湿原が黄金色に輝く、美しい秋の尾瀬へ。|10月の山・尾瀬

季節によって異なる表情を見せる日本の山。その時期だけに出会える風景や体験を求めて、写真家の根本絵梨子さんに毎月おすすめの山と、その歩き方を教えてもらいます。

interview, text: Yuriko Kobayashi photo: Eriko Nemoto

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今月の山 尾瀬おぜ|群馬県、福島県、新潟県、栃木県

標高/約1,400m(尾瀬ヶ原)

おすすめコース

1日目
鳩待峠(1時間)山の鼻小屋(1時間30分)龍宮小屋(30分)弥四郎小屋
歩行時間計:3時間

2日目
弥四郎小屋(1時間50分)白砂峠(40分)沼尻休憩所(1時間10分)長蔵小屋
歩行時間計:3時間40分

3日目
長蔵小屋(25分)尾瀬沼山荘(20分)三平峠(2時間)大清水
歩行時間計:2時間45分

色づく湿原を自由気ままに歩く、静かな紅葉狩り。

暑かった夏が過ぎて、ようやく涼しい風が吹き始めました。待ちに待った過ごしやすい季節ですが、山の秋はあっという間。どこの山へ紅葉を見に行こうか、毎年迷ってしまいます。

紅葉が美しい山はたくさんありますが、中でも私が好きなのが尾瀬です。燧ヶ岳や至仏山など、周辺の山の紅葉も綺麗なのですが、その麓に広がる湿原は秋になると一面黄金色に色づいて、湿原全体が輝いているよう。初めて秋の尾瀬を訪れたとき、その美しさに心奪われ、以来、秋になると一番に行きたい場所になりました。

尾瀬は群馬、福島、新潟、栃木の4県にまたがる広大なエリアで、登山口や登山道もたくさんあります。どこから入って、どんなふうに歩いて、どこから出るのか、その組み合わせ次第でいつも新鮮な風景に出会えるのが魅力です。山小屋も多いので、いろいろと泊まってみて、自分好みの小屋を見つける楽しみもあって、何度訪れても飽きるということがありません。

尾瀬の草紅葉が見られるのは、例年9月中旬から10月中旬ごろ。一年で最も美しい季節に歩くのだから、ゆっくり2泊の行程で尾瀬ヶ原と尾瀬沼を巡るコースをおすすめします。

登山口の鳩待峠から山の鼻小屋までは少しアップダウンのある山道。そこから先の尾瀬ヶ原は木道が整備された歩きやすい道です。どこまでも続く黄金色の湿原に感激しつつ、途中にある池塘(ちとう)を見ながらのんびり歩きます。池塘の中に育つ水草も綺麗に紅葉していて、あちこちに小さな秋を見つけられるはずです。

尾瀬ヶ原から少し山側に歩くと、ブナやカエデなど色とりどりの樹木の紅葉が見られるので、東電小屋方面や長沢新道方面へ寄り道するのもおすすめ。

1日目は尾瀬ヶ原の中、燧ヶ岳を望む弥四郎小屋に1泊。紅葉シーズンはハイカーで賑わう尾瀬ですが、夕方になると宿泊客だけになり、とても静か。翌朝早く起きて、朝霧に包まれた幻想的な湿原の中を散歩するのも好きな時間です。

2日目は尾瀬沼方面へ。森に囲まれた小さな湿原が何度か突如現れ、そのたびに感動するのがこのルートのいいところです。尾瀬沼に辿り着いたところも天国かと思うような景色で、休憩ポイントが多くてなかなか進みません(笑)。水辺の道は湿原主体の尾瀬ヶ原とはまた違った清々しい雰囲気で、夕暮れ時の風景も素敵です。尾瀬の中でも歴史が長く、クラシカルな佇まいの長蔵小屋は、ゆっくりと秋の夜を過ごすのにぴったりの場所。山小屋には珍しくお風呂もあるので、小屋でのんびりする時間もまた秋の尾瀬を歩く楽しみのひとつになっています。

忙しなく山に登っていた夏とは打って変わって、山に登ることもなく、ただ湿原を歩くだけの秋の尾瀬ハイク。こんなふうに季節ごとに違った楽しみ方ができるのは、はっきりとした四季がある日本の山ならではだなと、しみじみ思うのです。

さて、1年間お届けしてきたこの連載ですが、私が担当するのは今回で最後です。毎月、いろいろな山をご紹介してきましたが、同じ山でも季節が変わればまた違った風景に出会えるでしょう。私もまだまだ訪れたい山がたくさんあります。ぜひみなさんも、身近な山からマイペースに歩いてみてください。

朝晩の冷え込みと木道でのスリップに注意を。

気軽に日帰りハイキングを楽しめる尾瀬は、登山をしたことがない人でも無理なく歩けるが、草紅葉が見頃を迎える秋には、いくつか注意が必要になる。

10月に入ると最低気温が10℃を下回り、夜間には氷点下になることも。冷え込んだ翌朝は木道が凍結して滑りやすくなるので、滑りにくいトレッキングシューズを着用すること。

夕方になると気温がグッと下がるため、フリースやダウンなどの防寒着、手袋や帽子は必携。体温調節がしやすい重ね着を工夫することも大切になる。

秋は日没が早くなるため、山小屋への到着は遅くとも15時半に設定して、余裕のある計画を立てること。尾瀬はツキノワグマの生息地で、冬眠前の秋には行動が活発になることも。クマ避けの鈴やスプレーを携帯するなど、必ず対策をして入山すること。ビジターセンターなどで出没状況を確認するのもお忘れなく。

おすすめスポット情報

弥四郎小屋
尾瀬ヶ原の東端、見晴エリアの入り口に位置する山小屋。小屋を出ると目の前に至仏山、後ろには燧ヶ岳が見える絶好のロケーションが自慢。併設の喫茶室では挽きたての豆で淹れるコーヒーやスイーツが楽しめる。風呂あり。2026年の営業は10月17日まで。
027-221-4122
https://www.84658.jp/index.html

長蔵小屋
明治23年創業という尾瀬の中でも長い歴史を持つ山小屋。現在の本館は昭和9年に建てられたもので、丸太造りのクラシカルな佇まいが美しい。小屋の前には尾瀬沼が広がり、特に朝夕の風景は格別。風呂あり。2026年の営業は10月24日まで。
050-1725-7100
https://chozogoya.com/

東見屋まんじゅう店
群馬県で古くから親しまれる「味噌まんじゅう」(焼きまんじゅう)の老舗。代々受け継がれてきた米糀の酒種で作るモチモチした生地に秘伝の味噌だれを塗り、炭火で香ばしく焼き上げた味噌まんじゅうは、忘れられないおいしさ!
群馬県沼田市下之町875-7
0278-22-3470
https://toumiya.com/

肉の長門
沼田市にある地元民御用達の精肉店。豚の味噌漬けや激辛ホルモンなど、味付け肉がおいしく、中でも豚のハラミ肉をオリジナルのタレに漬け込んだ「ピリ辛ハラミ君」は絶品! 昔ながらのコロッケやメンチカツなどお惣菜もあるので、下山後の腹ごしらえにぴったり。
群馬県沼田市上原町1756-15
0278-22-4129
https://www.nikuno-nagato.co.jp/