目標は1年で体重5%カット。健康的なダイエットの基本。
正しいダイエットはリバウンドをしない。そして目標設定を見誤ると失敗しがちだ。正しい指標と減量のルールを学び、健康的に理想の体形を目指そう!
取材・文/井上健二 撮影/北尾 渉 スタイリスト/高島聖子 イラストレーション/前田 麦、マエダユウキ 取材協力・監修/貴堂明世(管理栄養士)、河村玲子(管理栄養士)
初出『Tarzan』No.917・2026年1月5日発売

教えてくれた人
貴堂明世(きどうあきよ)/クオリーヴァ主宰。東京証券業健康保険組合にて長年メタボ予防の指導を担当。現在はフリーランスとして生活習慣病の食事指導、セミナー講師などを務める。
河村玲子(かわむら・れいこ)/1985年、東京都生まれ。メンタル&フィジカルサポートスーパーバイザー。全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会認定パーソナルフィットネストレーナー、管理栄養士。同志社女子大学卒業、大手フィットネスクラブを経て、独立。カナダで管理栄養士トレーナーとして活動し、ニューヨークでピラティスを学ぶ。フィジカルとメンタルに加えて栄養面でも専門的な指導が行える稀有な存在として人気。
ダイエットの基本のキを着実にマスターする。
ダイエットというと「あと10kg痩せたい」など、好き勝手にキリの良い体重を目標に定めがち。でも、いまの体重から何%痩せるかという発想の方が大事。
「何%痩せるかを指標にした方が健康的に痩せられますよ」(管理栄養士の貴堂明世さん)
減量で最初に落ちるのはお腹に溜まる内臓脂肪。内臓脂肪が溜まりすぎると、そこから分泌される悪玉ホルモンで血圧、血糖値、中性脂肪の数値が悪くなり、心臓病や脳卒中のリスクに。
メタボ検診で生活習慣の指導を受け、6か月で体重が3%以上減ると、血圧などすべての検診項目が改善する。別の研究(下グラフ参照)では、太っている人は1年で体重を5%落とすと心臓病で死ぬ危険度が下がる。まず5%減を目指そう。
80kgなら5%は4kg。「たった4kg?」と侮るなかれ。肝心なのはその5%減を維持すること。そのために1年かけて、リバウンドしない痩身術を会得したい。
減量で心臓病のリスクが下がる。

576人の肥満者を5年間追跡調査した日本の研究。3か月目で3%減からリスクが下がり、1年だと5%以上の減量で心臓病(心血管疾患)による死亡リスクが有意に低下。
出典/Front. Endocrinol(Lausanne).2024 Mar 27; 15: 1343153(一部改変)
1.減らす順番は嗜好品から。それ以外は体質に応じて。

太っている人は、ほぼ例外なく食べすぎている。運動不足も解決すべきだが、食べすぎにメスを入れない限り、痩せるなんて夢のまた夢だ。食事量を減らすときのポイントは優先順位を守ること。
重視したいのは、栄養バランスを崩さないこと。ご飯やパン、肉などの動物性食品を全面的に断つような極端すぎる制限に走ると栄養が偏るため、体調が崩れて食事もコントロールできなくなる。
まずお菓子やアルコール飲料などの嗜好品から優先的に減らす。甘いものもお酒も、カロリーはそこそこあるのに栄養に乏しい「エンプティカロリー」だからだ。
続いて自らの健康上の弱点に目を向ける。太った人はカラダのどこかに不安を抱えているもの。
「血糖値が高い人はご飯などの主食、高血圧なら塩分過多を招く麺類、中性脂肪やコレステロールが高めなら揚げ物などの動物性脂質を減らしましょう」(貴堂さん)
2.食事制限は1食100kcalずつのカットから。

