初心者が体験!不調に寄り添う鍼灸院・漢方薬局&クリニック。
「鍼って痛そう」「漢方薬って効くの?」東洋医学系の施設は、足を運んでみないと実態が見えにくいもの。しかし一度システムがわかれば初心者に優しく、安心できる場所に。不調と共に戦う強い味方と出会うべく、3人の“東洋医学ビギナー”が体験!
取材・文/松岡真子 撮影/石原敦志
初出『Tarzan』No.919・2026年2月12日発売

鍼灸院|「鍼はちょっと怖いけど…」矢部太郎さんのカラダに変化が!
Profile
矢部太郎(やべ・たろう)/1977年生まれ。97年に〈カラテカ〉を結成。2016年に『大家さんと僕』(新潮社)で漫画家デビュー。最新刊は『楽屋のトナくん』6巻(講談社)。

「鍼が痛くないか心配です」(矢部さん)
鍼に怯える矢部太郎さん。漫画家として活躍すること10年。創作活動の宿命で目、肩、腰はお疲れ気味だ。施術は楽しみだけれども不安は拭えない。「矢部さんの感受性を見ながら、鍼を刺すか、貼るだけにするかを決めていきます」と鍼灸師の柳本真弓院長。
ここから「四診」が始まる。舌や表情を観察する「望診(ぼうしん)」、呼吸音や声の調子に耳を澄ます「聞診(ぶんしん)」、体調の悩みを聞き取る「問診(もんしん)」、脈やお腹に触れて状態を確認する「切診(せっしん)」。五感を使って全身を診る漢方独自の方法だ。
柳本先生は「カラダのパワーが足りていません。100点満点で表すと60点くらい。鍼で活力を取り戻していきましょう」とにっこり。約40分の施術で勢いを注入し、何点まで上げられるのか!?
ステップ1.問診票の記入
目や汗の異常、睡眠の質など計22項目の質問に加えて、主訴と病歴を申告する。「かつて血管が“ない”と言われました」と矢部さん。低血圧、眼精疲労、食欲不振、手足の冷え、入眠困難などをチェックした。

そのほか服薬状況やアレルギーの有無、さらには生活スタイルなどにも回答。問診の土台となるため、詳しく伝える必要がある。
ステップ2.四診(望診・聞診・問診・切診)
脈の速度やリズムを読み、腰部分の切診も行ったうえで、「ここには生命力を司るツボのがあります。腎兪の弾力がなく、若干弱くなっているかもしれません……」と柳本院長。「余命宣告みたい」と矢部さんは苦笑する。
ステップ3.仰向けで施術
手のひらに置き鍼をした途端、ふくらはぎの凝りがほぐれていく。足裏にも鍼を貼ると「巡り始めた感じがします」と矢部さん。ここで緊張を解く仕上げとして頭頂部にあるに鍼を打つ。さっそく全身がポカポカしてきたようだ。
ステップ4.うつ伏せで施術
柳本院長は、肌の色合い、乾燥度、血管の浮き具合、凹み……、背中が発するサインを受け取りながら的確に鍼を施していく。腎兪ももちろんケア。5分ほどで肌に赤みが差し、ツヤも表れた。パワーが満ちてきている!
ステップ5.終了。施術の効果は?
起き上がると、顔色は明らかに良く、表情にも力が宿っていた。舌の状態を確認した柳本院長が出した点数は?
「70点。慢性的な不調は蓄積されたものなので、取り除くには時間が必要。10点アップでも上出来です」(柳本さん)

