
教えてくれた人
中野ジェームズ修一(なかの・じぇーむずしゅういち)/1971年、長野県生まれ。スポーツモチベーションCLUB100最高技術責任者。PTI認定プロフェッショナルフィジカルトレーナー、アメリカスポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP-C)。日本では数少ないフィジカルとメンタルの両面を指導できるトレーナー。多くのオリンピック代表選手、青山学院大学駅伝チームなどを指導。『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』が現在ベストセラーに。
血圧|循環系ストレッチ3種。
ハードな運動は血圧を上げる恐れがあるため、血圧が高めなら強度の高い運動は避けるべき。でも、筋肉を軽く動かして血流を活性化させると、血管を開く一酸化窒素(NO)が分泌されて、血圧は下がりやすくなる。
まずは、誰でもできるウォーキングを始めるのが手っ取り早い。しかし、天候などを理由に外出できない日は、何をしたらいいのか。
「おすすめは循環系ストレッチ。全身の血流を循環させるミルキングアクションでNOの分泌も促せます」(フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さん)
ただ頭の位置を下げすぎると血圧が上がりやすい。初めは頭を下げすぎず、小さな動きを3段階で少しずつ大きくして頭を起こすと、血圧上昇は抑えられる。
循環系ストレッチのPOINT
- 500mLのペットボトルを2本用意する。
- 3種目×3レベルで動きを徐々に大きくする。
- 1日1回、好きなときに行う。
循環系ストレッチその1|オウギ(各レベル10回)
【LEVEL1】
- 両足を肩幅に開いてまっすぐ立つ。上体を軽く前方へ倒し、両腕をクロスさせて肩甲骨を開く。
- 両腕を外向きに回しながら、扇を広げるように左右に開き、胸を開いて背中を軽く反らして肩甲骨を開く。元に戻って反復する。
【LEVEL 2&3】
●LEVEL 2
レベル1のスタート姿勢で膝を曲げて上体をより深く倒し、同様に行う。
●LEVEL 3
両手に500㎖のペットボトルを持ち、レベル2を行う。
循環系ストレッチその2|ハンツキ(各レベル左右各10回)
【LEVEL1】
- 両足をできるだけ大股に開いて立ち、爪先を外側に向ける。左手を右肩に添え、右腕は体側に下げる。
- 左腕を肩の高さでまっすぐ横へ伸ばす。
- 両膝を伸ばしたまま、右側の脇腹を縮め、半円を描くように左手を頭上に伸ばす。元に戻って反復する。
【LEVEL 2&3】
●LEVEL 2
レベル1のスタート姿勢から、左膝を曲げて左足に体重を乗せる。両膝を伸ばし、左腕を肩の高さでまっすぐ横に伸ばす。右膝を曲げて右足に体重を乗せながら、半円を描くように左手を頭上に伸ばす。
●LEVEL 3
左手に500mLのペットボトルを持ち、レベル2を行う。
循環系ストレッチその3|ユミ(各レベル左右各10回)
【LEVEL 1】
- 両足を腰幅に開いて立ち、左足を半歩後ろに引いて爪先を立てる。前後の膝を軽く曲げ、上体を股関節から前傾し、両腕を肩幅で後ろに伸ばす。
- 両方の膝と股関節を伸ばしながら、バンザイをするように両腕を天井へ上げる。
- 弓を引くように、左肘を後ろに引いて上体を左側へ捻りながら目線を肘に向ける。元に戻って反復する。
【LEVEL 2&3】
●LEVEL 2
レベル1のスタート姿勢で膝と股関節をより深く前傾させて上体を床と平行に倒し、同様に行う。
●LEVEL 3
両手に500mLのペットボトルを持ち、レベル2を行う。
血糖値|低負荷高回数エクササイズ4種。
筋肉は理想のボディラインを作ってくれるだけではない。余分な血糖を引き受けて盛んに消費し、血糖値を下げてくれる。
ことに有効なのは、糖質を含む食事をした直後、筋肉を繰り返し動かすこと。食後すぐに辛い運動はできないが、軽い運動なら問題ないはず。低負荷でも何回も高回数で反復するうち、筋肉が血糖を取り込んで血糖値がダウンする。
「僕らの研究では10分以上続けると血糖値が下がることがわかっています。それが無理なら、3分でも5分でもいいから食後の習慣にして、いずれ10分継続できるようにしてみてください」
コツはリズミカルに切れ目なく行うこと。この4種目を通して続けると3サイクルほどで10分だ。
低負荷高回数エクササイズのPOINT
- 食後、血糖値が高くなりやすいときに行う。
- 低負荷高回数を心がける。
- 4種目を連続して休みなく行う。
- 運動時間の合計が10分になるのが目標。
低負荷高回数エクササイズその1|オープンスタンス・スクワット(10回)
- 椅子の前で両足を大股に開いて立ち、爪先を外側に向ける。両手を太腿に置き、座面に腰を下ろすように膝と股関節を曲げて深くしゃがむ。
- 背中を丸めない。お尻を座面につくギリギリまで下ろしたら、立ち上がる。
低負荷高回数エクササイズその2|スプリット・スタンドアップ(左右各10回)
- 右側に椅子を置き、右手で背もたれを持ち、姿勢を保つ。
- 左足を大きく後ろに引き、左膝を床に突き刺すように両膝が90度曲がるまでその場でしゃがむ。左腕は左肩の真下に下げる。
- 上体を床と垂直に保つ。上体を引き上げつつ、左膝と股関節を伸ばして左足を右足の真横に揃える。元に戻って反復する。
低負荷高回数エクササイズその3|スプリット・ニーアップ(左右各10回)
- スプリット・スタンドアップでしゃがんだ姿勢を取る。
- 右膝と股関節を伸ばして上体を押し上げたら、左膝を腰の高さまで引き上げる。元に戻って反復する。
低負荷高回数エクササイズその4|スクワット・アンド・インサイドキック(左右各10回)
- オープンスタンス・スクワットでお尻を座面につくギリギリまで下ろした姿勢を取る。
- 両膝と両股関節を伸ばして立ち上がりながら、ボールを右側へ蹴るように左膝を内向きに回す内旋と内側へ伸ばす内転を行う。元に戻って反復する。
コレステロール値|コンカレントトレニーング6種。
コレステロールや中性脂肪の数値が乱れる脂質異常症の対策は、食事の見直しがメイン。ことにコレステロール値は、頑張って運動してもなかなか下がらない。中性脂肪と違い、コレステロールは運動のエネルギー源ではないからだ。
ただし、脂質異常症で動脈硬化が悪化して生じる疾患の予防に、運動は役立つ。その基準は、世界保健機関が成人向けに定めている運動ガイドライン。有酸素運動と筋トレを組み合わせる「コンカレントトレーニング」を推奨しており、1週間に150分〜300分の中程度の有酸素運動と週2回以上の筋トレを提案している。
「中程度の運動はウォーキングで十分。筋トレは複合的な動きで、大筋群を効率的に鍛えましょう」
コンカレントトレーニングのPOINT
- 筋トレと有酸素運動の2本立てで行う。
- 筋トレのために2L入りのペットボトルを2本用意。
- 筋トレは大筋群を中心に5種目。週2回以上。
- 筋トレは効率化のために1種目でより多くの筋肉を鍛える。
- 有酸素運動は1週間にトータル150分以上行う。
コンカレントトレーニング・筋トレ編
アームスタンド・ロウイング(左右各15回×2〜3セット)

