また余分な脂肪がついてしまうじゃないか。
肝・腎・膵
誰かご主人に僕たちをいたわるよう言ってくれ〜!
今こそ食事を振り返り、 3つの臓器をいたわるとき。

肝臓腎臓膵臓のイラストが悪魔の囁きに脅かされているイラスト

余分な糖質、余分な脂肪、過剰な塩分、過剰なアルコールが肝臓、腎臓、膵臓を痛めつける。沈黙の臓器の善意に甘えていてはいけない。彼らが悲鳴を上げ始めたら、それは臓器の寿命がもうすぐ尽きるというサインなり。