Profile
渡辺恭良(わたなべ・やすよし)/神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科特命教授。日本疲労学会理事長。インテグレーテッドヘルスサイエンス社代表取締役。30年以上疲労研究の第一線で活躍を続ける抗疲労分野のトップランナー。
ヒャダイン/音楽クリエイター。本名・前山田健一。3歳でピアノを始め音楽キ ャリアをスタート。京都大学卒業後本格的な作家活動を開始。アーティストへ楽曲提供を行いタレントとしても活動。4月~テレビ東京系列『カンブリア宮殿』新MC担当。
多忙さを楽しむ余裕、その秘密はどこにある?
発熱や痛みに比べ、メカニズムの解明が遅れた疲労。それだけに、これまでは自分の疲労はあくまで自分だけにしか分からない主観的感覚と見なされてきた。しかし、そのままでは健康寿命の延伸には繫がらない。そこで、渡辺恭良さんが率いる抗疲労研究チームは約30年の歳月をかけて、疲労のレベルの可視化を現実のものにした。
とはいえ、まだまだ一般に広く知られていない疲労の定量化。一体どうやって疲労を計測できるのか? 興味津々、名乗りを上げたのは超多忙で知られる音楽クリエイターのヒャダインさん。

Tarzan
ヒャダインさん、すごくお忙しいですよね。4月から新しいレギュラー番組が3つ始まったと聞いています。
ヒャダインさん(以下、ヒャダイン)
そうなんです。でも、ちゃんと休みは取れていますよ。それにいろいろな方とお話ができて楽しいです。
渡辺恭良さん(以下、渡辺)
忙しい状況を楽しんでおられるというのは用意周到なんですよ。自分の中で何時までに何をするかという組み立てができる人は慌てないし疲れない。そこがすごく大事です。
ヒャダイン
番組に向けてめっちゃ勉強するという感じではないんですけど、マインドセットとしてはプランB、プランCを用意しているところはありますね。
ヒャダイン
番組中に5分巻くとか、電車が動かなくなったときとか、何かあったときにちゃんと対応できるようにはしています。
渡辺
それができる人は慌てないですよね。昔からそういう考え方なんですか?
ヒャダイン
あんまり慌てないし、ハプニングがあると逆にワクワクしちゃうかもしれないです。
糖化と自律神経機能から疲労レベルを割り出す。
ヒャダイン
渡辺先生、今日はどんな疲労の計測から始めるんでしょうか?ものすごく怖いんですけど。
渡辺
アドバンス・グリケーション・エンドプロダクツ、AGEsの検査から始めましょう。これは糖化によるカラダの焦げ付きレベルの計測です。肌や血管などを老化させるAGEs値を測ります。酸化(錆び付き)の結果の一端を示す簡易計測にもなります。あまり日に焼けていない腕の内側を測定器に乗せてください。
ヒャダイン
糖化レベルを測るのは初めてです。緊張しちゃいます。

蛍光分光方式という技術で皮膚や皮下の血管に蓄積されているAGEsを計測する。
渡辺
はい、数値が出ました。2.1という平均値です。
ヒャダイン
若くないじゃないですか! 僕45歳ですよ。
渡辺
大丈夫です。健康な人の平均値から外れていないので糖化はそれほど進んでいません。ちゃんとケアしておられる。
ヒャダイン
おぉ、ギリギリセーフなんですね。よかった!
老化と疲労の要因、糖化レベルをたったの12秒で割り出す。
体内に蓄積されたAGEs(最終糖化産物)はタンパク質と糖質が結合した物質で、老化や疲労を進行させる要因として知られている。そのAGEsをカラダを傷つけることなく計測できるのが「AGE Reader(非侵襲終末糖化産物短時間測定器)」。

片腕の肘先を測定機器に乗せるだけ。日に焼けていない腕の内側を乗せて少しずつ位置をずらして計測。

1回12秒で測定完了。測定結果は数値とグラフで表示される。ヒャダインさんの結果は2.1で糖化年齢は52歳。
グラフのピンクの部分は危険ゾーン、橙色はリスク上昇ゾーン、黄色は注意ゾーン、グリーンが健康ゾーン。ヒャダインさんは注意ゾーンの下限。糖化はさほど進んでいない。
渡辺
続いて自律神経の機能チェックをします。最初に計測アプリに性別と年齢を入れます。その後に5つ質問が出てくるのでカーソルを動かして答えてください。
ヒャダイン
えーと、最初は元気度ですね。カーソルの一番右側がとても元気、左側が元気がない。結構元気です。リラックスできていますか? まあそこそこできてます。カラダを動かしている方ですか? だと思います。やる気はありますか? とてもやる気はあります! 昨日はよく眠れましたか……今朝はちょっと早かったのでベストというわけじゃないですね。
渡辺
次はガンタイプの測定器で心拍と脈拍を一緒に測ります。右手の親指を銃身部に入れて左手の親指をグリップ部分に当てます。

