走り、登り、整える。京都で過ごす朝活プラン。

1000年を経ても京都の朝は幻想的だ。走るもよし、山に登るもよし、静かに自分と向き合うもよし。ひんやりした空気の中、古都で心と体を整える朝活へ。

取材・文/齋藤優子 撮影/山口 明、東谷幸一(朝食) スタイリスト/高島聖子

初出『Tarzan』No.921・2026年3月12日発売

坐禅を組んでいる様子

早朝の鴨川でランニング。

次々変わる景色が醍醐味。早朝ランの後は、銭湯へ。

鴨川の様子

鴨川を走っている様子

四条大橋を越え、三条大橋に向かって北上。五条大橋から二条大橋までが約2km、鴨川デルタまで走れば約4kmの道のりだ。

南北に、約27kmにわたって京都の街中を流れる鴨川は、観光前の早朝ランにもってこいだ。なかでも五条大橋〜二条大橋あたりは、中心地からのアクセスもよく、勾配も穏やか。

日が高くなるにつれて賑わいを見せる河川敷も、早朝なら、静かな時間を享受する人がぽつり、ぽつり。道が整備されているので走りやすく、信号で足止めされることも、排気ガスのストレスもない。清々しい空気の中、川のせせらぎと鳥のさえずりをBGMに、気持ちよく走れる。

なにより、景色がどんどん移ろうから、飽きない。五条大橋を北上すると、西岸には先斗町歌舞練場や料理店。東岸に目をやれば、桜の季節には薄桃色に染まる花の回廊。二条大橋を過ぎ、さらに北上すれば、ロケでおなじみの鴨川デルタだ。街中を走りながら、古都の風情も自然も享受できるのが、鴨川ランの贅沢なところ。

汗をかいたら、ご褒美は銭湯といこう。実は、京都は市内に80軒近くが残る、銭湯の街でもある。有名なところでは、国の登録有形文化財になっている〈船岡温泉〉。1923年に旅館として創業。いまも、脱衣所などには透かし彫りの欄間や色鮮やかなマジョリカタイルなど、贅を尽くしたレトロな装飾が残り、さながら美術館のよう。日曜なら、朝から満喫できる。

大正から続く由緒正しき銭湯で汗を流す。
船岡温泉の入り口

鞍馬の名石を使った建物。

風呂の内装

風呂は日本初の電気風呂、薬湯など種類豊富。

脱衣所の様子

脱衣所には豪華な装飾が残る。

船岡温泉

京都市北区紫野南舟岡町82-1。15:00(日曜8:00)〜23:30、火曜休。入浴料550円。露天の檜風呂と岩風呂、サウナも完備。市バス「千本鞍馬口」より徒歩6分。

お寺で朝活。

禅寺で坐禅や写経を体験し、ココロとカラダをリセット。
坐禅を組んでいる様子

警策でビシッと肩を打たれる。勝林寺では、打たれたい人だけ、住職が近づいた時に合掌して頭を落とす。

神社仏閣巡りは、京都旅の楽しみのひとつだが、リトリートするなら、静謐な時間が流れる朝が最適だ。市内には数多くの禅寺があり、禅の修行のひとつである坐禅や写経などを、朝の時間に体験できるお寺が増えているのだ。

「坐禅は、坐ることによってカラダ、呼吸、心を一つにすること」と、15年ほど前から坐禅体験を行っている勝林寺の25代目住職、宇野虓堂さん。坐り方に始まり、手の合わせ方、視線の置き方、呼吸の仕方など、一から丁寧に教えてくれる。ちなみに目は閉じない。

「気持ちが内側に向いてしまいますから。いまを見つめるという考え方で、1mほど先に視線を落とします」。5分の休憩を挟んで30分。少しずつ、雑念が取り払われていき、終わった後は、心のモヤが晴れ、五感が研ぎ澄まされたような気分だ。また、坐禅は、元はヨガのポーズのひとつ。「静による自己の見つめが坐禅なら、動による見つめがヨガ」という考えから、ヨガも行っている。