摂取カロリーをどれくらいカットすべきか。それは体重をどのくらいの期間で何%減らしたいかで決まる。目安が欲しいなら、1日300キロカロリーずつ減らす前提でプランを立てる。
1日3食なら1食100キロカロリーのカットだからわかりやすいし、この程度なら空腹に悩まされず無理なく続く。それでも、時間をかけると大きな効果を発揮するのだ。
落とすべき体脂肪は1kg7200キロカロリー。80kgの人が5%=4kg減量したいなら、7200×4=2万8800キロカロリー減らす必要がある。1食100キロカロリー減でも、3か月(96日)で落とせる計算だ。
実際は摂取カロリーを削ると消費カロリーも減るため、計算通りにいかないが、日々の小さな努力が長い目で見ると大きな成果に結びつくのは間違いない。下に100キロカロリーの食品リストを用意したので、前項を参考に優先順位をつけて減らせるものを探そう。
【100kcalの食品リスト】
- ショートケーキ…1/3切れ弱
- アーモンドチョコレート…4個
- クッキー…3枚
- ポテトチップス…9枚
- アイスクリーム…1/3〜1/2カップ
- ビールコップ…1杯強
- 日本酒…1/2合
- ワイングラス…1杯強
- ご飯…2/5杯
- 食パン(6枚切り)…2/3枚
- 醬油ラーメン…1/5杯
- かけうどん・そば…1/4杯
- 唐揚げ…1個
- エビフライ…2本
- フライドポテトMサイズ…1/4
3.一汁三菜を覚えて食卓レベルで食事を整える。
カロリーだけではなく、食事の中身をどう組み立てるべきかを知らないと、栄養バランスが乱れやすく健全に痩せられない。
「大原則は、主食以外に、主菜、副菜2品、汁物をすべて揃える一汁三菜。下の写真のように、和食でも洋食でも、つねに一汁三菜が食卓に揃うように意識するだけで栄養の過不足がなくなり、食べすぎも抑えられるのです」(管理栄養士の河村玲子さん)
主食は糖質主体のご飯やパンなどで、主菜はタンパク質と脂質が摂れる肉や魚、卵や大豆食品といったメインのおかず。そして副菜と汁物ではビタミン、ミネラル、食物繊維の供給源となる野菜、きのこ類、海藻類などが摂れる。
一汁三菜という確かな羅針盤があれば、外食でも中食でも食事は整いやすい。たとえば、牛丼+味噌汁では、主食+主菜(牛丼の“頭”)+汁物は満たせている。足りない副菜を、サラダなどで2品追加すればいいとわかるのだ。
一汁三菜の代表例
【和食】

