
そもそもメッツ(METs)って何?
掃除、洗濯、通勤、仕事、ランニング、スポーツ……。自分で普段行っている活動にどのくらいの強度があり、どれほどカロリーを消費するのか。それを教えてくれるのがメッツ(METs)。英語の「metabolic equivalents(代謝当量)」の略である。
「メッツは、坐って安静にしている状態を1メッツとして、その何倍のエネルギーを消費するかを示します。たとえば、3メッツなら安静時の3倍のエネルギーを消費することになります」(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の吉村英一室長)
便利なのは、メッツ×体重で消費カロリーが簡単に計算できること(下公式参照)。家事でも運動でも、どのくらいカロリーが消費されるかがわかるとやる気が出るもの。メッツを意識して、日常の活動量を少しずつでも増やそう。
メッツから消費カロリーを求める公式。
消費カロリー(kcal)=メッツ×体重(kg)×時間(h)
3メッツの活動を体重65kgの人が30分間(0.5時間)行うと3×65×0.5=97.5kcalを消費する。
歴史は30年以上。2024年に最新版がリリース!
メッツをまとめる仕事を始めたのは、アメリカの研究者たち。1993年に学術誌で初めて公表された。
その後、2000年、11年と2度の改訂が行われており、それを翻訳する形で08年と12年に日本語版が公表された。さらに24年に3回目の改訂が行われて、日本語版は同年公表されている。
「最新版では300個近い活動が増えたうえ、データの精査などにより、100個以上の活動でメッツ値の更新などが行われました」
メッツ表に収録された活動数は1111個に増加。ビデオゲームや電動アシスト付き自転車による移動なども加わった。
さらに、成人版(19〜59歳)、高齢者版(60歳以上)、車椅子利用者版に細分化されたのも特徴。今回取り上げるのは、このうちの成人版である。
1週間に23メッツ・時以上の活動を心がけよう。
安静にしている状態より多くのエネルギーを消費する、骨格筋の収縮を伴う全ての活動を「身体活動」という。2本柱は、家事や仕事などの生活活動と運動。消費カロリーに加え、健康のためにどのくらい動けばいいのかについては、「メッツ・時」が参考になる。
メッツ・時とは「メッツ」×「時間(h)」で表される数値のこと。3メッツ以上の活動を何分したかを記録する。たとえば4メッツで通勤時に30分歩いたら、4メッツ×0.5=2メッツ・時となる。
厚生労働省が推奨するのは、続けると息が弾み、汗をかく程度の3メッツ以上の活動を、1週間トータルで23メッツ・時以上行うこと(計算法は下参照。運動の目標値は関連記事:「適度な運動」って何? 運動不足解消のボーダーラインを探ろう。を参照)。
「同時に、1.5メッツ以下と低強度の“座位行動”をできるだけ減らし、3メッツ以上の活動に変えていく意識付けも大切です」
1週間23メッツ・時の達成例。
活動(メッツ)×時間(h) | メッツ・時 | 累計 | |
月 | 通勤時2駅歩く(4.0)×0.5 | 4.0×0.5=2.0 | 2.0 |
火 | 通勤時2駅歩く(4.0)×0.5 掃除機掛け(3.0)×0.2 |
4.0×0.5=2.0 3.0×0.2=0.6 |
4.6 |
水 | 自体重トレ(3.0)×0.5 | 3.0×0.5=1.5 | 6.1 |
木 | 通勤時2駅歩く(4.0)×0.5 浴槽磨き(3.5)×0.2 |
4.0×0.5=2.0 3.5×0.2=0.7 |
8.8 |
金 | 通勤時2駅歩く(4.0)×0.5 アクティブビデオゲーム(4.0)×1.0 |
4.0×0.5=2.0 4.0×1.0=4.0 |
14.8 |
土 | 子供と遊ぶ(3.5)×0.5 スケートボード(5.0)×0.5 |
3.5×0.5=1.75 5.0×0.5=2.5 |
19.05 |
日 | ラン(6.5)×0.5 自体重トレ(3.0)×0.5 |
6.5×0.5=3.25 3.0×0.5=1.5 |
23.8 |
積極的に動いてコツコツ増やそう! 日常生活のメッツ。
一日の身体活動の大半を占めているのは、日常での生活活動。掃除、洗濯、料理をはじめ、子供と遊ぶこと、介護、息抜きのゲームなども含まれる。3メッツ以上の活動を増やしていこう。
食料品の買い物【3.3METs】
4.5kg程度のバッグを運ぶ、立位や歩行を伴う(カート使用の有無を問わない)。
食材を入れたマイバッグを自宅へ持ち帰るのは重労働。
ヨットや飛行機の洗浄およびワックス掛け【4.5METs】
アメリカ発のリストらしい項目。ヨットや飛行機以外ではクルマの洗車&ワックス掛けが2.0メッツとなる。
窓掃除(全般)【3.3METs】
窓掃除は年末の大掃除のみというタイプも少なくないだろうが、立位で広範囲をピカピカにする窓掃除はいい運動。30分励むと107kcal。
植物への水やり【2.0METs】
動き回る動物と違い、植物はじっとしている。それでいて癒やしを与える存在だから水やりを忘れず。地味でも、強度はストレッチ並み。
座位【1.8METs】
バランスチェアやバランスボールに坐りながらタイピングや読書をする。ただ坐るだけだと1.0メッツ。でも不安定な場所に坐ると強度は80%UP。
部屋の片付け【4.8METs】
休日こそカラダを動かすチャンス。平日できなかった部屋の片付けにトライしてみよう。2時間徹底的にやり倒せば9.6メッツ・時ゲット。
高齢者や障がい者(成人)の介護【3.0METs】
入浴、着替え、ベッドへの・からの移乗(活動時に限る) 。ケースバイケースで介護のメッツはもっと上がることも。
子供と遊ぶ【3.5METs】
快活に動く子供と遊んでいると1時間でご飯1膳分(252kcal)弱のカロリーを消費する。(歩行やランニング、ほどほどの労力、活動時に限る)
台所での活動【3.3METs】
調理、皿洗い、掃除など全般(ほどほどの労力)。料理する人は痩せやすいとか。台所仕事が3.3メッツと知れば納得。自炊頻度を増やして。
横になって静かにテレビを観る【1.0METs】
テレビ視聴時間が長いほど、寿命は短くなるという。悪いのはテレビではなく、動かないこと。頻繁に立ち上がろう。
アクティブビデオゲーム【4.0METs】
モーションコントローラーを使ったゲーム(全身を使う、ほどほどの労力)。全身を稼動するゲームの運動量はウォーキング並み。
動物と遊ぶ【4.0METs】
犬のように遊びや散歩が日々必要なペットを飼えば、日常の中で自然に活動量がUP。(歩行やランニング、ほどほどの労力、活動時に限る)
アイロン掛け【1.8METs】
アイロン掛けは低メッツだが、やり始めると無心になり、日頃のストレスが解消できる。ハンカチやシャツなどのシワを丁寧に伸ばして。
床磨き【3.5METs】
手や膝をついて、浴室や浴槽磨き(ほどほどの労力) 。立位の掃除より、四つん這いで行うお風呂掃除の方が高強度。10分×6日で3.5メッツ・時確保。
カードゲーム(座位)【1.5METs】
トランプやトレーディングカードゲームなどは、脳細胞は使っても筋肉はほとんど使わない座位行動の典型。没頭しすぎないこと。
※各メッツは代表的な活動の目安で個人差もあります。
※消費カロリーは体重65kgで計算。