写経は、無心にお経をなぞることで邪念を除く修行である。邪念が入ると、文字がゆがんできれいになぞれないという。なるほど、ただただきれいになぞることに集中していると、煩わしかった日常のあれこれも気づけばどこかに消え、心が穏やかになっている。

ヨガや写経に集中し、精神統一。

お寺でヨガをしている様子

模写をしている様子

インストラクター指導のヨガは、坐禅後に体験できる。写経は塗香(ずこう)で手指を清め、一読してから。

勝林寺

[体験内容]坐禅、写経・写仏、ヨガ 
[日程・時間]坐禅、写経・写仏はほぼ毎日10:30〜
[志納料]坐禅:1,300円、写経:1,000円〜、坐禅とヨガ:3,300円
[予約方法]公式サイトの日程表より日程・時間を確認後予約

臨済宗の大本山、東福寺の塔頭寺院で、1550年創建。本尊は毘沙門天三尊像。京都市東山区本町15-795。受け付け9:00〜17:00。京阪本線「東福寺」駅より徒歩8分。WEBサイト

坐禅などが体験できる寺一覧。

妙心寺

[体験内容]坐禅・提唱(講話)、写経
[日程・時間]坐禅・提唱(講話):毎月8日6:00〜7:30、写経:毎日9:00受け付け開始
[志納料]坐禅:500円、写経:1,000円
[予約方法]坐禅・提唱(講話)、写経ともに予約不要

天龍寺

[体験内容]坐禅会、写経
[日程・時間]坐禅・提唱(講話):毎月第2日曜9:00〜10:00、10:00〜11:00、写経:毎日9:30〜14:30
[志納料]坐禅:無料、写経:1,000円(別途参拝料800円)
[予約方法]坐禅は予約不要で、2・7・8月は休み、写経は電話で要予約

大徳寺・大慈院

[体験内容]朝のゆる坐禅/坐禅、セルフメンテナンス
[日程・時間]不定期開催8:00〜9:00
[志納料]1,500円
[予約方法]2日前の10時までに要予約

相国寺

[体験内容]座禅会:坐禅、法話
[日程・時間]第2・4日曜9:00〜11:00
[志納料]100円以上
[予約方法]8:30受け付け開始(先着順) 1月第2、8月第2・4、12月第4各日曜休会圓光寺

圓光寺

[体験内容]日曜早朝座禅会/暁天坐禅、作務、法話、粥座
[日程・時間]毎週日曜7:00〜8:30
[志納料]2,000円(朝粥付き)
[予約方法]前日17時までに電話で要予約

トレッキングで御来光を。

大文字山から昇る朝日と、平安京の守り神・吉田神社。
朝日に霞む大文字山と御来光の様子

山頂休憩広場の木立の合間から、朝日に霞む大文字山と御来光。5分ほど下山すると竹中稲荷社がある。

京都は、低い山に囲まれた盆地ゆえ、ハイキング感覚で登れて、なおかつ御来光が拝める、ありがたい山がいくつもある。

ちょっと頑張りたい向きには、五山の送り火で知られる大文字山や、伏見稲荷の御神体である稲荷山など。気軽なところなら、平安京を作る際の基準になったといわれる神社のある北の船岡山と、御室仁和寺に近い西の、そして、東の吉田山だ。今回は、吉田神社の境内が西側斜面に広がる吉田山に登ってみた。

古くは神楽岡=神が集いし岡、と呼ばれており、山頂は標高約105m。山というより岡に近い。いくつか登り口があるが、どのルートからでも15〜20分も歩けば、登頂できる手軽さだ。

もっともわかりやすいのは、吉田神社の表参道から向かうコース。山頂広場は、東側の視界が開けていて、日の出のころに登れば、大文字山から昇る朝日、という神々しい景色を望むことができる。

