2月のハーブ_クロモジ|ワンモア・ハーブvol.4

「お茶やコーヒーのように探求すれば、まだまだ大きな可能性を秘めた植物はたくさんある」と、〈ハーブスタンド〉の平野優太さんは言います。自ら収穫し、テストを繰り返しながらハーブの可能性を伝える平野さんによる連載、第4回は日本の固有種と言われるクロモジについて。

取材・文/村岡俊也 撮影/ナタリー・カンタクーゾ 料理/阿部匠海(Stage)

クロモジ

菓子楊枝のことを、そのまま素材の名前でクロモジと呼んだりもしますが、元々は歯ブラシとして使われていたらしい。抗菌、抗ウィルス作用があるために、コロナ禍にも注目されました。

なので、口に入れて悪いものではまったくなく、実はとても美味しい植物です。ウッディさ、柑橘香もあって、フローラルなイメージというよりは爽やかでスパイシー。

枝は皮を剥いで、その面積が広いほど香りが立ちます。いい香りだからと、ただ枝を串として使っても香らない。知人のシェフは海老をクロモジの枝に刺して、「一緒にガブっと噛んでクロモジを感じてください」と言って料理を提供するそうです。

春の新芽は食べられるくらい柔らかく、爽やかな酸味が広がります。ベビーリーフのようにサラダで食べても、天ぷらでも素揚げでも美味しい。花もとてもいい香りですし、実もめちゃくちゃ美味しい、素晴らしい植物なんです。

来年の新芽を採りすぎてしまうと生育に影響が出るので、主に冬の落葉した時期に剪定した枝から収穫しています。冬は、根と地上部の間に層を作って、エネルギーを使っていない状態。きちんと剪定してあげると、春からしっかりと育ってくれます。

こんなふうに使ってみるのはどう?

●「食べる」
クロモジと生姜の炊き込みご飯

―材料―
・お米 300g(2合)
・クロモジ 15g 刻んでティーバッグに入れる
・鶏肉 60g
・塩 2g
・酒(炊く用)20g
・醬油(炊く用)5g
・水(炊く用)310g

仕上げ
・生姜 20g
・米油 20g
・醬油 10g

―作り方―

1.土鍋に米(2合)を用意する。炊飯器でも可。

2.酒20g、醬油5g、水310g合わせたものを土鍋に入れる。

3.塩2g、一口大に切った鶏肉、刻んでティーバッグに入れたクロモジも一緒に入れて炊く。強火にかけ、沸騰したら弱火にして10分。

4.炊いている間に、生姜を千切りにしておく。

5.炊き上がったら千切り生姜を入れ、仕上げ用の米油、醤油を回しかける。

6.しっかりと混ぜ合わせて、完成。

クロモジは、ご飯と一緒に炊き込めば出汁の代わりとして使えます。そのウッディな味わいはとても奥行きが深く、繊細で、非常に美味。山採りの食材は当然ながら無農薬なので、そのまま炊き込んでも心配いりません。梅干しとの相性が良く、梅茶漬けもお勧めと、友人のシェフから聞きました。また甘味のアクセントとしても活用でき、アイスクリームにしても美味しいです。

●「使う」
うがい薬

―材料―

・クロモジ100g
・水1リットル

1.水を沸かす。

2.クロモジを細かく切って入れる。細かいほど、成分は抽出しやすい。

3.しっかりと煮詰めていく。

4.色が濃くなったら完成。

抗菌、抗ウィルス作用があるので、うがい薬を作ってみました。高い温度では、さまざまな成分がしっかりと抽出されます。すなわち、雑味も出てくる。渋みや雑味も、濃くするほどに出てきます。お茶としてクリアな味わいを楽しみたいならば、水出しをお勧めします。最も強力に抽出できるのは、アルコール漬けと言われています。いわゆる、チンキですね。ハーブチンクチャーとも呼ばれ、薬のように使われています。

2月のハーブスタンドの様子

例年よりも、やや暖冬の富士北麓。それでも早朝や夜には厳しい寒さです。森の中の空気は冷たいがとても澄んでおり、寂しくも美しい世界が広がっています。

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