北アルプス最深部へ、夏の終わりの大冒険。|9月の山・雲ノ平

季節によって異なる表情を見せる日本の山。その時期だけに出会える風景や体験を求めて、写真家の根本絵梨子さんに毎月おすすめの山と、その歩き方を教えてもらいます。

interview, text: Yuriko Kobayashi photo: Eriko Nemoto

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今月の山 雲ノ平
くものだいら
| 富山県、岐阜県

標高/約2,550m

おすすめコース

1日目
折立(3時間30分)五光岩ベンチ(1時間30分)太郎平小屋
歩行時間計:5時間

2日目
太郎平小屋(2時間15分)薬師沢小屋(2時間40分)アラスカ庭園(45分)雲ノ平山荘
歩行時間計:5時間40分

3日目
雲ノ平山荘(1時間30分)祖父岳(2時間)鷲羽岳(1時間)三俣山荘(1時間)三俣蓮華岳(1時間40分)双六小屋

歩行時間計:7時間10分

4日目
双六小屋(1時間40分)鏡平山荘(3時間30分)わさび平小屋(1時間10分)新穂高温泉

歩行時間計:6時間20分

黒部源流を遡って歩く、憧れの大縦走。

本格的に登山を始めてから、いつかは訪れてみたいと憧れていた場所があります。北アルプスの中でも最も深い場所にある雲ノ平。名前からしてロマンチックですが、本当に雲の中にあるような神秘的な場所で、周囲は険しい山々に囲まれつつも、そこだけぽっかりと平地になっていて、穏やかで、のびのびとした時間が流れています。登山者の間では「北アルプス最後の秘境」と言われることもありますが、「天国」という表現のほうがしっくりくるような気がします。

とはいえ、雲ノ平へ行くには富山県側、岐阜県側、どちらの登山口からも2日はかかります。どちらのルートも長く、厳しい道のりで、しっかりと登山経験を積まなくては辿り着けません。だからこそ、「いつかは……」と多くの人が憧れるのだと思います。

もうひとつ強い憧れを持ったのは、「黒部源流」という響き。黒部ダムでお馴染みの黒部川ですが、その源流は雲ノ平周辺にある鷲羽岳。川の流れを遡って源流域を歩いて旅するという行為が、なんだか冒険的でワクワクしたのかもしれません。それもあって、初めての雲ノ平山行は川を遡って歩く富山側からのアプローチにしたのでした。

登山口のある折立から歩き、太郎平で1泊。翌日、黒部川のほとりにある薬師沢小屋に着いた時には、その流れの美しさに感激しました。そこから厳しい急坂を登り切ると、ぽっかりと開けた雲ノ平が現れます。平原の中に立つ雲ノ平山荘はなんともいえず美しい佇まいで、そのしつらえや料理、そこで働く人々の美学に、強く胸打たれたことを覚えています。

旅の後半、雲ノ平から先は、鷲羽岳、三俣蓮華岳、双六岳と、北アルプスの山々を見ながら歩くダイナミックな絶景ルート。槍ヶ岳など遠く穂高方面の山々も見えて、広大な北アルプスの地図を自分の足で繋いでいくような感覚に、「ああ、こんなところを歩けるようになったのだ」と感慨深い気持ちになりました。

3泊4日の長い縦走ですが、道中には魅力的な山小屋がたくさんあって、もっと休みが取れるなら、時間をかけてゆっくり歩いてみたいと思わせてくれます。登山というより「山の旅」。そんな気持ちを噛み締めて歩ける、長くて厳しい、そして同じくらい美しいロングルートです。

国内屈指の絶景ロングルートゆえ、余裕を持った計画で。

富山県の折立から岐阜県の新穂高温泉へ抜ける縦走ルートは、北アルプス最深部を歩く健脚向けのコース。1日の行動時間が長いので、日没時間が早くなる9月は特に余裕を持った計画が重要になる。自分や同行者の体力や歩行ペースを考え、毎日遅くとも15時までには山小屋に到着できるようにすること。

さまざまなルートどりができるコースゆえ、いろいろな山に登頂したくなるが、欲張らず、安全に歩ける計画を立てること。9月の北アルプス稜線では天候変化が激しく、特に朝夕は気温が大きく下がることもある。しっかりした防寒対策をし、悪天候時には早めに行動を切り上げるなど、臨機応変な対応が必須になる。

今回は3泊4日の行程を紹介するが、悪天候や体調不良を考えて、必ず1日は予備日を取っておくこと。9月のシルバーウィーク周辺は山小屋が混み合い、完全予約制になる場合も。週末を挟んで出かける場合は、事前に必ず確認を。

どの登山口、どのルートを選んでも、長く厳しい道のりであることは変わりない。体力や経験値に不安がある場合は、折立〜雲ノ平の往復など、短い行程で計画することをおすすめする。

おすすめスポット情報

三俣山荘
鷲羽岳と三俣蓮華岳の鞍部に位置する山小屋。小屋の前からは雄大な鷲羽岳が見え、素晴らしいロケーションが魅力。本格的なサイフォンコーヒーや手作りのランチなど、立ち寄りでも楽しめるメニューがあるので、宿泊しない人でも、ぜひ一服を。
050-8882-5833
https://mitsumatasanso.com/mitsumata

鏡平山荘
旅の後半に立ち寄りたいのがこちら。小屋の前にある鏡池には晴れた日には槍ヶ岳や穂高連峰が映り込み、絶好のフォトスポット。小屋で焙煎した豆を使ったコーヒーが絶品で、暑い日にはアイスを乗せたコーヒーフロートが最高!
0577-34-6268
https://www.sugorokugoya.com/kagami/

奥飛騨温泉 ひらゆの森
新穂高温泉に下山したらバスで平湯温泉に移動し、そこから新宿や大阪方面への高速バスに乗ると帰路がスムーズ。さまざまな温泉宿があるが、男女合わせて16もの露天風呂がある〈ひらゆの森〉はまさに温泉アミューズメント! 立ち寄り湯も可。
岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯763-1
0578-89-3338
https://www.hirayunomori.co.jp/