「肥満遺伝子」は何タイプ? 検査で分かる、ダイエットの最短距離。
自分がどう太りやすいのか、遺伝的な傾向を調べてみよう!「肥満遺伝子」はやはり存在する。リスクを逆手に取りながら、環境要因や生活習慣の改善に取り組めば、肥満も回避できるのだ。
取材・文/神吉弘邦 撮影/山本 嵩
初出『Tarzan』No.901・2025年4月17日発売

腹を絞るなら“肥満遺伝子”をチェックせよ!
そもそも肥満遺伝子とは、エネルギー代謝に関わる3つの遺伝子のことを指す。
まずは、ヒトの8番目の染色体にある「β3AR遺伝子」。脳がアドレナリンを受容することで生じる脂肪の分解と燃焼に関与する。この遺伝子に変異があると、インスリンの働きが弱まって筋肉に糖を取り込みにくくなり、余った糖がどんどん内臓脂肪に。ウェストまわりから太りやすくなるのが特徴だ。
創業21年を迎え、40万人もの遺伝子検査データを保有する日本企業〈ジェネシスヘルスケア〉では「β3AR遺伝子」に変異を持つケースを「りんご型」という診断タイプ名にしている。
次が、ヒトの4番目の染色体にある「UCP1遺伝子」。褐色脂肪細胞の熱産生に関与。この遺伝子に変異がある場合、体温が低いと皮下脂肪を燃焼しにくく、油脂を摂り過ぎると太りやすい。下半身の皮下脂肪になりやすいため「洋なし型」と呼ばれる。
最後が、ヒトの5番目の染色体にある「β2AR遺伝子」。変異があると、特にタンパク質をエネルギーとして早く消費する傾向がある。筋肉がつきにくい体型から「バナナ型」と分類している。
「これらの変異を調べると、自分がどう太りやすいのか、遺伝的な傾向がわかります」と語るのは、同社取締役副会長の佐藤バラン伊里さん。佐藤さんは「遺伝子が変異した背景には人類の生存戦略があった」と続ける。
「3つの遺伝子は、飢餓に耐えるために変異した“倹約遺伝子”といわれます。りんご型への変異は、少ない糖をカラダに蓄えるため。洋なし型への変異は、熱を節約してカラダを温めるためだったという論文があります」
つまり、リスクを逆手に環境要因や生活習慣の改善に取り組めば、肥満も回避できるのだ。
腹まわりに悩む料理芸人が検査を体験!
腹まわりの肉がなかなか落ちないと悩む料理芸人のクック井上。さん。〈ジェネシスヘルスケア〉製の検査キットを使い、自身の「肥満遺伝子」を調べてもらった。
クック井上。/フードコーディネーター、食育インストラクター、野菜ソムリエ、こども成育インストラクター、BBQインストラクター、防災士の資格を持つ芸人。焼き餃子協会アワード金賞、からあげグランプリ審査員、農水省FANバサダー。
気になる結果は……。
検査同意書と検体を返送すると、1週間ほどで結果が判明。ウェブや専用アプリで内容を確認できる。
両親から受け継いだ遺伝子の両方に変異があるとホモ型、片方に変異があるとヘテロ型、どちらにも変異がないとワイルド型に区分される。クック井上。さんは、りんご型(糖質の代謝が苦手)遺伝子にヘテロ型、バナナ型(筋肉のつきにくい傾向)の遺伝子にホモ型の変異があった。
一方、洋なし型(脂質の代謝が苦手)の遺伝子に変異はなかった。遺伝子ダイエットタイプの判定は、さらに性別や身体的特徴、食事の傾向などを統計学的に解析して54パターンに分類するため、男性により強く特徴が表れる「りんご型」の判定に。
体験してみて……。
「身長171cmのボクは20歳の体重が55kg。今だいたい75kgです。遅い時間に飲んでつまんでが腹まわりによくないけど、どうしても標準体重65kgの自分を取り戻したい!
有酸素運動はしているほう。飲み歩きは徒歩で1日2万5000歩もザラ。でも効果はいまひとつです。先月まで「からあげグランプリ」の審査をやって2か月で200個を食べました。1個平均40gだから全部で8㎏(笑)。その時に太った実感はなく、ラーメンのほうが太るのはどうしてだろうと思っていた謎が遺伝子で解けました。
筋力が落ちている実感は、バナナ型だったからか。若い頃はいくら食べても痩せていたからな。救いだったのは、大好きな薄皮&野菜たっぷりの餃子はむしろOKなこと。野菜餃子と有酸素運動+フッキンで理想の体型を目指そうかな。今回勉強のきっかけをもらったので、皆さんここから見ていてください!」
体質に合わないダイエットやエクササイズは、遠回りにも。
りんご型と判定されたクックさんは「祖先が厳しい環境に適応した結果だったのか」と歴史に思いを馳せる結果に。でも、過食の時代にあっては生存リスクに真逆の影響しかない。「糖を溜め込む変異をしたタイプは、やはり炭水化物が大好物でしょう。遺伝子に負けたらダメですよ」と佐藤さんから厳しい言葉。ラーメン好きなクックさんへ、具体的で愛のあるアドバイスも。
「お腹まわりは糖質で太るから、低炭水化物ダイエットが早道。クックさんはバナナ型変異もあるので、多めにタンパク質を摂るのもおすすめ。“チャーシュー増し、麺少なめ、野菜を追加”なら大正解です」(佐藤さん)
まず、脂肪を落とす。その後に筋肉をつけて代謝を上げる。体質に合わせた戦略を1つずつこなしていくのが結局は最短ルートだ。肥満要因と遺伝子の関係は今も研究が進んでいる。現段階の最新情報と知恵を武器にして腹痩せに励みたい。
〈GeneLife DIET〉遺伝的な体質の傾向を知って自分に合ったダイエット戦略を。
エネルギー代謝に関わる3つの遺伝子(通称、肥満遺伝子)を解析して、日本人に特有の肥満タイプ4分類で自分のダイエットタイプを判定。結果をもとに「控えるべき食材は何か?」など、自分の体質に合った食事や運動がわかる。対象年齢は18歳以上。5,980円。WEBサイト
他にもある! おすすめ検査キット。
〈遺伝子博士〉
検査結果から「現在のタイプ」と「目指すタイプ」の33種類を動物にたとえるのがユニーク。体質に合った食材、遺伝子タイプ別のトレーニング動画、痩せる習慣のライフスタイル提案、体重管理などを専用アプリで提供。レポートブックオプションも有料で用意する。8,580円。WEBサイト
〈chatGENE〉理想のボディ作りへの遺伝子検査が一度に。
ダイエットに関連する74の遺伝子を分析、478万パターンから遺伝的な体質をもとに、どんなダイエットが向くのかを食事と運動の切り口から提案してくれる。ほかにも栄養素や肌、スポーツパフォーマンス、性格特性や行動特性など400項目を一度で判定。6,800円。WEBサイト