また、吉田神社の広い境内には、本宮のほか、料理の神を祀る山蔭神社、お菓子の神を祀る菓祖神社、商売繁盛の神様である竹中稲荷社などの社が点在する。御来光を拝んだら、山道に木漏れ日が注ぐなか、参拝して巡ると、さらに御利益がありそうだ。道すがら、朝日に照らされた京都の街が眼下に。

緩やかな石段を上り、トレッキングスタート。

鳥居を通りすぎる様子

森の中を歩く様子

森の中を走っている様子

森の中を走っている様子

吉田神社の二の鳥居から入山。菓祖神社を過ぎると、山道の木漏れ日を感じられる。

日の出前に出発し、吉田山の山頂で朝日を眺める。

ご来光を背に神社で拝んでいる様子

山頂休憩広場の木立の合間から、朝日に霞む大文字山と御来光。5分ほど下山すると竹中稲荷社がある。

吉田神社

吉田神社

859年、平安京の守り神として、この地に4柱の神様を祀ったのが始まり。2月の節分祭がつとに有名。京都市左京区吉田神楽岡町30。市バス「京大正門前」より徒歩5分。WEBサイト

京都ならではの朝食。

歴史的な建造物が多く残る京都は、食文化もまた豊か。だしや喫茶文化が根付くこの街ならではの、ココロとカラダが喜ぶ朝食を。

〈だし料理 十(じふ)〉一杯のだしで目覚めてみる。

〈だし料理 十(じふ)〉の朝食

一杯のだしから始まる朝があってもいいと、9時ごろから営むだしが主役の料理店だ。稀少な天然昆布を選んで引いてもらう“呑むだし”をはじめ、だしが染みた前菜、麺まで。繊細な味わいが胃をリセットしてくれる。

〈だし料理 十(じふ)〉

〈だし料理 十(じふ)〉

ウェルカムだし、前菜3品、天然昆布だし、自家製小麦めんで4,870円〜。京都市左京区一乗寺樋ノ口町27。詳しい営業時間はインスタで(予約優先)、月・火曜休。

〈Salone de 1904〉重要文化財でバランス朝食。

〈Salone de 1904〉の朝食

1904年築当時の姿を今にとどめる京都府庁旧本館内にある前田珈琲が営むカフェ。府庁職員が利用することもあって、モーニングもここだけのメニューが揃う。京都産の卵を使ったSPモーニングは、栄養バランスもいい。

〈Salone de 1904〉

〈Salone de 1904〉の店内

1904 SPモーニングセット(ドリンク付き)1,250円。朝食は11時まで。京都市上京区下立売通新町西入薮之内町 京都府庁旧本館内。8:00〜17:00、1月1日休。

〈喫茶チロル〉老舗喫茶でパワーをチャージ。

〈喫茶チロル〉の朝食

名物のカレーにハヤシライス、オムライス……。朝から目移りするほどメニュー豊富なのは、1969年の創業当時、客が近所で働く男性中心だったから。朝からお腹いっぱい食べてほしいとの初代の思いがいまに続く喫茶店だ。

〈喫茶チロル〉

〈喫茶チロル〉の外観

玉子トースト650円、カツカレー980円、クリームソーダ(メロン)680円。京都市中京区門前町539-3。8:00(朝食11:00まで)〜15:30L.O.、日曜・祝日休。

〈旧三井家下鴨別邸〉名庭と精進料理で心身を清める。

〈旧三井家下鴨別邸〉の朝食

江戸、明治、大正と異なる時代の建築が残る下鴨別邸。朝なら、瓢箪池のある苔庭を眺めながら、名店〈泉仙〉の精進料理が味わえる。鉄鉢を象った器に盛られた滋味深い味わいの品々と庭の景色で、心身ともに洗われる。

〈旧三井家下鴨別邸〉

〈旧三井家下鴨別邸〉の外観

朝食プラン3,500円(別途入館料)。京都市左京区下鴨宮河町58-2。開催日指定。1日先着10名。WEBサイト