肝臓をいたわる4つの食事術|肝臓ケアの五つの噺
肝臓は、生きていくために最低限必要な基礎代謝量のうち21%を占めている。肝臓は代謝界随一のマルチプレーヤー。多芸な肝臓の5つの噺から、その多様な働きを学ぼう。今回は「肝臓をいたわるための食事術」について。
取材・文/井上健二 イラストレーション/ニシワキタダシ 取材協力/栗原 毅(栗原クリニック 東京・日本橋院長)
初出『Tarzan』No.806・2021年3月11日発売
目次
ご飯など糖質の摂取を10〜15%減らしてみる。
フォアグラ気味で弱った肝臓を元気にする第一歩は、摂りすぎている糖質を適度にセーブすること。
「脂肪肝を作る元は、脂肪よりも糖質。糖質が肝臓で中性脂肪に変わるのです。甘いお菓子を減らす、ご飯を小盛りにするなどの工夫で、糖質の摂取を10〜15%ほど減らせば、脂肪肝はリセットできる。極端な糖質制限やカロリー制限は、飢餓と勘違いしたカラダが肝臓へ脂肪を送り込み、低栄養性脂肪肝を起こすので控えてください」(肝臓専門医の栗原毅先生)
糖質のなかでも、お菓子、白米、食パンなど、食物繊維が少なくて吸収が早い食事は、血糖値を急激に上げ、肝臓に中性脂肪を溜める。食物繊維が多く、血糖値を上げにくい玄米、全粒粉パンのような糖質源を選ぶようにしたい。
緑茶カテキンで肝臓を守る。飲むだけではなく食べよう。
肝臓内では代謝が盛んであり、それだけ酸素の消費量も多い。酸素の一部は有害な活性酸素に変わり、肝細胞にダメージを与える。そこで愛飲したいのが、緑茶。緑茶に含まれる茶カテキンはポリフェノールの一種であり、抗酸化作用で肝臓をガードしてくれる。
茶カテキンには他にも御利益が。高濃度で茶カテキンを摂ると、脂肪肝の解消に近づく。肝臓で脂肪燃焼酵素を増やし、脂肪の代謝活性も上げるのだ。加えて茶カテキンは糖質の吸収を抑えるので、血糖値の急上昇が避けられる。
「茶カテキンの約60%は茶殻に残っています。急須でお茶を淹れて、茶殻は佃煮などで食べると、茶カテキンを100%享受できます」
肝臓を養うタンパク質を肉、魚、卵などから摂る。
糖質を減らした分、肝臓のために増やしたいのが、タンパク質。
肝臓の働きを示すものに、血液中のアルブミン値がある。アルブミンは肝臓が作るタンパク質で、栄養素や代謝物を運び、浸透圧を保つ。アルブミン値が低いのは、肝臓の機能が落ちているか、タンパク質が足りてないか。肝機能の数値が正常なのに、アルブミン値が低いなら、タンパク質が欠乏している恐れがある。
タンパク質は肝臓自体を作るし、肝臓と密接な関係がある筋肉の原料でもある。肉類、魚介類、卵、大豆・大豆製品、牛乳・乳製品という5大タンパク源を1日1回摂り、タンパク質をチャージ。アルブミン値は4.4g/dl以上が目標。5.0〜5.3g/dlが理想だ。
カカオ含有量70%以上の高カカオチョコを少しずつ。
茶カテキン以外に、活性酸素から肝臓を守るポリフェノールが意外に多いのが、チョコレート。カカオ含有量70%以上の高カカオチョコレートには、カカオポリフェノールが多く含まれる。低糖質なので、糖質過多の心配もない。ポリフェノールというと緑茶以外では赤ワインが有名だが、高カカオチョコのポリフェノール量は赤ワインの約15倍にものぼる。
「ポリフェノールは水に溶ける水溶性なので、摂り貯めできません。小分けされている高カカオチョコを1回5gほど、1日5回に分けて計25g食べると効果的です」
これまた意外なことに、高カカオチョコは食物繊維もリッチ。糖質の吸収を緩やかにして、脂肪肝を招く血糖値の急上昇も防げる。