気楽に真剣に、身体のことを考える|極私的なカラダの名著 vol.6 植物療法士 村田美沙
もっとも身近でありながら、知り尽くせない自分のカラダ。ユニークな活動をする人々が夢中で読み、カラダの解像度を高めるヒントにした本とは? 連載の第6回で話を聞いたのは、ボタニカルブランド〈Verseau〉を主宰する植物療法士の村田美沙さん。身体のリズムを整えてくれるオールタイムベストと、ポジティブに楽しく健康と向き合える1冊について語ってもらいました。
interview, text: Momoka Oba

Profile
村田美沙(むらた・みさ)/植物療法をベースとした暮らしを提案するライフスタイルブランド〈Verseau〉を主宰。現在は京都を拠点にアーティストとしても活動中。自然素材を使ったさまざまな作品を制作している。@muratamisa_ @verseau_herb
「季節ごとに旬の食べ物を食べたり、自分に必要なハーブを取り入れたり。そういう暮らしがもっと身近になったらいいなって思うんです」。そう話すのは、自身の体調不良をきっかけに植物療法士の道へ進んだ村田美沙さん。
ハーブがそばにある生活を知りたいとヨーロッパへ渡り、帰国後にはオリジナルのハーブティーなどを展開する〈Verseau〉を立ち上げた。数年前に東京から京都へ移り住み、現在は、街の中心からほどよく離れた山の麓で生活している。
森でのフィールドワークを通じて植物を深くリサーチし、「人の植物の関係性」をテーマにアートの制作も行う。インスタレーションやパフォーマンスを通じて、見る者が自然と直接関わり、その美しさや大切さを再認識してもらうことを目指しているという。
オールタイムベスト
『随想集 四季』
著 串田孫一 1979年(文京書房)

四季を捉え直して、身体をチューニングする。
山にまつわる随想を綴った『山のパンセ』で広く知られる、詩人・哲学者・随筆家の串田孫一が、四季にまつわる記憶や思索を書きまとめた一冊。山小屋での出来事や、日々の暮らしの何気ない瞬間について、静かな筆致で書かれている。
「季節の変わり目に体調が悪くなってしまう人は多いと思いますが、私もそう。“絶対”って言っていいほど調子を崩すんです。わかっているなら前もって準備や予防をしておけると思うけれど、毎日忙しく働いていると、つい四季を捉えることを忘れてしまう。そんな時、季節を感じ取って身体をチューニングするためにこの本を読むんです」
例えば「梅雨明け」というタイトルのエッセイから当時の様子を想像して、「私も最近この景色を見た気がする」「そういえばそろそろ梅雨明けだな」と感じ取ったり、少し先の季節について書かれた文章を読んで「秋って毎年こういうことがあるよな」と思いを巡らせたり。
「今住んでいる京都には、春夏秋冬をさらに6つに分けた“二十四節気”が根づいていて、暦ごとの催しもよく行われているため、東京にいた頃より四季への意識が高まっているように感じます。家のすぐそばに山があって、季節の移ろいを目で感じられるのも大きいですね。『そろそろ体調を崩しがちな時期だ』とどっしり構えておけるようになった気がします」
定期的にファーマーズマーケットを訪れて、旬の野菜を手に入れるのも楽しみの一つ。夏は体を冷やす作用があるきゅうりやトマトを積極的に取り入れ、冬には生姜で体をポカポカさせるなど、季節に合わせた食事が体調を守る上で強い味方になっているそう。
「今の時期は梅干し作りに使われる赤しそがたくさん売られているので、それをシロップにして夏を乗り越えようと思っています。スーパーでよく売られている青しそも、薬味として親しまれているとおり、夏バテ防止におすすめのハーブです。きっと今年の夏もあっという間。旬の食べ物や目の前の風景をしっかり味わって、万全な状態で次の季節を迎えられたらいいなと思います」
最近読んだカラダの本
『ももこのおもしろ健康手帖』
著 さくらももこ 1999年(幻冬舎)

ゆるく、楽しく、健康について考える。
健康オタクとして知られる漫画家のさくらももこと編集者の山口ミルコの会話を収録したエッセイ集。気功や健康食品、手作りの美肌水など、さくらももこが実践していたありとあらゆる健康法が、ユーモアをまじえながら紹介されている。
「昔からさくらさんのエッセイが大好きなんです。クスッとするどころか、お腹を抱えて笑っちゃうくらい面白いエピソードが多くて。この本を読んでいると私との共通点も見えてくるので、それがファンとして嬉しい。例えば、肌荒れに困って最近使い始めたオリーブ石鹸を、さくらさんもこの本で紹介していたり。特に、食事への向き合い方は私と似た部分が多いように感じます」
静岡出身のさくらももこは、お茶にもこだわりがあったよう。例えば、無農薬のお茶を好んで飲んでいたり、粉末茶にごまや天然塩を加えて手作りのふりかけを作ったり。自家製の食品には手描きのラベルが貼られていて、そこに描かれたイラストも味があってチャーミング。
「私も保存食をよく作っていて、冷蔵庫が瓶だらけなんです。山椒の塩漬けや、今年は初めてらっきょう漬けを作りました。そうやって身体に合う食べ物を選んで、自分の手で何かを作ることが好きなので、この本で語られていることにとても共感。健康オタクっぷりが私より何歩も先を進んでいるので、さすがに全部は真似できなさそうですが(笑)」
たとえ真面目な話題であっても、語り口はとても軽やか。友人同士がカフェで雑談しているような雰囲気のなか、健康について真剣に語り合う様子が面白い。
「私は今30代ですが、この歳になると久々に会う友達と『最近どう?』って健康の話になったりするじゃないですか。そうやってカジュアルに身体のことをシェアできること自体が健康的でいいなって思っていて。一人でブランドをやっているとどうしてもストイックになってしまいがちなんですが、それをこの本のゆるさがリセットしてくれる。あまり追い込みすぎず、気楽に楽しく、身体のことを考えて実践していこうって思わせてくれるんです」

完成した赤しそシロップは瓶に詰めて保存。梅シロップも仕込んでいる最中だそう。

〈Verseau〉のハーブティー「Akeru」。レモンバーベナや黒文字、クローブなどをブレンドした爽やかな味わいが、身体をやさしく目覚めさせてくれる。


