顔は全身を映す鏡。東洋医学的フェイスケア入門。
“顔は全身を映し出す鏡”という東洋医学的観点を元に、フェイスケアの基礎知識と実践法を紹介。
取材・文/山本菜美子 イラストレーション/2120 監修/手塚幸忠
初出『Tarzan』No.919・2026年2月12日発売

美容医療だけじゃない、習慣こそがモノをいう。
スキンケアや美容医療の情報は山ほどあるけれど、まず整えたいのは「肌にのせるもの」よりも、その土台にある血流と内臓かもしれない。東洋医学では、顔は全身の状態が映る“鏡”と考える。気・血・水が不足したり巡りが悪くなると、クマやくすみ、むくみやこわばりとなっていちばん先にサインが出るのが顔だ。
だからこそ、顔から不調のヒントを読み取り、マッサージやツボ押しで巡りを整え、食事や暮らし方で五臓をいたわっていくことが、結果的には全身のコンディションアップにつながっていく。続けることで、表情や肌ツヤにも変化が出るはず。まずは鏡の前に立って、自分の顔をよく観察するところから始めよう。
そもそも、健やかな顔って?

健やかな顔の条件は、顔全体が薄い赤みを持ち、肌に艶があること。まず血液が皮膚の奥で循環することで顔全体がほんのり赤みを持つ。そして、気が巡ることで肌を乾燥や刺激から守るバリア機能が発達し艶が生まれるのだ。朝晩、鏡の前に立つ時には必ず色艶をチェックしてほしい。
顔の不調、意識したことある?
不調が表れる理由は主に3つ。冷えや運動不足で血液やリンパの流れが滞る“循環不全”、長時間のスマホ視聴やデスクワークが引き起こす“筋肉の緊張”、そしてストレスや睡眠不足による“自律神経の乱れ”。つまりは日常生活から改善できることばかり。まずは顔のエリア別に不調の原因を見ていこう。

【目の下のクマ】
クマの原因は、胃腸の不調、血流の悪さ、そして睡眠不足や過労。加齢などによる色素沈着が原因の茶色いクマ、疲労や目の酷使などによる血行不良が原因の青黒いクマ、目の周りの皮膚や筋肉の衰えによる黒いクマの3つがある。
【血色の悪さ】
東洋医学では血液循環に関する力が衰えていると考える。循環を良くするために、まずはストレスや睡眠不足、過労を減らし、リラックスできる時間を設けること。「スワイショウ」という、腕を前後に振る気功体操も効果的だ。
【口元のたるみフェイスライン】
原因のひとつは冷たいものの摂りすぎや暴食による胃腸の疲れで、顔の筋肉や脂肪を持ち上げる力が衰え、たるみが引き起こされる。解消には白砂糖は極力避け、サツマイモやカボチャといった自然的な甘みのある食材を適度に食べる食養生がおすすめ。
内側からのケア習慣|食生活で臓をいたわる。
尹 生花(いん・せいか)/中医学博士。体質学と五臓論をもとに「臓活」を構築。モデルや女優のかかりつけとしても知られる美と健康のサロン〈BHY〉を主宰。
「東洋医学の視点では、顔の不調は臓の働きや気の巡りが滞っているサインだと捉えます。臓とは、エネルギーや感情、体質にまでいたる人にまつわるすべての機能を指す言葉。まずは顔の不調を見つめ、どんな力が弱っているのか確認。五臓の活性化には良質な温めと睡眠が最重要です。夜は早めに休んで、朝は決まった時間に起きること。そして、臓をいたわる食事を意識しましょう」
朝|冷たいものを避け、温かい飲み物を摂る。

ポイントは、時間をかけて60度以下の白湯を飲む。
朝は健やかな一日を過ごすための準備時間。寝起きの一杯は白湯や漢方茶などの温かい飲み物を飲むことで血や水の巡りが整い、内臓が目覚める。刺激物はなるべく控え、コーヒーは朝食後に。白湯にはちみつを一滴垂らせば、免疫力の向上や便秘解消にも効果的だ。
昼|臓が消化しやすい食材を選ぶ。

ポイントは、加工食品は避け自然のものをよく摂る。
食養生は意外にも簡単。普段自炊する人は、食材を一品ずつ見直してみよう。消化にやさしい南瓜や山芋、カラダを温めてくれる生姜や長ネギなど、スーパーで買い物をする時は食材の効能を意識するのが吉。野菜はシンプルに蒸して味わうのがおすすめだ。
夜|夜は甘いものよりホットフードを。

ポイントは、冷たいものをなるべく避ける。
夜はご褒美についついケーキや甘いものが欲しくなる……なんて日もあるだろう。しかし、白砂糖がたっぷり使われた甘いものはカラダを冷やし、それが翌朝のむくみや血色の悪さに繫がるのだ。夜はスープや鍋といった温かく、臓の活動にいいものを中心に摂りたい。
プロにお願いするなら…漢方薬局で相談。
さらに踏み込んで体質を改善したい人は、一度専門家に相談してみるのもひとつの手。その人の体質や五臓の状態を見極め、必要な漢方薬を処方してもらうのが美顔への近道だ。
外側からのケア習慣|顔は涼しく、カラダは温かく。
手塚幸忠(てづか・ゆきただ)/表参道自然なからだ院長。幅広い症状や悩みに対し、鍼灸とマッサージを組み合わせたオリジナルの施術を行う〈表参道自然なからだ〉を経営。
「意外にも大切なのは顔ではなくカラダを温めること。顔だけを直接温めると血が上ってきて、のぼせや頭痛を引き起こしたり、足元に血流が回らずカラダが冷えてしまう。全身の血流の循環を促し、その結果として顔に血が巡ってくるのがベスト。根本的なことですが、ストレスを溜めない環境作りや睡眠をたっぷり取ることも欠かせない。適度に運動して、カラダの緊張をほぐすことも大切です」
朝|肩回し体操で肩甲骨を動かす。

前・後ろに10回ずつ大きく回す。
顔色を良くするために始めたいのは、ベッドから出てすぐに肩を大きくぐるぐる回すこと。血色の悪さやむくみの改善に肩こりは大敵! 肩まわりの滞りが解消すれば、血が巡りやすくなるだけでなく、顔の余分な水分をカラダへ促し循環させてくれる。
昼|隙間時間に頭部の緊張をほぐす。

側頭部に5本の指を当てて円を描く。
デスクワークやPC作業の合間に効果的なのが、側頭部のマッサージ。側頭部にはストレスを緩和するツボが多く存在していて、それをほぐすことで緊張がゆるみ、血流が改善する。時間がある時はデコルテまわりもマッサージして、水分と血流の巡りをさらに促進。
夜|半身浴で下腹部を温める。

38度〜40度、ぬるめのお湯に15分ほど入浴。
下腹部には気や血の巡りをよくするツボが集結。半身浴で下腹部を温めると、血流が促進し顔色がよくなるうえに、ストレス解消にも効果的だ。額や鼻の頭にうっすら汗が滲んだタイミングで終了するのがベスト! ただし汗をかきすぎると体力を消耗するので要注意。
プロにお願いするなら…箱灸で冷え改善。
木箱の中でもぐさを燃焼させ、それをカラダの上に乗せる箱灸。おへそや下腹部、仙骨周辺に置いてじっくり温めてもらうのがおすすめ。水分代謝や血流の改善に効果的だ。


