酒好きが体験!いま注目の内臓検査と治療法。

言わずもがな、病気を早期に発見して有効な治療を行うことは何より重要。医療ジャーナリスト・市川衛さんの案内で、いま注目の検査と治療法を探ってみよう。イラストレーターのカラダを張った検査ルポも必見だ。

取材・文/オカモトノブコ イラストレーション/川崎タカオ

初出『Tarzan』No.916・2025年12月11日発売

四コマ漫画の一コマ
教えてくれた人

市川衛(いちかわ・まもる)/東京大学医学部卒業後NHKに入局し、医療・福祉・健康分野での取材多数。現在は“医療の翻訳家”として、メディア発信や団体運営などで幅広く活躍中。

川崎タカオ(かわさき・たかお)/イラストレーター。毎日の晩酌は欠かさない1975年生まれ。好物はラーメンとビール。

肝臓|酒好きイラストレーターが《フィブロスキャン》を体験!

菊池真大/用賀きくち内科、肝臓・内視鏡クリニック院長。慶應義塾大学消化器内科で研鑽を積み、同大学助教、米ペンシルベニア大学留学、国立病院機構東京医療センター消化器科副医長・診療科長などを経て現職。東海大学客員准教授。

肝硬度と脂肪量を揺らして数値化。経過観察もできる画期的な検査が登場。
肝臓の検査漫画

脂肪肝や線維化の影響はまだ見られなかったものの、肝機能や中性脂肪の値は日頃の酒飲み習慣を如実に表す結果に。「ビール好きだと尿酸値も高く出ます」とのことで、検査値はやっぱり裏切らない。

検査|カラダへの負担なく数値を測定

「肝機能検査ではまず、振動と超音波で組織の状態を数値化できるフィブロスキャン検査が最近のトレンドです」と武蔵大学准教授で医療ジャーナリストの市川衛さん。

国内に初導入された当時を知る用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニックの菊池真大さんは「肝硬度を調べるかつての主流は、組織を採取する侵襲性の高い肝生検。これに対し、カラダへの負担なく測定できるフィブロスキャン検査はまさに画期的でした」と話す。

時代とともに脂肪肝の弊害が問われる中、検査機器はさらに進化。

「2011年には、それまでエコーの見た目でしか評価できなかった脂肪量も数値化できるように。さらにフィブロスキャンのもうひとつの利点は、肝臓の状態を定期的にフォローできること。数値の変化が目に見えて、生活改善などのモチベアップに繫がります」

フィブロスキャン検査

フィブロスキャン検査

脂肪肝の疑いがあれば、単体での費用は3割負担の保険適用で600円程度、3か月ごとに検査が可能。現在の実施施設は限られるが、機器の価格低下で今後のさらなる普及が予測される。

治療|脂肪肝炎にはビタミンE製剤の投与

脂肪肝の影響も見逃せないが、実は肝がんの最多の原因はウイルス性肝炎。これに対して「近年、ウイルスを撃滅できる新薬が登場。C型肝炎は完治が目指せるようになりました」と市川さん。

脂肪肝炎の新しい投薬治療としては「基礎疾患がなければ、肝臓の炎症を引き起こす血管のサビを抗酸化作用によって削ぎ落とすビタミンE製剤が使われます。糖尿病治療薬として知られるSGLT2阻害薬、GLP—1受容体作動薬でも肝機能を改善するデータが報告されています」と菊池さん。

腎臓|24時間蓄尿する《ユリンメート》で、腎臓の状態を調べてみた。

福井亮/東京慈恵会医科大学、腎臓・高血圧内科講師。総合内科専門医、腎臓専門医。厚生労働省健康局難病対策課およびがん・疾病対策課へ出向も経験。日本腎臓病協会の慢性腎臓病対策部会・東京ブロック代表も務める。

新規透析導入は減少傾向に。腎機能を守り、進行を抑える4つの薬が治療の柱へ。
腎臓の検査漫画

腎臓は問題ナシで、まずはひと安心。ただし「尿量が少なくて濃いのは脱水のサイン。飲酒中はチェイサーとして水を飲むと尿量が保たれ、代謝物の排泄が進んで二日酔いも軽くなります」とのこと。

検査|尿中のタンパク質を指標に異変を調べる

腎障害を早い段階から見極めるカギとなるのが、毛細血管から尿中に漏れ出たタンパク質の存在。

「なかでも尿中アルブミンは微量でも検出できる検査ですが、尿の濃さに左右されるのがネックでした。そこで排出量がある程度一定の尿中クレアチニン値を同時に調べ、これを基に平準化した“尿中アルブミン・クレアチニン比(UACR)”が有効な指標として用いられています」と市川さん。

UACRの計算式

公式尿中アルブミン濃度(mg/dL)
尿中クレアチニン濃度(mg/dL)
尿中アルブミン・クレアチニン比(UACR)

1日の排出量が比較的安定している尿クレアチニン濃度を用いて比率を計算し、尿の濃さによらず漏れ出たアルブミンの量を推定するのが尿中アルブミン・クレアチニン比(UACR)。30mg/gCr未満が正常とされる。

