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筋肉と骨格の正しい関係性とは?カラダづくりの基礎知識。

カラダの歪みが生まれてしまうのは、主に筋肉と骨格の関係性が崩れた時。では正しい状態とは何なのか。カラダの中身を細かく掘り下げていこう。

取材・文/井上健二 イラストレーション/野村憲司(トキア企画) 取材協力・監修/柿崎藤泰(文京学院大学教授、理学療法士)

初出『Tarzan』No.910・2025年9月11日発売

教えてくれた人

柿崎藤泰さん(かきざき・ふじやす)/理学療法士。文京学院大学保健医療技術学部教授、医学博士。社会医学技術学院卒業。昭和大学藤が丘リハビリテーション病院、昭和大学附属豊洲病院などを経て現職。胸郭の運動分析、呼吸運動療法などが専門。

カラダの内側にまつわる基礎知識。

カラダの骨組みを作るのは他ならぬ骨。骨同士のジョイントが関節だ。そして骨には、関節を跨いで筋肉(骨格筋)が付いている。

骨格筋には、2つのタイプがある。骨格に近い深層で関節の安定性を高めるインナーマッスル(深層筋)と、体表に近いところで大きなパワーと稼働性を発揮するアウターマッスル(表層筋)だ。 上半身、体幹、下半身にそれぞれどんな骨と関節があり、いかなるアウターとインナーが関わるか。基礎知識として知っておこう。

上半身と体幹部分の基本的な構造。

前面

上半身・体幹(フロント)

上半身と体幹のベースを作っているのは、背骨と胸郭。背骨は頸椎、胸椎、腰椎という24個の椎骨が連なったもの。

胸郭とは、胸椎、肋骨、胸骨が作る鳥籠のような構造で、心臓と肺を守っている。胸郭の前面を覆うアウターは、胸の大胸筋。その奥には、呼吸に関わるインナーである肋間筋が控えており、胸郭を広げたり狭めたりする。

胸郭と骨盤の間に広がる空間は、いわゆるコア。骨ではなくて、腹横筋、骨盤底筋群といった多くのインナーで支持される。

サイド

上半身・体幹 (SIDE)

頭の重さは体重の約10%。65㎏なら6.5kgもある。それをしっかり支えるのは7個の頸椎。前方へ緩やかにカーブしている。

頸椎の周辺には胸鎖乳突筋、斜角筋群といった頼もしいアウターが揃う。側頭筋と咬筋は咀嚼の担い手だ。

頸椎に続く12個の胸椎からは、前方へ肋骨が延びている。胸郭の背中側には、逆三角形をした左右1対の肩甲骨があり、肩甲上腕関節(いわゆる肩関節)、鎖骨と作る肩鎖関節、胸郭と作る肩甲胸郭関節などを構成している。

背面

上半身・体幹 (BACK)

上半身・体幹の背中側のアウターには、正面より強靱な筋肉がラインナップされる。頭と首を支えて肩甲骨を自在に動かす僧帽筋、懸垂やボート漕ぎのように腕を引き寄せる際に働く広背筋などだ。

それらの奥には、肩甲骨と背骨をつなぐ菱形筋、肩甲骨と上腕骨を結ぶ棘下筋や小円筋といったインナーが走る。肩関節を覆うのは、腕を思い通りに操るアウターの三角筋。筋膜は骨と筋肉に次ぐ「第3の骨格」。胸腰筋膜は体幹のインナーと連絡して安定度を上げる。

下半身の基本的な構造。

前面

下半身 (FRONT)

下半身の骨太なフレームを築くのは、骨盤と両脚の大腿骨。大腿骨の丸みを帯びた先端が、骨盤両サイドの窪みにハマったものが股関節。立って行う動作のほぼすべてに関わる。

体重を支えるため、下半身には全身の筋肉の3分の2ほどが集まる。なかでも強力なのは、太腿前側のアウターである大腿四頭筋。膝を伸ばし、脚を前に上げるときのように股関節を屈曲させる。インナーの腸腰筋は腰椎、骨盤、大腿骨を結び、体幹と下半身をリンクさせる大事な筋肉。

背面

下半身 (BACK)

お尻のフォルムを作る大臀筋は骨盤を立て、中臀筋とともに直立二足歩行に欠かせない存在。大臀筋と、太腿後ろ側のハムストリングスは、脚を後ろに上げるときのように股関節を伸展させる。以上はすべてアウター。

