「クリスティアーノ・ロナウドに感謝を述べた」笑いとウェルビーイング。ロングコートダディ・兎(前編)
笑うことは心身の健康に良いと言われています。では、日々誰かを笑わせているお笑い芸人は、自身も健やかな状態になっているのでしょうか。芸のために筋肉を鍛えることもあれば、不摂生が爆笑を生むこともある。ウェルビーイングの形は人それぞれです。本連載では放送作家の白武ときおさんが聞き手となり、芸人一人ひとりが考える「笑いとウェルビーイング」を掘り下げます。第11回前編のゲストは『キングオブコント2025』で第18代王者に輝いたロングコートダディの兎さんです。
interview: Tokio Shiratake edit,text: Neo Iida photo: Wataru Kitao
Profile
兎(うさぎ)/1988年、岡山県生まれ。2009年、NSC大阪校31期生の堂前透とロングコートダディを結成。2014年『THE MANZAI』(フジテレビ)の認定漫才師50組に選出。2016年『新しい波24』(同)の波24メンバーにも選ばれた。『キングオブコント』では2020年、2022年、2024年と決勝に進出し、2025年に優勝を果たす。『M-1グランプリ』では2021年と2022年にファイナリストに。『ラヴィット!』(TBS・水隔週レギュラー)に出演中。
バタバタしていて、サッカー部を4日で辞めた。
白武ときお(以下白武)
今日は何時起きですか?
兎
9時起きですね。ワールドカップを観てました。全試合観るつもりだったんですけど、それはちょっとさすがに厳しかったですね。でも、観てない試合もDAZNの15分くらいのロングハイライトを絶対チェックしてます。
白武
早朝の試合が多いから、日本人にとっては辛い時間帯ですよね。
兎
そうですね。だから観られる時に観てます。今日も4時の試合を後追いで観ました。ネタバレを防ぐために、あんまりSNSを開かないようにして。
白武
学生時代とか、サッカーをやってた時期はあるんですか?
兎
中学の時は遊びでやるくらいで、高校ではサッカー部に入ったんですけど4日で辞めました。だからやってたとは言ってないです。
白武
辞めたのにはどういう理由が?
兎
なんかバタバタしてましたね。
白武
バタバタ?
兎
はい。入学してすぐサッカー部に入ったんですけど、高校からサッカー部に入った新人が3人だけだったんですよ。他の人たちはなんか入学前から部活があったらしくて。俺らだけそれを知らなくて、ほんまに蚊帳の外って感じで。実力的にもそうだし、居心地が悪かったんです。「まあでも仕方ない、頑張ろう」と思った矢先に球技大会があったんですよ。大会用のテントを野球部とサッカー部が設営する決まりだったんですけど、連絡が来てなくて、僕だけその設営に行かなかったんです。で、同期のやつから「みんな相当怒ってたから、今日の部活ヤバいで」って言われて。これはヤバいなと思ってそこから行けず。それが5日目でした。

白武
今となってはやっておけばよかったなって思います?
兎
やっておけばよかったですね。怒られておけばよかった。
白武
ワールドカップはどうですか?
兎
いやー、楽しいです。素晴らしいですね。もちろん日本を応援してたんですけど、負けちゃいまして。今応援してるのはアルゼンチンですかね。やっぱりメッシ世代なんで、活躍してほしいなっていうことで。今日がね、ちょうどポルトガル対スイスやったので……あ、でも結果は言わないほうがいいか。
白武
記事が出るのは少し先なんで、大丈夫ですよ。
兎
よかった。あの、ポルトガルが負けちゃいまして。クリスティアーノ・ロナウドがね、もうワールドカップ最後だったんで。さすがに「ありがとうございました」という感謝を述べました。僕は20歳くらいからワールドカップを観始めて、今38歳なんですけど、僕が一番サッカーを観てた時期を彩ってくれた選手の一人なんで。楽しませてもらいましたね。
白武
かなりサッカー熱が高いんですね。
兎
まあ、言ってるだけなところありますよ。サッカーサッカー言ってるんですけど、そんなに選手名も知らないし。ロナウドとかは知ってるけど、新しい選手は全然知らなくて。本当にもう使える言葉が少ないんですよ。見てても「わー」としか言えない。「すごいな今の」みたいな。だから選手名はあんまり言わないです。
白武
なるほど。
兎
はい、サッカーサッカーって言ってます。
白武
実際にプレーすることは?
兎
いや、ないですね。もう身体が追いつかないというか、しんどいですね。