ガンタイプの「疲労ストレス計測システムVM600」。銃身部分に片手の親指を入れ、グリップ部分に反対側の手の親指を乗せる。このまま2分間リラックスして心拍と脈拍を計測。
渡辺
2分間かけて測定します。椅子に深く腰掛けて目を閉じて膝の上に測定器を置いてください。

(2分経過)
ヒャダイン
総合評価は84点。これはどういう結果なんですか?
渡辺
脳の疲労もストレスの程度も低い素晴らしい結果です。大きな疲労は今のところ見られません。
渡辺
こちらの五角形の評価は主観的な活力の評価ですが、どれも良好状態です。ご自分で感じていることがそのまま客観的な計測にも表れているということですね。健常者の約70%は主観と客観の疲労度が一致していますが、残りの約3割の人は疲れているのにそれを感じていなかったり、逆に客観的に疲れていないのに主観で疲れていると感じる人もいるんです。
ヒャダイン
なるほど。自分では大したことないと思っているのに、カラダの方がSOSを出しているってままあることですもんね。
心拍と脈拍で自律神経機能を計測。自覚と客観データをすり合わせる。
疲労で脳の前帯状回や視床下部がダメージを受けると、自律神経のバランスが乱れる。現在は心拍や脈拍の周波数を計測し、その変調を見出すことが可能に。使うのはアプリと連動して「疲労・ストレス計測」ができる簡易健康管理デバイス。
アプリで元気や活力、やる気などの質問に答えた後、直近の就寝と起床時間を入力。

計測結果の上に表示されているのは疲労・ストレスの客観的評価。
横軸はストレス、縦軸は脳の疲れ。ヒャダインさんはストレス・脳の疲れともに正常範囲。下の五角形で示された自覚的評価とほぼ一致していた。
疲労予防&回復のカギは自己管理と睡眠。
渡辺
最初にお顔を拝見して結果の予想がつきました。にこやかで眼差しが生き生きとしてらっしゃる。
ヒャダイン
基本、ハッピーな人間なんです。ネガティブなことがあっても“なんとかなるや”とか“死にはしないし”って思っているんです。

渡辺
実は私がヒャダインさんに聞きたいと思っていたのは、自分が好きな音楽とそうじゃない音楽がある中で、疲れと音楽というものをどういう感覚で捉えてらっしゃるのかということなんです。
ヒャダイン
自分のテイストに合わない音楽を作るときにストレスがかかるんじゃないかと思っていた時期もありました。でも、実際音楽を作る側になってみたら、どんなジャンルの曲でも作ることが全部楽しいんです。料理人と似た感覚なのかもしれません。お客さまのお口に合うように作って出すという感覚です。
渡辺
自分ではなく提供する相手のことを考えるんですね。
ヒャダイン
音楽だけじゃなくテレビやラジオの仕事でいろんな方とお会いして、毎日新しい情報に触れることも楽しい。ノーストレスです。
Tarzan
羨ましいです。ヒャダインさんのように新規の情報を楽しめないという人もいますよね。
ヒャダイン
その気持ちも分かります。僕もちょっと疲れているときは新しい映画とか小説とかに触れたくなくて、自分を甘やかして昔馴染みの曲ばっかり聴いてます。
渡辺
いつも新しい世界を覗いていると面白いけど疲れますよね。私も疲れると好きなジャズを聴いて安心します。その他に疲労の対策は何かありますか?
ヒャダイン
月並みですけど睡眠です。夜はなるべくゆったり過ごして寝て、朝バーンと起きて“世界最高!”という感じです。
ヒャダイン
曲作りは朝昼です。ミュージシャンって深夜に活動しているイメージですけど、夜に曲書くとか信じられない。夜に脳みそをわーっと動かすと眠れなくなります。
渡辺
夜に副交感神経を優位にしてリラックスして深い眠りにつく。朝はレム睡眠で記憶の整理をしながらだんだんと覚醒する。それが元気の秘訣です。
ヒャダイン
よかった。あれ、疲労特集ですよね。こんなに元気で、ミスキャストじゃなかったですか?(笑)