
Profile
川良謙太(かわら・けんた)/京都精華大学を卒業後、2015年に四条烏丸の路地裏にギャラリー&ショップ〈VOU / 棒〉をオープン。2019年、元印刷所を改装した仏光寺通のビル(通称・棒ビル)に移転。2024年には、四条大宮の元染工場を改装した建物に、飲食店&ショップ〈TAKI / 焚〉をオープン。それぞれの店舗で、アーティストの企画展示やオリジナルグッズの販売などを手がけている。
「昨年11月に新しい店〈TAKI / 焚〉をオープンしたのを機に、この自転車を買いました。それまでは徒歩での移動が中心で、行動範囲もかなり限られていたのですが、この店は〈VOU / 棒〉から少し離れた場所にあるので、自転車がないとなと思って」
そう話すのは、京都のギャラリー&ショップ〈VOU / 棒〉と、飲食と物販を組み合わせた新業態の店〈TAKI / 焚〉のオーナー、川良謙太さん。新しい生活のため、そして大きな仕事を終えた自分へのご褒美として、自転車を購入したという。
「自転車を手に入れた瞬間から、“どこかへ出かけたい”と思うようになりました。電車でも徒歩でも少し行きづらい場所に友人の事務所があって、そこへ遊びに行ったりしています」

鴨川には、サイクリングだけでなく、健康を意識してランニングをしに来ることも多いという。

イエロー×ピンク×パープルのポップな組み合わせは、街中でもひときわ目を引く。
友人の原こころさんが営むカフェ〈ha ra〉も、通いやすくなった場所のひとつだ。
「原さんとはプライベートで仲が良くて、一緒に飲みに行くことが多いんです。このカフェも自分の店からは少し距離があって、これまで2〜3回しか来られなかったんですが、自転車なら気軽に寄れるようになりました」
〈ha ra〉は、河原町五条で20年以上続き、2019年に惜しまれつつも閉店した名店〈efish〉で、最後の店長を務めた原さんが始めたカフェ。北大路にある〈珈琲山居〉で焙煎された豆で淹れるコーヒーと、季節の野菜を取り入れたオリジナルレシピのサンドイッチを味わえる。
「〈efish〉でわたしがいちばん好きだったライムジュースのレシピを引き継がせてほしいとお願いして、メニューに入れています。歴史のある店だったのでファンも多く、それを目当てに足を運んでくれる方もいらっしゃいます」と、原さんは看板メニューについて話してくれた。

何度も試作を重ねてたどり着いた、オリジナルの味。クリームチーズを塗ったパンに、サーモンと大葉、紫玉ねぎをサンド。オリーブやケーパーを刻んだタプナードソースが深みを添える。

テイクアウトもできるので、鴨川や京都御所で食べるのもおすすめ。グリルサーモンサンドイッチ ¥1,300。



物件を見つけてから、店の構想を練り上げた〈TAKI / 焚〉。元染工場の建物ならではの独特な造りが、唯一無二の空間を生み出している。空に向かって伸びる大きな煙突が、店の目印に。
〈ha ra〉から自転車で15分ほど行った先に、川良さんの仕事場のひとつ〈TAKI / 焚〉がある。
「僕は、アーティストの活動を発信できる場所をつくっています。ここではただ作品を見てもらうだけじゃなくて、お酒を飲みながらゆっくり過ごしてもらったり、食事をしながら話したりできる、コミュニケーションの場として、飲食店というかたちを選びました。敷地が広いから自転車も停め放題。少し不便な場所なので、自転車での来店もおすすめしています」

路地裏にひっそり佇む、隠れ家のような入口。

入口をくぐると、屋根付きの半屋外空間が広がる。夏は冷えたビールを片手に、冬は熱燗とおでんでほっと一息。
店内のショーケースには、デリのようにパック詰めされた惣菜が並ぶ。決まったメニューはなく、そのとき手に入る旬の食材で作られたさまざまな小鉢を提供している。酒類はビールや日本酒に加え、最近では漬け込み焼酎も置き始めた。
「オープン当初のラインナップは多くなかったのですが、お酒を飲みたい人が来るようになってきたので、それに合わせて仕入れるようになりました」

注文は室内のカウンターで。ここでも飲食が楽しめる。

写真集から読み物、漫画まで、ジャンルレスに並ぶアートブックの数々。

川良さんの目利きで厳選された、セレクトアイテムも並ぶ。
物販スペースには、さまざまなアーティストのZINEやアートブックが揃う。そして、川良さんが企画する〈TAKI / 焚〉のユニークなオリジナルグッズも目を引く。
「焚き火の『焚』の字をロゴに使っているので、マッチやライター、チャッカマンなど着火系のアイテムが多いんです。商品や飲食メニュー、作品の展示や店の内装も、まだまだ成長していくと思います。きれいに整えていくのではなく、必要なものが出てきたら足していく。そういう風に変化していけたら楽しいなと考えています」
そんな遊び心が、この店の空気をつくっている。