正直、仕事より釣りがすごく大事。
白武
最近の仕事の忙しさはいかがですか?
兎
仕事的にはそんなに忙しくないんですよ。僕らはだいぶゆるく入れてるんです、スケジュールを。週2日でオフを取ってて、だからけっこう休みがある感じです。ただですね、この6月7月が僕の芸人人生で一番忙しいんじゃないかっていうくらい色々入っちゃって。それでバタバタしてます。
白武
どういった仕事が入ってるんでしょう?
兎
6月の中盤ぐらいから『ボボボーボ・ボーボボ』の舞台(6月12日から21日まで上演された『超ハジケステージ☆ボボボーボ・ボーボボ 〜因縁!鼻毛!決戦!〜』)が入りまして。1〜2ヶ月稽古して、本番が10日間あって、それしかやらない時期があって。同時にワールドカップが始まったんですよ。僕は絶対観なきゃいけないんで、全試合観ようと思ったら忙しくて。さらにですね、テレビ朝日の『見取り図じゃん』で野外フェスをやることが決まって「もう箱押さえちゃいました、そのうちの1時間を全てプロデュースしてください」と。もう「はい」と言わざるを得ない状況で、書いたこともないネタを5本くらい書いて、踊ったり特技をやったりして。で、さらに7月11日から1週間釣り旅行があって。長崎県から飛行機で対馬まで行ってずっと釣りをするっていう。
白武
過密ですね。釣りも仕事ですか?
兎
いや、プライベートです。でもそれがマジで大変で。
白武
釣り旅行が。
兎
はい。今回はガチでクエとかヒラマサとかイシダイを狙おうということで、これもいる、あれもいると道具を準備するのがほんまに大変で。6人だけで島に寝泊まりして、海の中にある岩場、沖磯って言われるんですけど、そこに船で出してもらうんです。それで1日中クエを狙うんで、命も危ないんですよ。だから安全面をちゃんと確保しなくちゃで、準備もヤバい。前もって1週間に2回ぐらいのペースで夜中の24時からリモート打ち合わせして。飲みながらやるし、全員芸人なんでお笑いの話もしますけど、結局釣りの話になりますね。

白武
そもそもどうやって始まったんですか?その釣り旅行は。
兎
大阪にいた頃、仲良かった先輩と2人で始めたのが最初で、毎日舞台終わったら22時からバイクで2人で海行って、10日間連続で行ったりしてたんですよ。でも1匹も釣れなくて。釣れないから「うわぁ」って帰って次の日色々調べたりして。難波の劇場の近くの釣り具屋さんに毎日行って、先輩に「こんな情報見つけました」とか「これやったらよかったかもしれないですね」とかわかったことを共有して、ちゃんと用意して海に行ったら、同じ場所なのに前と全然違う風景なんですよ。やっぱ海って1日1日で変わるんで。それがおもろすぎてめっちゃ行ってたんです。で、同じタイミングで釣り行こうみたいな後輩のグループがあって、そいつらと1年後にガッチャンコして、今のグループができた感じです。釣り旅行はもう6回目なんですよ。
白武
長い歴史があるんですね。
兎
正直僕はもう、仕事よりって言ったらあれですけど、釣りがすごく大事なんです。
白武
今は釣りなんですね。
兎
今というか、僕は趣味に生きるために働いてるんで。
白武
それは芸人になった最初の頃からそういうスタンスなんですか?
兎
そうですね。芸人のなかで僕が一番お笑いに関心ないんじゃないですかね。一番じゃないかもしれないですけど、お笑いに興味がないピラミッドがあるとしたら、だいぶトップクラスに来ると思います。まあ人それぞれですね。お笑いを真摯に頑張ってる人ももちろん素敵だと思いますし。

