集中力は4種類ある。脳神経科学者に学ぶ、アタマの操り方。
集中力には4つのモードがある。それぞれを使い分け、行き来することで、思考を深めたり、閃きを生み出したりすることができる。脳神経科学者・青砥瑞人さんに、それらを使いこなす秘訣を教えてもらった。
text: Kano Ishitobi illustration: IROI KIKUCHI
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教えてくれた人
青砥瑞人(あおと・みずと)/脳神経科学者。(株)DAncing Einstein代表。高校中退後、米国のUCLAで神経科学を学び飛び級で卒業。脳神経学の知見を背景に、脳・教育・ITに関するプロジェクトを多数手掛ける。著書に『4 Focus 脳が冴えわたる4つの集中』(KADOKAWA)などがある。
集中力とは、ただ没頭するだけじゃない。
年齢を重ねれば集中力が低下するのは仕方がない。一度失われた集中力は取り戻せない。これらはナンセンスな思い込み。なぜなら脳は何歳になっても成長するポテンシャルを秘めているからだ。
では、改めて「集中」という概念について考えてみたい。通常、「集中している状態」といえば、仕事の資料に目を通したり、上司の言葉に耳を傾けたり、営業先の要望をメモに書き留めたりするイメージ。とにかく、外部からの情報に注力している状態と捉えがち。
ところが、脳神経科学者の青砥瑞人さんによれば、「多くの人は集中力というキーワードに触れたとき、ある固定の概念に囚われてしまっています」とのこと。即ち、前述したような目の前の課題に意識を向け、生産性を高めること。集中=これ一択。
「脳神経科学から見ると、集中している状態はもっと柔軟で幅広く、一点に集中している状態だけを指すわけではありません」(脳神経科学者・青砥瑞人さん)
集中力には4つのモードがあるという。ひとつは、一般的にイメージされる新しい情報を外部から取り込んでいる状態。これを外に狭く開かれた「入門集中」と呼ぶ。
入門集中(外に、狭く)

外からの情報を取り入れる、「外に、狭く」の入門集中。ほとんどの現代人は終日この集中モードにどっぷり浸かっている。オンでは資料チェック、ネット会議、上司からの指示、部下からの報告、オフではスマホやタブレットで動画鑑賞。必要なモードだが問題は偏りすぎにある。
2つ目は取り入れた情報を記憶として定着させたり、ひとつの課題について思考する、内に狭く開かれた「記銘集中」。
記銘集中(内に、狭く)

「内に、狭く」の記銘集中は外から入ってきた情報を記憶として刻む、自分との対話。新たに仕入れた情報を覚えてもう一度それを引き出すという作業中、脳は入門集中→記銘集中のふたつのモードを行き来している。物事を学び、自分の血肉とするために欠かせないモードだ。
3つ目は物事を全体視して直感的に意思決定をする、外に広く開かれた「俯瞰集中」。
俯瞰集中(外に、広く)

外の情報に広く意識を向けながらわずかな変化に素早く反応する「外に、広く」の俯瞰集中。アスリートが広い視野を持って即座に反応するモードがまさにこれ。前提となるのは知識や記憶や日々の鍛錬で、理性で考えるより早くカラダが勝手に反応するようになる。
4つ目は意識を離れて脳が自由気ままに考えを巡らせている、内に広く開かれた「自在集中」。
自在集中(内に、広く)

自在集中はぼーっとしているようにしか見えないが「内に、広く」思考を巡らせている状態。入門集中とは真逆の様相だが、閃きがこのモードから生まれることも多い。散歩、シャワー、皿洗い、瞑想、気分が変わる環境に身を置き、あまり難しくないことをするのがポイント。
これら4つの集中力のモードを使いこなせば何歳からでも集中力を育むことができ、最大限のパフォーマンスを発揮できるという。
「集中力をフル活用」と思いきや、使っているのはほんの一部だけだった?
「たとえば僕が講演をしているとします。前のめりで真面目に聞いていそうな人ほど、僕の言っている内容が頭に残っていない(笑)。これは外に狭い入門集中を使いすぎているからです。外からの情報を流し込むだけでは情報は定着しません。相手の情報を取り込みながら、自分の中で整理する記銘集中を取り入れている人からは良い問いが生まれますし、深いディスカッションができるんです」
まずは入門集中と記銘集中の2つのモードで情報をやり取りさせる。今言われていることの意味を解釈し、自分の中に落とし込み、考えを巡らせる。外に狭くと内に狭くを行ったり来たりさせる脳のモードに持っていくことが第一歩。
それには取り入れた情報が自分にとってどんな意味があるのか、と内省する機会を設けることが必要。
続いての俯瞰集中はやや上級レベル。これは「無目的な好奇心」の状態に近い。
「太古の昔、一本の果樹があったとします。たくさんの木の実が取れるからその樹の元に通う。これは目的行動です。でも嵐や台風が来て木の実が全滅したらそれでおしまいです。一方、樹の元には向かわず、いつも“何かないかな”とフラフラしている人は、もしかしたら別の食糧を見つけるかもしれません。これが外に広く開かれた俯瞰集中の状態です」
無目的な好奇心で外側の世界に広く目を向ける。これが、新たな価値観や目的を生み出す、今のところAIにはできない脳の働きだ。
4つ目の自在集中はさらにハードルが高い。自分の内なる世界に考えを巡らせながらぼーっとしている状態で、ランニング中や入浴中にハッと何かが閃く瞬間はこのモードに突入しているときだ。
「閃きの前提はそのことに対してどれだけ揉み込んでいるかということ。脳の中に課題の足跡や記憶を持った人が、異なる環境に身を置いたとき、アイデアが浮かぶ。準備があってこその閃きです」
もうお分かりだろう。四六時中スマホに向き合っていては入門集中以外の集中力を鍛えることができない。情報を記憶に留め、揉み、内なる世界で思考を巡らせよう。
4つの集中力モード、賢く使いわける方法。
では、4つの集中モードを実際の仕事でどのように使いこなしていくか、シミュレーションをしてみよう。

まず著名文化人などのオンライン講座を受ける。これは言うまでもなく「入門集中」。あなたはメモを取りながら頭に引っかかったキーワードを書き出し、今取り掛かっている仕事に関連があるかどうか検討する。これが「記銘集中」。
続いていくつかのキーワードを社内に持ち帰り、付箋に書き出して全体を眺めてみる。文字通りの「俯瞰集中」。煮詰まったときにフロアを移動し、窓の外をぼーっと眺めてみる。この「自在集中」のとき、突如何かが閃くかもしれない。そしてまた情報を仕入れに入門集中へ!