〈TAKI / 焚〉のオリジナルグッズは、このロゴが目印。

TAKI / 焚
●京都府京都市中京区壬生馬場町30-29|地図。金曜日18時〜23時、土曜日 10時〜23時、日曜日10時〜18時。月曜日~木曜日休。TEL 050-1114-5064。@takikyoto
いまや生活に欠かせない足となった川良さんの自転車は、〈Humhumhug Cycle Center〉で購入したもの。オーナーの崔 成優さんは、川良さんとの出会いをこう語る。
「もともと僕は〈VOU / 棒〉の客というか、ファンみたいな存在だったんです。移転前の〈VOU / 棒〉は、家の延長みたいな雰囲気で、初めて行ったときは衝撃を受けました。それ以来、〈VOU / 棒〉で買ったものを自分の店でディスプレイしたり、オリジナルアイテムを卸してもらったりしています。だから、川良さんに自転車を買いたいと言われたときは、めちゃくちゃうれしかったんですよね(笑)」


2人の間には深い信頼関係があったため、川良さんはフレームを選んだ後、ほとんど崔さんにおまかせしたという。
「いろいろなジャンルの自転車がある中で、90年代のマウンテンバイクを選んだのが、川良さんらしいなと思いました。なので、ハイスペックのパーツにはこだわらず、気取らず気軽に街を走れるよう組みました。いまっぽい小洒落た感じではなく、純正のサスペンションフォークに、幅の狭いハンドル、少し細めのタイヤを履かせて、小学生が乗っていそうなガチャガチャしたイメージですね」
さすが、川良さんの好みを熟知した、崔さんならではのセンスが光った一台に仕上がっている。

コーヒーカップを入れるためのドリンクホルダー。

このカンチブレーキは前後別々に購入できるため、カラーの異なる2つを左右で組み合わせて装着。先端にはサイコロの留め具を付け、細部まで大人の遊び心が感じられる。

クリップオン式の泥除けは、工具いらずで数秒で取り付けられる。膝上から背面全体をしっかり守ってくれる優れもの。

通勤にはいつもこのラックにカゴを装着する。荷物が少ないときは、簡単に取り外しができて便利。
2016年、御池通にオープンした〈Humhumhug Cycle Center〉は、グラベルやピスト、ママチャリ、子ども車まで扱う、“ちょっとおもしろい街の自転車店”だ。
「普通の自転車屋をやりながらも、あまりメジャーな感じにはしたくないんです」とオーナーの崔さん。その言葉どおり、店内はまるでおもちゃ箱のように、個性豊かなパーツやユニークな雑貨、アーティスティックなディスプレイで満たされている。

Humhumhug Cycle Center
●京都市中京区御池通室町西入西横町167-1WILL21烏丸御池|地図。11時〜20時。不定休。TEL 075-251-2211。@humhumhug info@humhumhug.jp
すっかり日常の相棒となった自転車は、〈TAKI / 焚〉を始めた頃はただの移動手段だった。けれど、気づけばそれは日々の行動範囲を押し広げ、思いもよらないところへと導いてくれる存在になっていたと、川良さんはいう。
「京都は盆地で坂道も少なく、コンパクトな街だから自転車で移動する人が多い。自転車好きもたくさんいます。僕自身も毎日自転車で生活するようになって、走るたびに、自分の世界が広がっていくことを実感しています」

〈BICYCLE SPECIFICATIONS〉
フレーム:Trek – 6500 ZX
リム:ARAYA – TM840F
タイヤ:Fairweather – For XC by CG
ヘッドセット:TANGE
ステム:Unknow (Made in Taiwan)
ハブ:SHIMANO – TOURNEY
クランク:Unknow (Made in Taiwan)
チェーンリング:Wolf Tooth
ペダル:Demolition
ハンドル:Unknow (Made in Taiwan)
グリップ:ERGON – GP1 BioKork
ブレーキ:DIA-COMPE – DC980 Retro Canti Brake
ブレーキレバー:Paul – Duplex Lever
サドル:grunge – Turbine Saddle
ラック:WholeGrain Cycles – Jack The Bike Rack
ドリンクホルダー:equipt – Clutch
フェンダー:ASS SAVERS – WIN WING 2 GRAVEL
スタンド:MINOURA – SL-30





























