
クロモジ
菓子楊枝のことを、そのまま素材の名前でクロモジと呼んだりもしますが、元々は歯ブラシとして使われていたらしい。抗菌、抗ウィルス作用があるために、コロナ禍にも注目されました。
なので、口に入れて悪いものではまったくなく、実はとても美味しい植物です。ウッディさ、柑橘香もあって、フローラルなイメージというよりは爽やかでスパイシー。
枝は皮を剥いで、その面積が広いほど香りが立ちます。いい香りだからと、ただ枝を串として使っても香らない。知人のシェフは海老をクロモジの枝に刺して、「一緒にガブっと噛んでクロモジを感じてください」と言って料理を提供するそうです。
春の新芽は食べられるくらい柔らかく、爽やかな酸味が広がります。ベビーリーフのようにサラダで食べても、天ぷらでも素揚げでも美味しい。花もとてもいい香りですし、実もめちゃくちゃ美味しい、素晴らしい植物なんです。
来年の新芽を採りすぎてしまうと生育に影響が出るので、主に冬の落葉した時期に剪定した枝から収穫しています。冬は、根と地上部の間に層を作って、エネルギーを使っていない状態。きちんと剪定してあげると、春からしっかりと育ってくれます。
こんなふうに使ってみるのはどう?
●「食べる」
クロモジと生姜の炊き込みご飯
―材料―
・お米 300g(2合)
・クロモジ 15g 刻んでティーバッグに入れる
・鶏肉 60g
・塩 2g
・酒(炊く用)20g
・醬油(炊く用)5g
・水(炊く用)310g
仕上げ
・生姜 20g
・米油 20g
・醬油 10g
―作り方―
クロモジは、ご飯と一緒に炊き込めば出汁の代わりとして使えます。そのウッディな味わいはとても奥行きが深く、繊細で、非常に美味。山採りの食材は当然ながら無農薬なので、そのまま炊き込んでも心配いりません。梅干しとの相性が良く、梅茶漬けもお勧めと、友人のシェフから聞きました。また甘味のアクセントとしても活用でき、アイスクリームにしても美味しいです。
●「使う」
うがい薬
―材料―
・クロモジ100g
・水1リットル
抗菌、抗ウィルス作用があるので、うがい薬を作ってみました。高い温度では、さまざまな成分がしっかりと抽出されます。すなわち、雑味も出てくる。渋みや雑味も、濃くするほどに出てきます。お茶としてクリアな味わいを楽しみたいならば、水出しをお勧めします。最も強力に抽出できるのは、アルコール漬けと言われています。いわゆる、チンキですね。ハーブチンクチャーとも呼ばれ、薬のように使われています。
2月のハーブスタンドの様子
例年よりも、やや暖冬の富士北麓。それでも早朝や夜には厳しい寒さです。森の中の空気は冷たいがとても澄んでおり、寂しくも美しい世界が広がっています。