大臀筋の奥には、深層外旋六筋と総称されるインナーが潜み、股関節を安定させる。ふくらはぎのアウターの腓腹筋とインナーのヒラメ筋は足首を曲げる筋肉で、歩行やジャンプに関与。腓腹筋とヒラメ筋と足の骨をつなぐのが、アキレス腱だ。

筋肉が骨格をコントロールする仕組み。

筋トレを効かせるコツは、狙った筋肉だけを単独で動かして鍛えること。でも、現実には、いかなる筋肉も単独行動をしていない。複数の筋肉がタイミング良く協調しながら機能し、骨格を巧みにコントロールしているのだ。

ここでは、そんな筋肉たちの見事な協力が生み出す骨格のシステマチックな動きのうち、典型的なものを紹介しよう。何らかの歪みにより、これらの仕組みに支障が生じることにより、さまざまなトラブルや不調が噴出してくる。

上腕肩甲リズム

上腕肩甲リズム

腕の付け根は肩ではなく、肩甲骨。なぜなら、腕を上げ下げする際には、肩関節と同時に肩甲骨が稼働するから。これを「上腕肩甲リズム」と呼ぶ。肩甲骨はほぼ筋肉のみで支えられており、その分だけ自由度が高い。その特徴を活かし、腕の動きをアシストするのだ。腕と肩甲骨がシンクロして動く割合は2:1。

たとえば、「気をつけ!」をするように体側に下ろした腕を真上まで上げると、腕は計180度稼働する。そのうち120度は腕が中心から外側へ開く肩関節の外転、60度は肩甲骨が上向きに回転する上方回旋で生み出される。

肩甲骨の動きが悪くなり、この連携プレーが乱れると肩関節の負担が増えて腕の動きが制限されたり、肩こりの引き金になったりする。

下行&上行運動連鎖

下行&上行運動連鎖

骨盤から下の下半身でも、骨盤、股関節、膝関節、足首(距骨下関節)がドミノ倒し的に連鎖する。それには大きく分けると、骨盤から足首へと下向きに連なる「下行運動連鎖」と、足首から骨盤へと上向きに連なる「上行運動連鎖」がある。ここでは一つずつ取り上げてみよう。

骨盤が前傾すると、下行運動連鎖は股関節が屈曲・内転(内側へ近づく)・内旋(内向きに回る)→膝関節が伸展・外反(内側に入る)・内旋→足首が底屈(爪先が下がる)・回内(足裏が外側を向く)となる。

上行運動連鎖では、足首が回外(足裏が内側を向く)すると、膝関節が伸展・内反(外側を向く)・外旋(外向きに回る)→股関節が伸展・外転(外側へ開く)・外旋→骨盤が後傾となる。

腰椎骨盤リズム

腰椎骨盤リズム

上腕肩甲リズムで肩関節と肩甲骨が助け合って働くように、腰椎と骨盤も連動している。もっともポピュラーなのが「腰椎骨盤リズム」。これは上体を前後に倒すときの腰椎と骨盤の連携だ。脚の付け根の股関節も、このリズムに一枚嚙む。

具体的には、前屈するときには腰椎が先に曲がり、次に骨盤が前傾して、最後に股関節が屈曲する。そこから上体を起こして元に戻す局面では、まず股関節が伸展したら、次に骨盤が後傾し、最後に腰椎が伸展する。

このプロセスのどこかに不具合があると、体幹のトラブルに直結しやすい。一例を挙げると、骨盤や股関節がサビついて動きが悪くなっていると、その分だけ腰椎は過剰な屈曲・伸展を強いられる。それにより腰痛などが起こりやすいのだ。

こんな症状は要注意!怖い歪みの話

●負担の少ない骨格で一生モノの軟骨を守る。

どこかに歪みがあると、関節には不自然な重みや負荷が加わり続ける。すると、関節の間でクッションの役割を果たしている軟骨に変性や摩耗が生じる。

軟骨は血管網に乏しく、新陳代謝も超遅いため、一度機能不全に見舞われると復活できない。結果起こるのが、変形性膝関節症など。かけがえのない軟骨を守るためにも歪み解消はお早めに。

●モンローウォークは股関節からのSOS。

仮に意図せずしてお尻を左右に振って歩くモンローウォークをしていたら、股関節まわりに異変アリかも。この歩き方は理学療法の世界では「トレンデレンブルグ歩行」と言われる。

軸脚側の中臀筋の筋力低下などで、地面から離れている側へ骨盤が落ち込み、お尻を振っているように見えるのだ。股関節から歪みを整えるエクササイズを実践して。