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目標距離は何キロがベスト?初心者のためのランニングQ&A。

「歩き」や「速歩」に慣れてきたら、次は運動負荷の高い「走り」にも挑戦したい。“基本”を押さえればもっと身近に、さらに速く、遠くへと楽しみは広がる。フルマラソンの走破も夢ではないのだ。

取材・文/近藤直輝(MANUSKRIPT) イラストレーション/藤田 翔

初出『Tarzan』No.912・2025年10月9日発売

教えてくれた人

中野ジェームズ修一(なかの・じぇーむず・しゅういち)/日本では数少ない、メンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナー。理論的かつ結果を出すアプローチで多くのアスリートから絶大な支持を得る。2014年から青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化も担当。健康寿命延伸のため啓蒙活動も行う。

ランを始める前に!初心者の心構え。

ランを始める最初の一歩は、どう踏み出せばいいのだろうか。ランニングのエキスパートであるフィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんに、その道筋について聞いてみた。

「運動経験が少ない人は、息が弾む程度のウォーキングから入ってほしい。理由は2つ。ひとつはケガの予防が目的。漸進性の法則といって、いきなり強度の高い運動を行うと、故障するリスクが高まってしまう。だから、筋肉や関節に少しずつ負荷をかけて、カラダを走る状態に慣らしてあげることが重要です。

もうひとつは、歩くこと、走ることを習慣にするため。つまり、メンタル面での準備です。朝起きて顔を洗い、歯を磨くように、ランニングを生活に取り込みましょう。続けやすい時間帯で継続することが習慣化への近道です。

ランナーからよく、正しいランニングフォームとストレッチの必要性について質問を受けます。正しい姿勢を紹介する動画などを目にすることも多いですが、ランニングは動作を教えなくても動けるスポーツ。最初はフォームを気にせず、自分が楽に走れる姿勢で大丈夫。

静的ストレッチは欠かせないケアですが、ラン前に行う必要はありません。むしろ、アップ代わりにゆっくりと走り出して筋肉を動かしましょう。ビギナーにとって大切なことは、段階的に心身を馴染ませること。まずはタイムやフォームではなく、自分の走り方で楽しんでください」

自分と向き合い疑問が湧くようになったら、立派なランナーの証し。ランの悩みから食事、ご褒美ビールとの付き合い方まで、初心者が悩みがちなさまざまな疑問を、Q&A形式でご紹介。

Q.習慣化するにはどうすれば良い?

「走る」を“習慣化”するイラスト

A.日常のルーティンとして捉えること。

これまで走る日課がなかった人に意識してほしいのは、一日の中で無理なく続けられる時間帯を見つけてリズムを整えること。そして、ランニングを特別なイベントとして捉えないことも重要だ。

朝起きて走り(歩き)出し、シャワーを浴び、食事を済ませて仕事に向かう。そんな気持ちのいいルーティンを作り、義務感ではなく、心地よさを感じながら習慣化していこう。

Q.正しい姿勢やフォームを教えて!

走る姿勢をイメージする男性のイラスト

A.初心者に“正しいフォーム”は存在しない!

マラソンを見ていてもトップアスリートのフォームが一様ではないように、ビギナーすべてに当てはまる理想はない。骨格や筋肉のつき方には個人差があるから、無理な姿勢の矯正はケガを誘発しかねないのだ。

フォームが安定しない原因は、柔軟性や筋力不足にある。そんなときは、ストレッチやトレーニングで改善をするべき。カラダを素直に動かすことから始めてみよう。

Q.ストレッチのベストタイミングは?

ストレッチする女性のイラスト

A.ラン後が効果的。

ストレッチは、ケガ予防に欠かせないケア。準備運動として行わないと故障につながるイメージだが、中野さんによれば、ラン前の静的ストレッチは不要とのこと。むしろ、ゆっくり動き始めて筋肉の温度を上げ、心拍を高めていくほうがいい準備となる。ただし、アフターランの静的ストレッチは入念に。柔軟性を高めることは、疲労回復を早めることにつながっていく。

Q.ペースと距離、どちらを意識すべき?

カレンダーでランした日を記録するイラスト

A.まずは距離を第一の目標に。

ビギナーの目標はまず、月に30km。ペースは関係なく、姿勢だって気にしなくていい。週に数回、5〜10kmをコンスタントに走る人もいれば、週末だけ走るランナーもいる。大切なのは、コツコツ距離を積み重ねていくこと。最初は短くても大丈夫。月間の走行距離が80kmを超え、3か月ほど継続できたならば、フルマラソン完走も夢じゃない走力がついてくるはずだ。

Q.食前と食後、走るならどっち?

食事は走る前か後で悩む女性のイラスト

A.どちらでも大丈夫。目的によって走り分けを。

食前ランは脂肪燃焼に効果的。空腹状態で走ると、今ある脂肪がエネルギーとして使われやすい。ただし、強度が高すぎると筋肉まで分解されるので注意したい。食後ランは、血糖値が気になる人におすすめ。炭水化物を摂ったあと、血糖値がピークになる食後60〜90分で筋肉を動かせば、糖が消費され、血糖値の上昇を抑えられる。

Q.いつも何だか力みがち。脱力の仕方って?

力が肩に入って走る人のイラスト

A.力を抜くって実は難しい。「筋弛緩法」を実践。

力みすぎると筋肉のエネルギー源である筋グリコーゲンを消費してしまい、足が重くなったり、ペースが維持できなくなる。長距離ランでは、いかに脱力するかが重要。そこでおすすめなのが「筋弛緩法」というリラックス方法で、トップ選手も実践するもの。筋肉を緊張させてから一気に力を抜くと、余計な力が入りにくくなる。

Q.足に違和感を感じたときは?

A.「しない」もトレーニング。長期的な視点を持つこと。

ケガまでとはいかない、違和感を覚えることは珍しくない。テーピング機能付きのウェアを活用するのも手だが、大きな効果を期待するのは難しい。そんな時は、練習を控えて休息を取り、アイシングでケアを。温めたほうがいい部位を冷やしてもデメリットはない。

Q.アフターランのおすすめケアが知りたい!

お風呂に入っている人のイラスト

A.基本、カラダは冷やすもの。温冷交代浴で疲労を軽減。

疲労で熱を帯びたラン後の筋肉は、長時間運転してエンジンがフル回転している車のようなもの。疲労を感じたら、とにかく冷やそう。そんな時、アイスバス(水風呂)と温かいシャワーを交互に使う交代浴が効果的。その際に意識したいのは、水風呂1分ならシャワー2分と、冷やした倍の時間で温めること。サウナもおすすめ。

Q.ランニング後にご褒美ビールはOK?

A.飲む前に必ず水分補給! 飲む量はほどほどに。

ラン後のお酒は清涼感があり、水分補給した気になりがち。しかし実は、血液中の水分は減っていて血栓ができるリスクも。まずは水やスポーツドリンクをしっかり摂ってからビールで労おう。アルコールの過剰摂取は筋肉量の減少にもつながるため、ほどほどに。