突然の禁酒はNG!名医が教える膵臓の養生訓5選。

寡黙で小さな膵臓は知らぬ間に人の生死を左右する。ストレスのない範囲で今からできることを!5つの対策であなたの膵臓を守っていこう。

取材・文/鈴木一朗 編集/堀越和幸

初出『Tarzan』No.893・2024年12月12日発売

膵臓のための養生訓
教えてくれた人

糸井隆夫(いとい・たかお)/東京医科大学消化器内科学分野主任教授。膵臓・胆道疾患センター長。胆膵疾患の診療ガイドラインの作成、膵がんの早期発見と集学的治療に携わる。著書に『膵臓の病気がわかる本』(講談社)他がある。

上坂克彦(うえさか・かつひこ)/静岡県立静岡がんセンター総長。日本外科学会代議員・指導医、膵癌診療ガイドライン改訂委員会委員などを歴任する。著書に『いちばんわかりやすい 図解 すい臓の病気』(成美堂出版)他がある。

1.週に2日、“休膵日”を設けるべし。

アルコールの解毒は肝臓が受け持つ。そのため、飲む量が増すと肝臓に負担がかかるのは納得できる。では、膵臓はどうなのだろう。

「膵臓にとってもアルコールはよくない。なぜなら、飲んでいる間、膵臓はずっと膵液を分泌するから。大きな負荷がかかって、やがて疲れてしまうんです」(糸井さん)

また、膵液が分泌され続けると、その粘稠性が上がってくる。するとそれを押し出すためには、より多くの力が必要になるし、分泌が滞れば、含まれる酵素によって膵臓自体が蝕まれることもある。

「週2回の禁酒。まず今の半分の量にする。最終的には1日20gのアルコールに留めたいですね」(糸井さん)

2.膵臓はストレスに弱い臓器と心得よ。

膵臓にとってストレスが一番の大敵かもしれない。それには自律神経が関係する。この神経には、活動を促す交感神経とリラックスに誘う副交感神経があるが、これがバランスよく働くことで、ヒトは健康を保っていけるわけなのだ。

「自律神経が乱れると、膵臓の機能に悪影響を及ぼします。膵臓がんや膵臓の炎症にも関わるので注意が必要です」(糸井さん)

この記事のタイトルで「突然の禁酒はNG」としたのも、大きなストレスがかかるから。先ほどのトピックで糸井先生が伝えた通り「まずは酒の量を半分に減らす」ことで、緩やかに禁酒を進めたい。

そして減らした分だけ、ココロを解放できる趣味をひとつ探そう。

3.煙草をやめる。

急な禁酒は避けるべきだが、煙草は絶対にやめたい。健康被害は計り知れないし、副流煙で周囲の非喫煙者にも悪影響を及ぼす。大切な人を危険にさらさないこと。

「煙草には約5300の化学物質が含まれています。それが気管から肺へ入り、血液で全身へと運ばれていく。喫煙者の膵臓がんの発生リスクは、非喫煙者の1.7〜1.8倍といわれる。1日の喫煙量、喫煙期間の長さにも相関して増えていきます」(上坂さん)

膵臓だけでなく、すべてを破壊する煙草だが、禁煙してからの期間が長いほど、リスクは減少するという報告が。今すぐやめよう。

4.高脂肪食を控え、和食中心の食生活へ。

油っこい食事は悪い。というのは常識。が、この話を聞くとゾッとするだろう。内臓脂肪は皮下脂肪より落としやすいという。確かにそうだが、膵臓では違うのだ。

「脂肪肝ならぬ脂肪膵ですね。専門的には高輝度膵と呼ばれます。こうなってしまうと、元の状態には戻れないのです」(糸井さん)

つまり、膵臓に付いた脂肪は二度と減らすことができないのだ。今、すでに脂肪が付いていたら、それを現状維持していくしかない。高脂肪食でなく和食を中心とした生活を行うことがいかに大切か。

「僕は外食が多いですけど、家ではシンプルに焼き魚と納豆、ごはんという感じで食べていますよ」(糸井さん)

5.軽度運動を習慣づける。

膵臓の機能が低下すると、インスリンの分泌量が少なくなる。そして、カラダもインスリンへの感受性が悪くなる(インスリン抵抗性)。すると、ますます血液の中に糖が残ってしまうようになる。

「酷くなると糖尿病ですが、その治療はまずカロリーを抑える。そして運動なんです」(上坂さん)

入る量を抑え、出る量を増やす。イン、アウトの両軸で攻めたい。

「運動したから膵臓が鍛えられるわけではない。ただ筋肉を使ったほうがインスリンに対する感受性が上がると考えられている。私も2時間ぐらい歩いていますよ」(上坂さん)

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