ターゲット:肩(三角筋)、胸(大胸筋)、背中(僧帽筋、広背筋)
- 両手を肩の真下についてうつ伏せになり、腕立て伏せの基本姿勢を作る。左手で床に置いた2Lのペットボトルを持つ。
- 両足は腰幅で開いて爪先を立てる。左肘を天井へ突き刺すようにボトルを左脇まで引き上げ、戻す。体幹を捻ったり、ブレたりしない。
バランス・レッグサークル(左右各15回×2〜3セット)

ターゲット:お尻(大臀筋)、太腿(大腿四頭筋、ハムストリングス)、肩(三角筋)
- 右手に2Lのペットボトルを持ち、右肩の真下に下げる。左脚を後ろに伸ばして片脚立ちとなり、右膝を軽く曲げて上体を前傾させる。
- 頭から左踵までを一直線にしてバランスを取る。左腕は肩の真下に下げる。
- 上体を起こしながら、真横のハードルを越えるように左膝を曲げながら後方から前方へ回す。同時に右腕を伸ばしたまま、ボトルを右肩と同じ高さまで引き上げるサイドレイズを行い、ボトルを元に戻す。
ワイドプッシュアップ(10回×2〜3セット)

ターゲット:胸(大胸筋)、肩(三角筋)、背中(広背筋)
- 両手を床についてうつ伏せになる。両手を肩幅よりもできるだけ開き、両足も大きく開いて爪先を立てる。
- 頭から踵まで一枚の板のように保つ。肘を曲げて胸を床にできるだけ近づけたら、両手で床を強く押して元の姿勢に戻る。お腹を落としたり、背中を丸めたりしないこと。
ヒップリフト&フライ(左右各15回×2〜3セット)

ターゲット:お尻(大臀筋)、太腿(ハムストリングス)、胸(大胸筋)
- 床で仰向けになり、両膝を腰幅で曲げて立てる。両手に2Lのペットボトルを持ち、両腕を肩のラインで左右へ伸ばす。左足首を右膝にかける。
- 腕を伸ばしたまま、弧を描くようにボトルを肩の真上まで上げながら、同時にお尻を持ち上げ、右膝から右肩までを一直線にする(体幹を捻らない)。お尻とボトルを同時に元のポジションに戻す。
ブルガリアン&バックスロー(左右各15回×2〜3セット)

ターゲット:お尻(大臀筋)、太腿(大腿四頭筋、ハムストリングス)、背中(広背筋)、肩(三角筋)
- 椅子から半歩離れて立ち、左足の甲を座面に乗せる。両手で2Lのペットボトルを横に持ち、右膝を爪先より前に出ない範囲で曲げ、前傾姿勢になる。
- ボトルを左股関節前で構える。右膝と右股関節を伸ばしながら立ち上がり、ボトルを後ろに放り投げるように右肩まで引き上げたら、元に戻る。
コンカレントトレーニング・有酸素運動編
ウォーキング(1週間に合計150分以上)
散歩や通勤時の歩行よりも足を速め、キビキビとウォーキングを行う。
- 胸を引き上げて頭を高く保ち、腰も高く保ってできるだけ大股で歩く。
- 肘を後ろに引くことを意識しながら腕を大きく振り、胸を開いて背すじを伸ばし、息が上がらない程度でラクに呼吸を続けながら行う。