玄米ご飯160g、卵焼き、焼き魚、切り干し大根、小松菜胡麻和え、メカブとシメジの味噌汁
【洋食】

4枚切り食パン1枚、ハムエッグ、ツナのヨーグルトディップ、サラダ、トマトブロッコリーマリネ、きのこコンソメスープ
4.あなたが太っている4つの理由を潰す。
1.知識がない|標準体重と手ばかりで最適解を知る。
減量が不可欠なのは、肥満者だけ。身長と体重から求めるBMI25以上が「肥満」だ。BMI18.5未満は「痩せ(低体重)」でダイエットは厳禁。下の年代ごとの目標BMIを参照したい。
BMI22前後がいちばん死亡率が低いことから、BMI22のときの体重を「標準体重」と呼ぶ。標準体重がわかると、1日に摂るべき摂取カロリーもわかる。標準体重に、座業主体で活動量が少なめなら25〜30、仕事や家事などで活動量多めなら30〜35をかけるのだ。右の式を参考に計算してみよう。
続いて毎食の一汁三菜を構成する食材をどれだけ摂るかを把握する。役立つのは「手ばかり」だ。
主食は片手のひらカップ1杯で、主菜は片手のひら1枚分の肉か魚に、大豆食品か卵を追加。副菜で両手のひら分の野菜、きのこ類、海藻類を摂る。海藻類ときのこ類は汁物で補ってもいい。以上は毎食摂りたい分量で、この他1日に拳1個分の果物、人差し指と親指で作るL字分(コップ1杯分)の牛乳を摂れば100点満点。
【BMIの求め方】
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
*体重80kgで身長170cmなら、80÷1.7÷1.7=27.6と計算。
【目標とするBMIの範囲】
- 18〜49歳 目標BMI18.5〜24.9
- 50〜64歳 目標BMI20.0〜24.9
- 65〜74歳 目標BMI21.5〜24.9
- 75歳以上 目標BMI21.5〜24.9
出典/『日本人の食事摂取基準(2025年版)』
【標準体重と1日の摂取カロリーの求め方】
●標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
*身長170cmなら、標準体重は1.7×1.7×22=63.58kg
●1日の摂取カロリー(kcal/day)=標準体重×25〜35
*標準体重が63.58kgなら、63.58kg×25〜35=1589〜2225kcal
【手ばかりで毎食摂取する目安を知る】
2.目的がない|痩せたい理由を明確化。数字の細かい変化に惑わされない。
ダイエットの狙いは、言うまでもなく痩せること。でも、それだけだと体重や体脂肪率といった細かい数字ばかりが気になり、毎日が楽しくない。しかも体重も体脂肪率も水モノ。便秘やむくみなどで一時的に増えることも珍しくなく、期待通りに減らないケースもしばしば。それを目の当たりにするとモチベーションが落ちる。
大切なのは「何のために痩せたいか」を明確にすること。体力向上やスタイルアップなど、痩せたい理由がはっきりすれば、体重や体脂肪率といった数字の短期的な変化に一喜一憂しなくなる。
「減量目的でジムにいらっしゃるクライアントなら、私たちのような専門家がカウンセリングでより具体的な目標を聞き出すため、継続率も成功率も上がる。専門家の助けなしに減量に挑むなら、AIと“なぜ痩せるべきか”を対話して導き出すのもいいでしょう」
3.我慢ができない|「デブ味覚」を「痩せ味覚」にチェンジする。

食欲が暴走して食べすぎるタイプに特徴的なのは、甘いもの(糖質)、しょっぱいもの(塩分)、脂っこいもの(脂質)がたっぷりの、いわゆる濃い味を好むこと。
「それが“デブ味”。糖質、塩分、脂質は脳の報酬系と呼ばれる回路を刺激し、ドーパミンの放出を促します。それが“もっともっと食べたい!”という依存性を高め、我慢ができ“ない”状態へと陥れるのです」(河村さん)
ラーメンやポテチ(塩分+脂質)、洋菓子(糖質+脂質)が典型。食べすぎをセーブするなら、デブ味覚のスイッチを入れる食べ物を遠ざける。代わりに味付けの濃厚さではなく、旨みや食感を味わうことに注力するのだ。
ラーメンが恋しくなったら出汁の効いたうどん、洋菓子に手が伸びそうになったら食感のよい野菜サラダに置き換える。サラダを市販ドレッシングでなく、オリーブオイルとレモンで食べれば完璧。
そんな生活を2週間ほど続けるとデブ味覚が「痩せ味覚」へシフトチェンジ。過食が避けられる。
4.環境がない|時間を作って自炊をして、集中して食べすぎを防ぐ。
それぞれが置かれた生活環境もダイエットの成否に関わる。
一汁三菜を揃えたり、痩せ味覚へ導いたりするには、自炊の回数を増やすのが近道。でも、食材の調達や調理の時間が取れないと、自炊も容易ではない。
ただ時間は誰でも1日24時間。自炊する人だけに25時間が与えられているわけではない。
「時間がなくて自炊できない」というのは思い込み。時間割を作り、何に時間を使っているかを“見える化”すれば、SNSパトロールや動画視聴などに浪費している時間はいくらでも見つかる。その時間を削り、自炊の時間に回そう。
もう一つ重要なのは、食事に集中できる環境を準備すること。
職場でパソコンを叩きながらハンバーガーを頰張ったり、自宅でスマホを見つつテイクアウト弁当を食べたりする“ながら食べ”だと満足度に乏しく、知らない間に食べすぎる。職場でも自宅でも、専用の食卓で食べると、食事に集中できて過食は抑えられる。






