効率よく筋肉を育てる、筋トレの新常識。
筋トレといえば「10回×3セット」、インターバルは60秒と短いのが定番。もちろんその方法でもいいのだが、回数やセット数、時間にこだわらず、効率よく筋肉を育てる筋トレ理論を紹介しよう。
取材・文/井上健二 監修/中村雅俊(西九州大学准教授)
初出『Tarzan』No.900・2025年4月3日発売

教えてくれた人
中村雅俊(なかむら・まさとし)/西九州大学リハビリテーション学部リハビリテーション学科理学療法学専攻主任・准教授。理学療法士。ストレッチや筋トレの新常識を聞いた。
負荷設定で大事なのはトータルボリューム。
筋肉を盛るためのゴールデンルールは「10回×3セット」。一度に10回しか反復できない(11回目ができない)重さ=10RMで限界まで10回行い、それを3セット続けるのだ。
「しかし最近ではトータルボリューム(TV)が大切で、10回×3セットにこだわりすぎなくてもいいとわかりました」(西九州大学の中村雅俊准教授)
- 10kg×10回3セット 週2回=600kg
- 5kg×20回6セット 週1回=600kg
たとえば10RMの10kgで10回×3セットなら、TV=10kg×10×3=300kg。週2回やると600kgだ。
この600kgが同じ1週間以内でこなせたら、5kg×20回=100kgを計6セットやっても、筋肥大効果に大差はない。TVをうまくコントロールすれば、ライフスタイルに合わせてプログラムの自由度が広がり、継続性も上がる。
インターバルは長く取っても構わない。
セット間のインターバル(休息)は60〜90秒と短くした方が、筋肥大は加速するという。だが、インターバルが短すぎると疲れが抜け切れず、10RMの負荷がこなせないことも。
「インターバルは気にせず、1回ずつ丁寧に効かせることを心がけるのが正解です」
インターバルなしに筋トレを切れ目なく行うサーキットトレは、時短になっても、筋肥大にはベストな方法ではなさそう。
「鍛える部位が変わるから連続しても問題ないといいますが、心臓は1個しかないから心拍数は上がりっぱなし。しんどくて筋肉にちゃんとした負荷を加えるのが難しいなら、長めのインターバルで1種目ずつ休み休みやった方が、筋肉に正しく刺激が入り、より効果的なのです。
可動域よりエキセントリックを重視する。
筋トレはROM(Range of Motion)も重要。ROMとは可動域のこと。筋肉を目一杯伸ばし、目一杯縮めてROMを最大化すると、筋肉を満遍なく刺激できて効きやすいという。
「でも、実際はエキセントリック収縮をしっかり効かせる意識の方がもっと大事です」
エキセンでは、筋肉が伸びながら力を出す。アームカールならダンベルを下ろす動き。対照的なのはコンセントリック収縮。ダンベルを上げる際のように、筋肉が縮みながら力を出す。
「エキセンさえあれば、筋肥大にはコンセンはあってもなくてもよい。アームカールなら上げる際は反対の手でサポートしてもOK。最後の最後までダンベルをゆっくり下ろし、エキセンを長くフルに取りましょう」