ただし現在、医療保険を使ってUACRの検査が受けられるのは糖尿病患者のみ。とはいえ患者の負担の少なさから、将来使えるケースの拡大が期待されている。

東京慈恵会医科大学講師・福井亮さんは「一般健診では、必須項目でCDKの診断にも重要な尿タンパクに注目を。ただし健診では尿の濃さに左右される定性検査のみのため、+1以上なら定量検査がお勧めです。さらに24時間蓄尿検査のユリンメートでは1日の尿タンパク量や塩分摂取量などの実測に加え、腎機能の正確な指標であるクレアチニンクリアランスも測定できます」とアドバイスする。

ユリンメート®P

ユリンメート®P

24時間分の尿を採取し、その50分の1量を蓄尿。計測器は場所を取らず携帯も可能だ。推定値によらない1日分のタンパク尿や塩分摂取量などが分かり、より精度の高い検査が可能に。

治療|腎疾患には4種の投薬を

腎疾患の治療では「新規の透析導入は徐々に減り始めているのが最近の傾向です」と市川さん。

その理由としてまず考えられるのは、健診の普及などで透析原因の6割を占めるCKDが重篤化する前に治療へアクセスできるようになったこと。さらに近年、薬を使った有効な治療法が確立したことにもある。

「現在、フォーピラーズと呼ばれている主要な治療薬の中でも、2021年にCKDへ適応が拡大されたSGLT2阻害薬は、糖の再吸収を抑えて尿から排泄させ、血糖・血圧・尿タンパクの減少に加え、糸球体内圧を下げて腎臓を守る効果が確認されています。2型糖尿病で使われるGLP—1受容体作動薬や、腎臓の炎症・線維化を抑える非ステロイド型の新しいMR拮抗薬は副作用が比較的少ない点も特徴で、腎・心血管リスクの低減に有用です。これらに長く使われてきたRAS阻害薬を加えた4種類が“フォーピラーズ”とされています」(福井さん)

フォーピラーズ

CKD治療の指針として新しく登場した概念が「4つの柱=Four Pillars」を意味する4種の治療薬。2型糖尿病患者にのみ保険適用のものもあるが、気になる人は医師に相談してみよう。

  • SGLT2阻害薬
  • GLP-1受容体作動薬
  • MR拮抗薬
  • RAS阻害薬

膵臓|MRCP検査で膵臓の状態をチェック。

野村舟三/東京都立豊島病院、消化器内科・医長。日本消化器病学会および日本消化器内視鏡学会における専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本膵臓学会認定指導医、日本胆道学会認定指導医などを兼任。

高精度の検査で早期発見・治療が可能に。地域医療との連携が最新のキーワード。
膵臓の検査漫画

MRCPは、膵臓の検診の中でも非侵襲的かつ精度の高い検査。液体成分が強調されて写るため、がんができやすい膵管の拡張や狭窄、膵囊胞などが判別できる。経口造影剤を服用すると、画像の見え方がよりクリアに。消化器科医師・赤城さんからは「川崎さんの膵臓は現在のところ異常ありませんが、アルコールの蓄積が膵臓を痛めつけるので、深酒にはくれぐれも注意です」とアドバイスが。

検査|造影剤を用いた検査で広範囲に異常をサーチ

予後の生存率からも、膵臓の病気は早期発見・治療が何より重要。

「最近では、地域医師会と連携して膵がんのリスクが高い患者に精密検査を行う、JA尾道総合病院による膵がんプロジェクトが“尾道方式”と呼ばれて注目を集めています」と市川さん。

こうした観点から、独自の「膵がん早期診断プロジェクト」を推進する東京都立豊島病院消化器内科の野村舟三さんはこう解説する。

「膵臓に関わる検査値の異常、エコー検査の所見などがある人は、まず造影剤を用いた“膵臓ダイナミックCT検査”または“MRCP検査”で、膵管の異常や膵囊胞の有無などを広範囲に調べます」

所見があれば、同病院ではさらに“EUS検査”を実施。

「ここ15年ほどで普及したEUSでは、MRCPやCT検査では見つけられなかった小さな病変も検出可能に。その精度は高く、囊胞がある場合もその形や見た目などの特徴から、悪性化しやすい種類を特定できるようになりました」

治療|膵嚢胞は経過観察を欠かさない

膵がんが見つかれば、ステージに応じて外科的な切除手術や化学療法などが行われる。注意したいのは、膵囊胞が見つかった場合。

「最も大切なのは、経過観察を欠かさないこと。基本的に自然治癒はしないため、フォローを怠ってがん化する非常に残念なケースも見られます」(野村さん)

また2022年、高額な重粒子線治療が膵がん治療の保険適用に。

「ただし手術による切除が困難な局所進行性の膵がんで遠隔転移がない場合など、現在の治療対象はごく限られたケースとなります」

超音波内視鏡(EUS)検査のしくみ

超音波内視鏡(EUS)検査のしくみ

喉に鎮静・鎮痛作用のある麻酔を使用し、口から直径15mm弱の内視鏡を挿入。先端の超音波装置から胃や十二指腸の壁を通して、膵臓の小さな病変まで詳しく調べることができる。

東京ミッドタウンクリニック
東京ミッドタウンクリニック

協力/プレメディカ

東京都港区赤坂9-7-1ミッドタウン・タワー6F。検査を担当した消化器科の赤城一郎医師は、日本消化器病学会や日本超音波医学会の指導医・専門医、厚生労働省医員などを多数兼任。WEBサイト