注目は前頭前野!脳トレ第一人者が考える「アタマを鍛える」とは?
脳トレの第一人者・川島隆太さんは「脳は年齢とともに衰えていくと思われがち。でも適切なトレーニングによってアップデートできる」と語る。では「脳を鍛える」ってどういうこと?まずは考え方を紐解いていこう。
text: Taichi Abe, Hana Funaoka illustration: Bob Foundation edit: Taichi Abe
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教えてくれた人
川島隆太(かわしま・りゅうた)/脳科学カンパニー〈(株)NeU〉取締役CBSO(Chief Brain Science Officer)であり、医学博士。東北大学加齢医学研究所の教授も務める。2005年発売の《脳を鍛える大人のDSトレーニング》を監修し、26年7月には脳トレ第2弾として《Thinkie(シンキィ)》を発表。
とにかく鍛えるべきは、前頭葉にある前頭前野。
適切なトレーニングをすれば、目に見えてその太さやしなやかさがアップし、身体的なパフォーマンスが向上する筋肉に比べて、効果が見えづらい「脳」はどう鍛えればいいのか。
20年前に発売され話題となったゲームソフト《脳を鍛える大人のDSトレーニング》を監修し、その第2弾ともいえる《Thinkie》を発表した、〈NeU〉の取締役CBSOで医学博士の川島隆太さんにヒントを求めた。
「脳を鍛えることを目的にしたときに、注目するべきは大脳です。人間が物を考えるときに最も大事なパートですから。加齢に伴い、その大脳にどのような変化が起きるのかということについては、これまでにたくさんの研究結果があります。それを見ると、頭の前側に位置する前頭葉という部分の中にある、前頭前野の働きが加齢とともに機能低下することが分かりました。前頭前野の働きは、物を考えたり、学習をしたり、推理推測をしたり、予測や判断をしたり、社会生活を送るうえで非常に大切で、必要不可欠な能力を司るもの。それが20歳をピークに機能低下していくことが分かったのです。年齢を重ねるにつれて人間の経験は蓄積されるものですから、まずはこの機能低下を横這いにすることで、晩年に向けて豊かな人生が送れるのではないかと考えたのが《脳トレ》のスタートです。そこから“キープ”ではなく、どうやったら前頭前野の機能をアップデートすることができるか日々考え続けています」
鍛えるべきは「前頭前野」。

おでこの後ろに位置するのが前頭葉。その中でも、脳内で最も高い程度の働きをするのが前頭前野。川島さんの脳トレーニングでは、この部分に効くアプローチをしていく。
処理速度のアップとワーキングメモリの拡張を狙うべし。
「脳力」をアップさせるには前頭前野へのアプローチが有効だということは分かった。それでは具体的にどのようなトレーニングを重ねればいいだろうか。
「集中力、閃き、思考力、というように向上させたい力はたくさんあるかと思います。従来の心理学では脳の働きに応じて違ったトレーニング方法を提案してきましたが、『ネイチャー』誌などにそれらはおおよそ効果がないことが発表されているのです。それぞれの目的に共通する根っこの部分に私たちはアプローチしました。大きく分けて2つのトレーニングを提唱しています。1つ目は“頭の回転速度を上げること”、2つ目は“情報処理をするためのメモリ領域を大きくすること”。コンピューターと一緒です。処理速度が速くてRAMが大きい。このスペックの高いコンピューターの状態を目指すのが、私たちの考える脳トレの方法になります。情報処理速度を上げて、“ワーキングメモリ”と呼ばれるメモリ領域が大きくなると、その結果として集中力や記憶力が上がったり、創造力が高まることも分かっています。基本的には年齢や性別によってトレーニング方法を変える必要はありません。大事なことは、全力で取り組むということです。自分自身の最大限度を発揮してトレーニングに取り組めば、その前後で差が出ます。その進歩を日々続けることで、脳のパフォーマンスは格段に向上していくのです」
処理速度&容量をアップする。

脳の情報処理速度を上げる。そして、ワーキングメモリを拡張する。この2つを狙いとしたトレーニング方法によって、加齢とともに低下していく脳の機能を向上させる。
トレーニングはいつでも全力。

筋力トレーニングでは、負荷が小さなものからスタートして高い内容へと移行していくが、脳の場合はできる限りオールアウトするような高負荷の内容を短時間で行う姿勢で。
デジタル機器への依存は、脳の成長には悪影響。
いわゆる脳のビルドアップのためのトレーニングと、脳の機能低下を食い止めるためのディフェンシブなトレーニング、そこに加えて機能向上を支えるための生活習慣、この3種類を合わせた具体的な方法を下のトレーニング集からご紹介。
積極的に取り組みたいハウツーを提案する一方で、脳トレの見地から“積極的に避けたい”生活習慣があるという。
「デジタル機器の使用に関して、私はすごく危惧しています。パソコン、スマホ、タブレット端末、さらにはテレビなど、スクリーンを眺める時間を過ごすと、前頭前野が休止状態になることが分かっています。ツールとして短時間で使用したり、仕事の合間の休息時間に使うのはいいと思います。ただ、一日中それらのデバイスに時間を使っていると、常に前頭前野がスリープした状態になるわけです。デジタル機器は脳のビルドアップが阻害される要因となる可能性があります。大人もなるべくスマホなどを触る時間を減らしてもらいたいですが、子供に関しては本当に積極的に脱デジタルの方向性を目指してもらいたいです」
デジタル機器を遠ざける努力を!

ほとんどの人にとって生活必需品ともいえるデジタル機器の数々は、脳のビルドアップにおいてはネガティブ要素。その使い方や付き合い方を考え直してみることは大事だ。
では、具体的にどんなトレーニングや生活習慣を取り入れればいいのか。以下の記事では「朝」「日中」「夜」という時間帯に分け、トレーニング方法と生活習慣を提案する。
ちょっとした心がけと集中的なトレーニングで脳の機能はアップできる。より充実した豊かな時間を過ごすために、ぜひお試しを!