全草使える「マリーゴールド」は、鶏の煮込みのソースと、オイル漬けに。|10月のハーブ・マリーゴールド

可愛らしいオレンジの花を愛でるだけではもったいない。様々な種類のあるマリーゴールドは、非常にポテンシャルの高い植物だと〈ハーブスタンド〉の平野優太さんは言います。花だけでなく、葉や茎もまた食用にもなり、香りづけとしても使える。植物の可能性を引き出すべく、試行錯誤を続ける平野さんに、ハーブとの新しい関係性を教えてもらう連載「ワンモア・ハーブ」。第12回は、マリンゴールドについて。

取材・文/村岡俊也 撮影/ナタリー・カンタクーゾ 料理/阿部匠海

マリーゴールド

違う属性の植物をひとまとめに「マリーゴールド」と呼んでいる場合があります。マリーゴールドとよく似ていますが、厳密に言えば違う属性の植物であるカレンデュラもそのうちのひとつ。肌の炎症を抑える効果があって、化粧水やクリームに多く用いられています。

一方でハーブとしてはあまり活用されていないのが、いわゆるフレンチ系と呼ばれるマリーゴールド。メキシカンマリーゴールドやレモンジャムなど食用にもおすすめの品種も多く、今回は中でも一押しのレモンマリーゴールドを紹介したいんです。

台湾や中国でも茶として飲まれていたり、生花はエディブルフラワーとしてサラダで食べたりもします。キク科の花の多くは食用にできるんですが、ぜひ試していただきたいのは、葉っぱの活用なんです。肉料理にも相性がいいですし、個人的にはフムスなど豆料理の合わせるのもおすすめです。

蕾はケッパーのように薬味にもなりますし、実は全草余すところなく使える。畑で作物の脇に植えるコンパニオンプランツとしても益虫を呼びますし、農業的にも有用性が高い植物なんです。

こんなふうに使ってみるのはどう?

●「食べる」
レモンマリーゴールドのグレモラータ 鶏肉の塩煮

ー材料ー

・マリーゴールド 20g
・オリーブオイル 50g
・ニンニク 1g
・ケッパー 25g
・塩 1g
・レモンピール 1個分
・レモン汁 1g

・鶏肉 2枚
・白ワイン 50ml
・玉ねぎ 1個
・塩 適量
・水 500ml

ー作り方ー

葉っぱと花に分けて、刻む。

ニンニク、ケッパー、マリーゴールドを刻んだら、レモン汁を搾る。

塩を振った鶏肉をソテーする。

一度取り出して、鶏肉を一口大に切り、玉ねぎと合わせて煮込んでいく。

お皿に取り分け、グレモラータソースを載せてから、オリーブオイルをかけて完成。

イタリアの薬味のようなソース、グレモラータを作ります。ミラノにはオーソブッコという煮込み料理がありますが、こっくりとした味なのでキレを出すために使うソースが、グレモラータ。イタリアンパセリとケッパー、レモン汁で作るのが一般的ですが、今回は同じく柑橘系の香りを持つマリーゴールドで作ります。オーソブッコは牛のスネ肉を使うんですが、入手しづらいと思うので、鶏肉を使いました。花はレモンマリーゴールド、それからオレンジのような甘い香りが特徴のメキシカンマリーゴールドをブレンドして使っています。

マリーゴールドは料理人の中でも、エスニックを好きな人が好むように思います。中華料理の豚の煮込み、トンポーローを作ったときにも、マリーゴールドの茎をスパイスのように使いました。実はどんな料理にも合わせやすい、優秀なハーブです。

●「使う」
マリーゴールドのインフューズド・オイル

―材料―

・オリーブオイル(未精製・エクストラバージンがおすすめ) 100ml
・レモンマリーゴールドまたはフレンチマリーゴールドの葉や花 適量

ガラス瓶に花を軽く砕いたマリーゴールドを入れ、オリーブオイルをひたひたに注ぐ。

瓶の蓋をしっかり閉め、直射日光を避けて温かい場所に2週間ほど置く。毎日軽く瓶を振る。2週間後、布などで渡して植物を取り除き、遮光瓶で保存。

今回はレモンマリーゴールド、そして本来は別の属性の植物ですがマリーゴールドとしての認知のある、カレンデュラを合わせます。化粧水にも使われるカレンデュラには肌の炎症を抑える効果がありますし、レモンマリーゴールドは、柑橘の香りが高いんです。今回はエクストラバージンオイルに漬け込んで、料理にも使えて、肌につけてもいいというオイルに仕上げます。

漬けてからはおよそ2週間ほどで使えます。フレッシュな素材は青みがありますが、乾燥すると、その青みが抜けるので、ドライにしてから漬け込んでもいいでしょう。レモンマリーゴールドは多年生の植物ですので、冬に枯れる直前に収穫すると、全草使うことができます。オイルはストックしておけるので、料理の最後に香り漬けとしても垂らして使ってみてください。

10月のハーブスタンドの様子

富士北麓では山の果実も赤や紫色に熟し始め、紅葉も徐々に始まり、色鮮やかな秋の山へと移り変わってきました。