殺菌効果に優れた「朴」の葉は、ちまきと焙煎茶に。|12月のハーブ・朴葉

飛騨高山の朴葉味噌のように、郷土料理に用いられることも多い大きな葉っぱ。朴葉には、まだ知られざる可能性があると〈ハーブスタンド〉の平野優太さんは言います。緑の状態のまま収穫し、発酵させて味の変化を探求したり、枯れ葉を集めて乾燥させ、いろいろな料理に用いたり。新しい試みが、古くからの知恵と合わさって、新しい楽しみ方が生まれるのでしょう。身近な植物の可能性を紐解く連載「ワンモア・ハーブ」第14回は、朴について。

取材・文/村岡俊也 撮影/ナタリー・カンタクーゾ 提案/平野優太・北山詩織(HERBSTAND) 料理/阿部匠海

朴葉

朴は、かなりの大木になる落葉樹です。朴葉は、昔から岐阜、長野、飛騨地方などでよく使われてきました。

生葉の状態では、寿司を包む朴葉寿司が知られています。殺菌や防腐作用があり、昔の人は朴葉でおにぎりを包んで持ち歩いていたと言います。柿の葉寿司や笹の葉寿司などと同様に、葉が大きく包みやすいだけでなく、きちんと作用を理解して使っていたんですね。

それから冬になる前に落葉した枯れ葉も、香りづけによく使われています。ただし、落ち葉となり発酵、分解が進みすぎると土のニュアンスが強くなってしまうので、拾うタイミングも大切。味噌を乗せて焼く朴葉味噌が有名ですが、葉を加熱することによって、あの香ばしさが匂い立ちます。熱を加えて香りを引き出したところを蒸留するという方も。

朴葉には、古き良き知恵を現代の解釈と合わせて提案していく面白さを感じています。

こんなふうに使ってみるのはどう?

●「食べる」
朴葉ちまき

ー材料ー(2人前)

朴葉 4枚(前日に水につけて冷蔵庫へ)
朴葉のもどし汁 100g
豚肉 50g
好みのキノコ  半株
餅米 一合(150g)
白だし 20g
みりん 10g
にんじん 50g
米油 適量

ー作り方ー

きのこ、ニンジン、豚肉を大体5mm角に切り、米油をフライパンに敷き具材を炒める。さっと火が通る程度でOK。

もち米を加えて透き通るまで炒め、朴葉のもどし汁、白出汁を入れて煮詰めていく。

リゾットのような雰囲気に。汁気が多ければ、もう少し煮詰める。

朴葉の枝に近い部分をカットして、丸めやすい形に整える。

クレープ状に丸め、そこに具材を詰めていく。

葉と枝をつなぐ葉柄の部分を楊枝のように使って、袋を閉じる。

この状態で蒸し器に入れて、20〜30分ほどで完成。

竹の皮を使って包むことが多い「ちまき」ですが、今回は朴葉で和風のちまきを作りました。朴葉はあまり市販されていないので、自分で落ち葉を収穫し、乾燥させるというプロセスもぜひ楽しんで欲しいと思います。料理のポイントは、ドライの朴葉を柔らかくするために浸しておいた水を出汁のように使うこと。風味をできるだけご飯に閉じ込めていきましょう。それから、繊細さを活かすために、香りの強くない米油を使っています。前日からの準備が必要で、少し手間はかかりますが、日本の豊かな季節を堪能できる料理です。

●「飲む」
朴葉茶

―材料―

乾燥した朴葉 3枚ほど
お湯 適量

洗った後に乾燥させた朴葉を細かくして、弱火で焙煎する。フライパンでも可。分量は好みで。

焙煎のコツは、焦がさないように動かし続けること。

焙煎した朴葉に、お湯を注ぐ。しばらく置いて、色と香りが抽出されていたら完成。

焙煎は、茶葉やコーヒーでもよく知られているように、その度合いによって味わいや香りが変わります。ハーブスタンドでは、さまざまな植物を焙煎し、探究していますが、特に青臭さのようなものを飲みやすく変化させるには、焙煎が有効だと感じています。ただし深煎りしすぎてしまうと、その植物本来の個性も消えてしまいます。私たちは生産者でもあるので、その個性がより生きるローストを心掛けています。朴葉のお茶には、とても豊かな風味と、甘さがあります。ぜひ楽しんでみてください。

12月のハーブスタンドの様子

富士北麓はいよいよ冬本番に入り、草木は落葉し、動物達も冬眠に入り始めます。草木の冬芽が春に向けて寒さを耐え忍んでいます。