白武
その釣り仲間は兎さんが集めた仲間ですか?
兎
そうです。
白武
それが今はもうリーダーに。釣りの上手さレベルは何番目ぐらいなんですか?
兎
6人いて、あ、最近7人で行くこともあるんですけど、どうだろう。そんな比べられないですね。みんな一緒くらいなんで、そんな比べられるもんでもないかなっていう。ただ僕が一番いい道具は使ってる。そこは自信ありますね、はい。
白武
すごいですね。釣りと同じくらいの趣味って他にもあったりするんですか?
兎
釣りが一番ですけど、いろいろあって、まず魚が好きなんです。実際に飼っていて今家にアクアリウムが3つありますし。あとゴルフも始めて、全然下手なんですけど楽しいですね。あとバイクと、ポケモンカードとかですね。
白武
趣味が多いんですね。
兎
なんかね、楽しいですね。
東京は、自分で動かないと置いていかれる街。
白武
今、東京に来て3年くらいですか?
兎
はい、4年目になりました。丸3年経ちましたね。
白武
この3年の東京生活はどうでした?東京の冷たさを感じたりとかありました?
兎
冷たさとかは別に感じないですよ。でもなんだろう、自分で動かなきゃ置いていかれる街だなと思いましたね。この街のポテンシャルは半端ないです。やっぱり日本一なんで。自分が動こうと思えば何でもできるっていうのは実感しましたけど、動かない限りは置いてかれるぞって感じですね。周りが動いてるんで、東京って。
白武
自分で掴み取りに行かないといけない。
兎
うん、実際に置いてかれてますね。地名とかも覚えられないし。やっぱ動く人って覚えるもんな、どこに何があってとか。
白武
上京組でうまく東京に順応してる人はいらっしゃいます?
兎
僕と同じタイミングで来た芸人だと、まず紅しょうが。すごい楽しんでるし、いろんな交友関係を広げてますね。あとニッポンの社長のケツが意外と楽しんでそうだと思いましたね。
白武
兎さんは普段どんなことにお金をよく使いますか?
兎
タクシーですね。1回覚えちゃうとすぐ使っちゃいますね。電車で間に合うのに使っちゃう。あとは、太ってる人あるあるなんですけど、何かと理由をつけて自分に甘くしちゃう。ワールドカップで日本が勝ったからタクシー使っていいとか、食べてもいいとか言っちゃいますよね。

白武
ギャンブルとか食費とか、金に糸目をつけないものってあったりします?
兎
糸目はつけてないですね、何にも。ご飯も成城石井で買っちゃうし。ちょっと高いんですけど、近いんで。
白武
昔から貯金は意識されてました?あれば使っちゃうタイプですか?
兎
あんまり意識しないですね。でも服とか、みんながお金をかけるようなことにあんまり興味なかったりするんで、そのぶん貯金してたわけじゃないけど貯まっていったところはあります。
白武
つい見ちゃう動画とかコンテンツってありますか?
兎
今はもうずーっと生き物系見てますね。釣りとか家で飼うやつとか。あとサバイバル系。でもそこまでYouTubeを見ることもなくて。そもそもスマホを見ないです。
白武
スマホ依存症ではないんですね。
兎
まったく。機械弱いんで、チャッピーみたいなのも使ったことないですし。AI的なのもよくわかってないです。
釣りが一番楽しいから、そのために仕事を頑張る。

白武
兎さんが考える「この人生き生きしてるな」という人はいますか?先輩でも後輩でも。
兎
僕から見たら全員生き生きしてる気がします。例えばきょん(コットン)とか亜生(ミキ)とかは楽しいですね。人間的にも明るくて、スタンスがすごく好きですね。みんなも好きでしょう。でも性格も違うんで、ああなりたいとかは別に望んではないかもしれないな。
白武
それでいうと兎さんも釣りだったり熱中してワールドカップを観たり、相当楽しそうですよね。仕事ばっかりではなく、ちゃんとプライベートも充実していて。
兎
そうですね、仕事を一番に置いてないんで。釣り旅行は1年に1回くらいのペースで行っていて、後輩の分も僕が出しますし、そのために稼ごうっていうモチベーションなんです。働いてしっかりお金を貯めて行こうと。だから僕、半年前からオフを取るんですよ。みんなにもここで取っておいてってお願いして。
白武
すごいですね。
兎
半年間はそこに向けて仕事頑張ってる感じですね。で、行って帰って楽しかった、じゃあまた先のオフ取ろうかみたいな。釣りが一番楽しいです。