「手足の温もりは別人みたい!また打ちにきます」(矢部さん)
〈目白鍼灸院〉

東京都豊島区目白3-5-6 目白ITビル2F。火〜金曜11:00〜20:00(土曜10:00〜、日曜18:00まで)、月曜休。WEB予約もあり。WEBサイト
- 保険適用:なし
- 予約:必要・目安料金:8,250円〜
- 得意分野:内科、婦人科、がん
鍼灸院の素朴な疑問Q&A。
自分に合った鍼灸院の見分け方は?
「改善したい症状と、鍼灸院の得意分野が一致しているか。実績と鍼灸師の経歴の2点を確認しましょう。合うかどうかは、施術者との相性にも左右されます。受けた時に心地良いと感じられるなら、正解です」(柳本さん)
鍼灸院の得意分野は?
「まずは肩こり、腰痛、関節痛の運動器系。次に、頭痛や神経痛。他には、自律神経の乱れに起因する症状は鍼灸の真骨頂です。守備範囲が広いからこそ、施設ごとの特性を見極め、目的に応じて使い分けるのも一案です」(柳本さん)
通院頻度はどのくらいがベター?
「体調管理として利用するのであれば、2〜3週間に一度が理想。とはいえ、1か月に一度でも十分。コンディションを崩した時は、まずは間隔を詰めてみてください。それでも回復しない場合は、一度中断して様子を見ましょう」(柳本さん)
急な痛みに襲われた時に駆け込んでも大丈夫?
「自力で動ける状態であれば、鍼灸を受けても大丈夫です。立ち上がれないほど痛む場合は安静にし、落ち着いてから訪ねましょう。その際は先に専門医に受診を。医師の見立てを鍼灸師に共有することで的確な施術が受けられます」(柳本さん)
保険適用ができる院と自費診療の違いはどこにあるの?
「神経痛、リウマチ、五十肩など6つの慢性疾患は、ドクターの同意書があれば、鍼灸でも健康保険が適用されます。ただし、全ての院で対応しているわけではないため、事前に確認を。先に挙げた疾患以外は自費となります」(柳本さん)
漢方薬局|「冷えと便秘を解消したい!」坂口佳穂さん、お守りを手にいれる。
Profile
坂口佳穂(さかぐち・かほ)/元ビーチバレー選手。1996年生まれ。2014年にビーチバレーを始め、18年には世界大学選手権に日本代表として出場。「ビーチの妖精」の愛称で親しまれ、20年に引退。

現役引退後から感じる冷えと、高校時代から続く便秘に頭を抱える坂口佳穂さん。2大不調を解決すべく〈漢方ツヅノ薬局〉を訪れた。
「不定愁訴の改善は、漢方が力を発揮する領域です。また、その原因は日々の積み重ねにあります。生活習慣からストレス要因までを聞き取り、そのうえで対策を提案します」と薬剤師の野村直子さん。こうして60分間の相談がスタート。
まず問われたのは食習慣。「アイスを夏は毎日、冬も3日に一度は食べます」と申告。
「夏の過ごし方が冬の体調を決めます。今の冷えに影響しているかもしれません」(野村さん)
さらに日課、睡眠などを聴取。生活全体を見渡した結果、血の不足を補い、胃腸の働きを高める2種の漢方薬が出された。
ステップ1.問診票の記入
主訴をはじめ、舌と苔の状態、既往歴、手足腰といった部位の違和感まで、計28項目に答える。坂口さんは立ちくらみがあり、夢をよく見ることも気になっていた。
「これらの症状は“血虚”の典型ともいえます」(野村さん)
ステップ2.カウンセリング
生活をさらに深掘り。特に食事は献立まで細かく聞く。「朝は納豆ご飯と味噌汁、目玉焼きが定番。夜はここに生野菜のサラダが加わります。グミやチョコも手放せません」と坂口さん。野村さんはその表情や目の輝きも観察する。
ステップ3.漢方薬と養生法を説明
「むくみには代謝を上げる当帰芍薬散で対応します。1日3回、食前に服用ください。そして、立ちくらみや冷えの改善には婦宝当帰膠を。こちらは朝晩の2回。カラダを潤すので便通改善も見込めますよ」(野村さん)
当帰や芍薬をはじめ、当帰芍薬散を構成する6種の生薬をピックアップして調合。分包機に1日量ずつ乗せ、不織布に詰めていく。
所要時間は約10分で14日分が完成。このまま鍋に入れて煎じてOKだ。調剤室にはおよそ220種の生薬が揃い、顆粒タイプも扱う。自由診療を基本としながらも、処方箋の持ち込みにも対応している。
ステップ4.服用法を説明
煎じ方は意外と簡単。鍋に600ccの水と生薬を入れ、中火にかける。沸騰後は弱火にし、半量になるまで煮詰め、100ccずつ服用。〈漢方ツヅノ薬局〉では1回分を袋に詰めた「煎じ代行サービス(3,000円)」もあり。

