100mハードル・中島ひとみ選手。速さの秘訣は“連動するカラダ”!
ハードルを越えるたびに、肩甲骨と股関節が呼応する。その連動が、速さと軽さを生む。ハードル100m・中島ひとみさんの強さの秘訣についてインタビュー。
取材・文/井上健二 撮影/吉松伸太郎
初出『Tarzan』No.915・2025年11月20日発売

Profile
中島ひとみ(なかじま・ひとみ)/1995年生まれ。小学校の運動会のパフォーマンスを見た教師のスカウトで陸上強豪校へ進学。未完の才能を開花させて女子100mハードルのトップ選手に。2025年世界陸上東京大会代表。
ハードルは脚だけでは跳べない。
100mの間に、高さ83.8cmのハードルが等間隔で10台並ぶ。それが女子100mハードルという競技。日本記録は12秒69。中島ひとみ選手は、それに次ぐ12秒71という歴代2位の記録を持つ。
ハードルを始めたのは中学生。きっかけは陸上部の先輩がハードルを軽やかに跳ぶ姿を見て「カッコいい!」と素直に憧れたから。やってみてハマったのは、工夫次第で速くなれる要素が多いという競技特性に惹かれたためだ。

「ただ走るだけではなく、途中にハードルという障害があり、いかにスピードを落とさず越えるかというスキルを磨くのが楽しかった。だから今日まで飽きずに続けてこられたのだと思います」
技術面でポイントになるのは、何よりも股関節。
「ハードルを先に越える脚を“リード脚”、次に越える脚を“抜き脚”といいます。私がより意識しているのは抜き脚。多くの選手は横から回すように抜きますが、私は“縦抜き”といって正面気味に越える。股関節が少しでも詰まると縦抜きできないので、入念にほぐして競技に臨みます」
そして肩甲骨も劣らず重要。
「下半身だけの動きと誤解されがちですが、陸上は上半身が連動しないとスピードは出ない。鍵を握るのが、肩甲骨です。リード脚と反対の腕を前へ出し、抜き脚側の腕を後ろに引く。その際、肩甲骨から肘を畳むことが大切。腕が後ろに流れると、釣られて体幹がブレてスピードに乗れないのです」
目標は、圧倒的な日本新記録を出すこと。狙いは12秒50台だ。
「そのためには技術を磨くだけではなく、カラダ作りも大事。今年の世界陸上では海外選手の股関節まわりの逞しさに衝撃を受けた。持ち味であるバネのある走りに、海外選手のような股関節を生かしたパワフルな動きが加わったら、どうなるんだろう。そんな想像をするだけでも、まだ伸びしろがあるんだ〜ってワクワクが止まらないんです(笑)」

連動するカラダの作り方。
肩甲骨のストレッチ

リード脚と抜き脚をタイミングよく切り替えながらハードルを越えるために欠かせないのが、腕の付け根となる肩甲骨まわりの静的ストレッチ。膝立ちで片腕を地面で反対側へ伸ばし、肩を地面に近づけて周辺の筋肉をほぐす。
股関節のストレッチ

片膝を地面につき、反対の脚を前に出し、胸を大きく後ろに反らして腸腰筋などの股関節周囲の筋肉を緩める。この他、仰向けで片膝を胸に引き寄せたり、壁際にカラダをピッタリつけて片膝を引き上げたりする種目も行う。
股関節ドリル
多くの陸上選手が練習やレース前に取り組む定番の「股関節ドリル」。ハードルを越えるように脚を後ろから前、前から後ろに回して股関節の屈曲・伸展、外転・外旋、内転・内旋を一挙に行う。中島選手も中学時代から続ける。





