雪解けの佐渡島で早春の花に出会う。|4月の山・金北山

季節によって異なる表情を見せる日本の山。その時期だけに出会える風景や体験を求めて、写真家の根本絵梨子さんに毎月おすすめの山と、その歩き方を教えてもらいます。

取材・文/小林百合子 撮影/根本絵梨子

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今月の山 金北山
きんぽくさん
|新潟県

標高/1,172m(金北山)

おすすめコース

栗ヶ沢登山口(50分)横山登山道合流点(15分)じゅんさい池(40分)神子岩(30分)じゅんさい池(15分)横山登山道合流点(45分)栗ヶ沢登山口
歩行時間計:3時間15分

春一番の花々がくれる、みずみずしいパワー。

4月。寒さがゆるみ、街では春爛漫の雰囲気です。3月まで雪の山に向いていた気持ちも少しずつ変わって、春の気配を探しに山に登りたいなと思います。

東京近郊の低山でも春の花が芽吹き始める頃ですが、近年私が足を運んでいるのが新潟県にある佐渡島です。そこは祖父母が暮らした島で、幼い頃から何度も訪れてきた場所。自分にとっての“第二の故郷”のような存在です。

小さな頃は夏休みに訪れることが多く、遊ぶのはもっぱら海。でも中学生くらいになると海水浴にも飽きて、少しずつ山に足が向くようになりました。といっても簡単なハイキング程度で、本格的に佐渡の山の魅力に目覚めたのは、ここ数年のことです。

きっかけは佐渡島に古くから伝わる鬼太鼓(おんでこ)という伝統芸能でした。鬼太鼓は五穀豊穣や厄払いを願って、鬼や獅子が太鼓を叩きながら各集落を回る風習で、主に春と秋に行われます。数年前の秋、偶然秋の鬼太鼓を見て感激し、その次の春にも島を訪れることにしました。

鬼太鼓の素晴らしさはもちろんですが、同じくらい胸打たれたのが、早春の山に咲く山野草。佐渡島の最高峰である金北山は、標高の高い場所はまだ雪に覆われていましたが、山麓は雪解けが進み、足元にはカタクリや雪割草など、春を真っ先に告げる花々が咲き乱れていました。

花が好きな友人は一歩進むごとに花を愛で、丁寧に写真に収めるものだから、登山口から歩き始めて3時間ほど経っても、全く先へ進めません。予定していた行程の10分の1も進めず、翌日また同じルートを歩くことになるほど、素晴らしい風景でした。

夏には金北山の山頂を目指して歩く人が多いですが、春には途中の神子岩まで歩き、そこから来た道を引き返すだけで大満足。途中のブナ林ではみずみずしい新芽が芽吹き、花とはまた違った美しさがあります。

佐渡島に咲く早春の花の中でも最も心奪われたのが雪割草です。同じ種類でも白や薄桃色、ショッキングピンクなど多様な色をもち、花の形状も様々。ひとつとして同じ花がないのではと思うほど豊かなバリエーションがあって、どれほど見ていても飽きるということがありません。

長く厳しい冬をじっと土の中で耐え、雪解けを合図に一斉に芽吹く早春の花。その姿を見ていると、「山はこうやって目覚めるのだな」と肌で感じられます。冬の間、目一杯力を蓄え、それを爆発させるように咲く花々は、可憐でありながらとても力強い。そのパワーを体いっぱいに感じると「いろいろなことがあるとしても、前を向いて行こう」、そんな小さな勇気をもらえるのです。

雪解けの時季にだけ見られる、山野草の楽園。

春から初夏にかけて約1,700種もの山野草が咲く佐渡島は「花の島」と称され、中でも島の最高峰である金北山は「花の百名山」にも選ばれている。

4月にはカタクリや雪割草、その後、5月に入るとシラネアオイやニリンソウなど、次々と花が咲き、6月上旬頃まではフラワートレッキングが楽しめる。

4月中はまだ山腹より上には雪が残り、山頂まで登るには軽アイゼンなどの冬山装備が必要。神子岩付近まででも多くの花を見られるので、雪山経験のない人はそこまでの往復にとどめるのがベター。雪解けが進むと足元がぬかるむので、防水仕様の靴やゲイターがあると快適。

雪解け後にはブユなどの虫が出ることがあるので、肌の露出は控え、虫除けを携帯するといい。花について詳しく知りたいなら、地元ガイドと一緒に歩くのもおすすめ。

おすすめスポット情報

史跡 佐渡金山
江戸時代から平成まで、約400年間続いた日本最大の金銀山跡で、2024年に世界文化遺産に登録されている。実際に使われていた坑道の中を歩くと、その迫力に圧倒される。プロジェクションマッピングを使った空間演出もあり、アドベンチャー気分も味わえる。
https://www.sado-kinzan.com/
新潟県佐渡市下相川1305
0259-74-2389

二ツ亀
島の最北端に位置する島で、2匹の亀がうずくまっているように見えることが名の由来。潮の満ち引きによって砂州が現れ、干潮時には歩いて島まで渡ることができる。初夏には島周辺の海岸線にカンゾウなどの花が咲き誇り、夏には透明度の高い海で海水浴も楽しめる。
https://www.visitsado.com/spot/detail0134/
新潟県佐渡市鷲崎