
木工作家・鰤岡力也さんの、フライフィッシングに欠かせないコスメ。|ささやかだけど、大事なこと。 vol.6
気持ちよく汗をかくときにこそ使いたいコスメやアイテムがある。日々身体を動かしているあの人がどんなものを愛用しているのか、アクティビティに同行して紹介。第6回は木工作家の鰤岡力也さんが、フライフィッシングの前後で使う3つのアイテムの話。
取材・文/佐々木彩 編集/黒木許子 撮影/五十嵐一晴(ロケーション)、鳥羽田幹太(プロダクト)

Profile
鰤岡力也(ぶりおか・りきや)/木工作家。独学で木工の技術を身につけ家具づくりを行う。2010年には自身の工房〈MOBLEY WORKS〉を立ち上げた。家具の製作・販売のほか、〈パドラーズコーヒー〉をはじめとしたショップの内装も手掛けている。
木工作家として家具制作やショップの内装を手がけている鰤岡力也さんは、40歳を迎えた頃からフライフィッシングに足繁く通っている。それまで、仕事一筋の生活を送ってきたが、自分自身で好きな家を建てるという一つの目標を達成。ちょうどその頃、フライフィッシングが趣味というスタッフが入社してきて、連れて行ってもらったのがはじまりだ。

フィッシングのスポット近くに車を停めて、〈パタゴニア〉のウェーダーパンツを履き、準備に取り掛かる。腰掛けは自作。
「子供の頃は多摩川でフナを釣ったり、わりと釣りは身近なものでした。大学時代には、釣具店の〈上州屋〉で4年間アルバイトもしていたし、好きなアクティビティだったことを思い出させてもらった感じ」

少し歩いて川のほうへ。背中には、家具制作の端材から作ったランディングネットを。
釣りの経験があったとはいえ、フライフィッシングはそれまでやってきたものとは全くの別物だと鰤岡さんは話す。
「キャスティングといって、ロッドとリールを使って投げるんですけど、これが難しい。初めてやる人は、フライラインがうまく投げられなくて1日が終わってしまうことがよくあるんです。フライラインがすごく長いので、ポイントに向かって投げても、枝にひっかかってしまう。そして狙ったところに投げ入れられるようになるまでが、辛抱が必要なところ。ちなみに今日は、ロッドもフライラインも短いタイプを持ってきたのですが、川の大きさや、釣りたい魚にあわせて、もっと長いタイプを使うこともあります」

さっそく川へ入る。同じスポットで3~4回キャスティングして手応えがなければ、どんどんとポイントを変えていく。
また、川のどのポイントに行けば釣れるのか、その川をよく知っている人と行動を共にすることが、楽しめるようになるために必要な道だという。そのためにも、情報交換できる釣り仲間が大切な存在だそう。
「フライフィッシングって、魚を釣るだけが目的じゃないところが面白い。こだわったロッドを持ったり、鳥の羽で毛鉤を作ったり、キャスティングでフライラインが描く美しい弧だったりと、総合芸術だと思うんです。服装もそのひとつで、長年やっている人の中には、フライフィッシングを一躍広めた映画『リバー・ランズ・スルー・イット』の登場人物になりきっているかのように、テンガロンハットをかぶっている人もいるんですよ」

魚が餌とする虫を模した毛鉤。主に天然の羽を用いたもの。
竹竿は、岩手の職人によるオーダーメイドのものをいくつか所有し、ツールを揃えるのも楽しみにしている。
「この竹竿はフライフィッシングを始めた頃から使いたかったもの。しなり方が滑らかで、グラスファイバーやカーボンファイバーなどとは異なり美しいんです」
また、パンツも歴代ずっと〈パタゴニア〉のものを。
「崖を上り下りしたり、時には転んだり、釣場に出向くまでハードな道程もあるから、パンツは耐久性を重視。もちろん色使いなどデザインも好き」

知り合いにオーダーした竹製の竿と小型リールが相棒。
鰤岡さんは、週1回は川へ入るという。
「マインドフルネスに近いのかもしれないですね。本当は毎日行きたいぐらい。釣りに行くと仕事がスムーズに進む。むしろ、釣りに行けずに工場にいると煮詰まってきて仕事が捗らなかったり(笑)。あとは釣りのスポットは電波が入らないところがほとんどなので、デジタルデトックスになります」
また、家具を販売するポップアップショップのために東北に行くときは、釣りに出かけるスケジュールもしっかり組み込むのがお約束。
「岩手の川は特にいいんです。森の中を歩いて、魚を求めて上流へ上流へと進んでいくんですけど、上流に行くほど地形がフラットになって見通しが良くて気持ちいい。まさに、宮沢賢治の“イーハトーヴ”を目指して進んでいくような感じなんです。1日中歩いてクタクタになるんですけど、自然の美しさに触れ、疲労感さえ心地よい」
フライフィッシングは、屋外のアクティビティということもあり、必携アイテムがあるという。
まず手放せないのがハッカ油。スプレータイプを携帯しているそう。
「蚊やブヨなどの虫対策もありますが、どちらかというとメマトイ(目の周りにまとわりついてくる小さな虫)を払うために首筋につけたりします。自分に対しても環境に対しても害がない自然由来のものであり、スーッとして好きです」

何年も愛用しているハッカ油。こまめにスプレーして香りを纏う。
そして、紫外線対策としてUVクリームも欠かさない。
「もともと〈イソップ〉の他の製品を使っていたこともあり、日焼け止めも使い始めました。質感も良く、何より顔に塗った時にいい香りがする。日頃スキンケアを入念に行うタイプでもないし、化粧品には馴染みがないのですが、これはストレスなく使えています」
フライフィッシングから戻ったら、夜はアロマオイルでリラックスするのも鰤岡さんのルーティーン。友人が手掛けているブランド〈アポテーケ〉を揃えていて、気分に合わせて選んでいるそう。
「海岸や河原で拾った石に、オイルを垂らしてベッドサイドにおいて眠ります。ふわっとアロマが香ってくるとすごく落ち着きます」
一般的には専用のアロマストーンがあるけれど、鰤岡さんは、自身で選んだ石でくつろぎの時間を過ごす。

アロマオイルは友人が手がける〈アポテーケ〉が定番。
かれこれ10年弱日本の川を巡っている鰤岡さん。フライフィッシングはイギリスで生まれ、アメリカをはじめ世界各地に伝播。けれど、海外遠征の予定を尋ねると「むしろ日本をもっと掘り下げたい」と即答。
「日本にはものすごく美しい川が、本当にたくさんあるんです。通いたい川もあるし、新規開拓もしたい。フライフィッシングは、やればやるほど奥深くて、飽きる自分は想像できない。趣味を超えたライフワークとして、これからも続けたいですね」
こんなアイテムも、おすすめです。
フライフィッシングをともにするコスメたち。鰤岡さん必携の3点に着想したアイテムを、Tarzan Web編集部が見つけました。
アウトドアスプレー
植物の香りで肌を包む
UVケア
ナチュラル処方の日焼け止め
アロマオイル
ストーンに垂らす芳香浴