地中海に学ぶ、老けない食卓のヒント。
老けない暮らしのヒントは、地中海の食卓にあった。和食にも通じる魚や野菜中心の食習慣に、オリーブオイルやナッツを加えた地中海食には、老化対策のヒントが満載。おいしく食べて、健やかに歳を重ねる秘訣を探る。
text: Kenji Inoue, Haruka Koishihara photo: Hisashi Okamoto
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週1回、地中海食にする。
塩分を減らし、カルシウムを増やしたシン和食は、世界に冠たる長寿食になる資格がある。でも上には上がいる。地中海食だ。
地中海食は、和食よりも3年早く2010年にユネスコ無形文化遺産に登録されている。文字通り、地中海沿岸諸国の伝統的な食生活であり、イタリア、スペイン、ギリシャ、モロッコ、キプロス、クロアチア、ポルトガルの7か国が登録されている。ポルトガルは大西洋沿岸で地中海には面していないけれど、地中海沿岸諸国の食生活に近いのだ。
地中海沿岸では心臓病が少ないことから、約38万人のアメリカ人を最長10年間追跡した大規模な調査を実施。地中海食に近い食事パターンの人は20%ほど死亡率が低いと判明し、地中海食は長寿食として一躍脚光を浴びる。
地中海食パターンと死亡率の関係。

アメリカ人38万人が対象。地中海食パターンにもっとも適合する群(6〜9点)ともっとも適合しない群(0〜3点)とで、死亡率などを比較すると、適合群の方が有意に低かった。
出典/Arch Intern Med. 2007; 167(22): 2461-2468.
史上最高齢者の「食」の秘密を知る。
有史以来もっとも長生きしたのは1997年、122歳で亡くなったフランスのジャンヌ・カルマンさん。彼女は南仏アルルで生まれて、生涯を彼の地で過ごした。
彼女は幼少から地中海食を食べており、オリーブオイルを愛し、野菜、魚、適量のワインを楽しんでいた。そう聞くと「やはり地中海食こそ抗老化の切り札だ!」と膝を打ちたくなるが、彼女には地中海食から外れる悪癖もあった。1週間に1kgのチョコレートを食べ、ワインだけではなく甘口のポートワインも嗜み、しかも117歳まで喫煙者だったのだ。「禁煙を勧めた医師はみんな私より先に死んだ」というのが、長生きの秘訣を尋ねる人たちに聞かせるお得意のユーモアだったという。
彼女の事例だけで地中海食なら長生きできるとか、タバコを吸っても構わないといった結論は出せない。ただ彼女は85歳でフェンシングを始め、100歳まで自転車に乗るなど、カラダを活発に動かす習慣があった。ゆる地中海食+適度な身体活動が、老けないコツになる可能性は十分ありそう。
和食を地中海食化。
地中海沿岸に引っ越さなくても地中海食は実践できる。そのヒントとなるのが「代替地中海食スコア(aMED)」(下参照)。野菜、豆類、果物、ナッツ類、全粒穀物、魚をよく食べ、一価不飽和脂肪酸(オレイン酸)を含むオリーブオイルを摂り、アルコールを適度に嗜み、飽和脂肪酸を含む肉は控えめに食べる食事である。
総じていえるのは、体内で炎症や酸化を抑える食材(野菜、豆類、果物、ナッツ類、魚、オリーブオイル)や、食物繊維が多くて腸内環境を整える食材(野菜、豆類、全粒穀物)がメインなこと。それが老化を抑えるのだろう。
aMEDをチェックすると、野菜、大豆、玄米、魚が食卓の主役だった古き良き和食に通じる点も多い。ナッツとオリーブオイルを意識して摂れば、和食派も今日から地中海食派に鞍替えできる。オリーブオイルをたっぷり使うとコクと旨味が増し、和食のアキレス腱である塩分摂取も減らせる。
加えて地中海食の特徴は、一人で黙々と早食いするのではなく、家族や仲間とゆっくりじっくり食事を味わうこと。食を楽しむ時間の使い方こそ、コミュニケーションを増やしてストレスを軽減し、抗老化の一助となるポイントだ。和食派も大いに見習いたい。
代替地中海食スコア(aMED)を構成する9項目
- 野菜
- 豆類
- 果物
- ナッツ類
- 全粒穀物
- 魚
- 一価不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸比
- 適度なアルコール
- 赤肉/加工肉少なめ
本場仕込みの地中海料理を体験するなら。

100歳以上でも健康に暮らす人が多い長寿地域「ブルーゾーン」のひとつ、イタリア・サルデーニャ島。豊かな自然に抱かれたその地に魅せられ、現地で修業した馬場圭太郎シェフが2007年に開いたサルデーニャ料理の専門店が〈Tharros〉だ。
「塩と油は健康の源」と、サルデーニャ産のエクストラヴァージンオリーブオイルとイタリアの海塩、さらに揚げ物には米油を使用。そして、市場直送の旬の鮮魚や自社農園で採れた新鮮な野菜、ハーブ類をふんだんに使い、サルデーニャの健やかな味を再現している。
〈Tharros〉

上から時計回りに《新鮮貝類のフレーグラ》2,860円は、サルデーニャ固有の丸い粒状のパスタ「フレーグラ」を使ったスペシャリテ。《鮮魚のカルパッチョ》2,420円はオレンジがアクセント。貝は使わず鮮魚のポテンシャルを生かした《アクアパッツア》3,960円、そして3種類の豆の旨味が溶け合う《ミネストローネ》1,210円。
マグロ漁の様子を描いた壁画やサルデーニャで購入した調度品が、現地の空気感を醸し出す。カウンターやテラス席もある。東京都渋谷区道玄坂1-5-2 渋谷SEDEビル1F。12:00〜14:00L.O.、18:00〜22:00L.O.、月曜休。55席。※夜のみ席料550円・要予約。