ステップ5.終了。問診を終えた感想は?
「夢が多いのは血不足が原因だと聞いて、びっくり。不調の理由と体質が繫がって腑に落ちた。提案いただいた“とうきしゃくやくさん”は、漢字すら浮かびません(笑)。でも、頑張って煎じます。“婦宝当帰膠”はお守りになりそう」(坂口さん)

「不調が改善されますように」(坂口さん)
〈漢方ツヅノ薬局 平和島本店〉

東京都大田区大森北6-30-15 ツヅノビル。月〜金9:00〜19:00(土曜18:00)。漢方相談の初回予約は営業終了90分前までの受け付け。日曜休。オンライン相談もあり。WEBサイト
- 保険適用:なし
- 予約:必要
- 目安料金:15,000円〜(約1か月分)
- 得意分野:不妊、自律神経
漢方クリニック|貧血に悩むライター、処方箋を発行してもらう。
「西洋薬と漢方薬、その両方を扱えるのが日本の医師です。そのため、健康保険で漢方治療が受けられます」。そう教えてくれたのは、医療ジャーナリストの増田美加さんだ。
そこで貧血に悩むライターが〈芝大門 いまづクリニック〉を予約。今津嘉宏院長にカラダの不調を打ち明け、舌の色、脈、お腹の硬さや張りを見てもらう。
診察は問診に始まり「舌診・脈診・腹診」と各部位の状態から判断。診断結果に応じて処方箋を発行してもらう。
「紫がかった舌、左腕の脈の細さ、下腹部を押したときの痛みから“血”の低下が顕著です。またみぞおちに強い反応があるので、胃炎の所見もある。深部を温め、巡りを促す処方にしておきます。ちなみに漢方薬を希望すれば、一般のクリニックでも出してもらえますよ」(今津さん)

芯から温める生薬が揃い踏みの「当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)」に、強い温熱作用を持つ「附子(ぶし)」を追加。14日間の内服が決まった。
〈芝大門 いまづクリニック〉

東京都港区芝大門1-1-14 芝大門郵便局となり。月・火・金・土曜10:00〜14:00。診察の予約は10:30〜13:30の間に電話にて受け付け。電話診療も行う。WEBサイト
- 保険適用:あり
- 予約:必要・目安料金:1,500円程度(別途初診予約料 5,000円)
- 得意分野:漢方腫瘍内科、漢方内科、漢方産婦人科
漢方薬局・クリニックの素朴な疑問Q&A。
教えてくれた人
増田美加(ますだ・みか)/NPO法人〈みんなの漢方®〉理事長。エビデンスに基づいた健康情報と患者視点に立った医療情報について執筆と講演を行う。
自分に合った漢方クリニックの見分け方は?
「目的の診療科で漢方薬を希望してみてください。日本の医師の80%以上は日頃から漢方薬を保険診療で処方しています。そのドクターが漢方専門医であればなおよし。漢方のエキスパートで知見が豊かな証しです」(増田さん)
漢方薬局とクリニックの違いは?
「漢方薬局では薬剤師が相談を受け、一般用漢方薬を提案します。一方病院では医師が診察・診断。症状や体質改善の治療として医療用漢方薬を処方。薬局の漢方薬は全額自費ですが医師処方の漢方薬は保険適用となります」(増田さん)
一般用漢方薬と医療用漢方薬の差はどこにある?
「前者は薬局やドラッグストアで購入できます。後者は病院で処方される薬。現在148種類が医療用として保険適用されており、煎じ薬もその対象。両者は配合量に差があるものが多く、医療用の方が効果が高いのが一般的です」(増田さん)
一般的な内科や婦人科でも漢方薬は処方してくれるもの?
「はい、処方してくれます。診察の際に漢方薬を希望してみてください。もし、気になる処方があれば名前を挙げて相談するのもOK。自分の体質と症状に合った漢方薬の選択は副作用や飲み合わせもあるので、医師と相談してみて」(増田さん)






















