カラダからのアラートを正しくキャッチ!疲労を可視化する4つの方法。

自分では休む必要がないと思っていても、実はカラダは悲鳴を上げていることもある。疲労を“見える化”してしっかりと休むべし。

構成・取材・文/神津文人 イラストレーション/Hi there 取材協力/倉恒弘彦(医学博士、FMCC代表取締役社長、疲労科学研究所取締役)

初出『Tarzan』No.908・2025年8月7日発売

疲労とは“カラダからの危険信号”だ!

疲労および疲労感は、カラダからの“休養せよ”というアラート。無視し続けると、どこかでカラダがクラッシュしてしまう。

「厄介なのは、疲労感なき疲労なのです」と、疲労科学研究所の取締役で医学博士の倉恒弘彦先生。

「仕事に対する満足感が高かったり、周囲からの期待を感じたりしていると、ドーパミンの分泌が高まり、アラートを打ち消してしまいます。これが疲労感なき疲労の正体。自分では元気だと思っていても、カラダは極度の疲労状態ということが起こり得るのです」

過労死にも繫がるリスクがある、疲労感なき疲労。疲労が可視化できれば、その進行を防ぎ、必要な休息をとることができる。

疲労は目に見えないものと思っている人が多いかもしれないが、実はさまざまな手段で“見える化”することが可能だ。

アナログなものから、最先端テクノロジーまで。自分に適した方法で疲労を数値化し、早めのリカバリーを心がけよう。

1.VAS検査で疲労感を簡単セルフチェック。

疲労感を評価する検査として臨床の現場でも使われているのが、VAS(Visual Analogue Scale)。今、自分が感じている疲労感を直線の左右両端に示した感覚を参考に、10cmの直線上に印をつける。若い頃の自分、風邪をひいたときの自分との比較ではなく、今現在の絶対的な感覚で、評価するのがポイント。

疲労感VAS検査

記入例

印をつけた部分と左端との距離を測り、30mmを超えていたら30点。70点を超えたら注意が必要。

2.「自己診断疲労度チェックシート」でより詳しく疲労レベルを確認。

慢性疲労症候群の診断基準に記載されている身体症状と精神神経症状を基に、倉恒先生が作成した「自己診断疲労度チェックシート」。健常成人120人と慢性疲労症候群患者127人の結果を基に、有用性も検証済み。

疲労状態が改善すると、チェックシートの結果も改善する。定期的に疲労状態とその変化を確認してみよう。

自己診断疲労度チェックシートの計算方法

1.A/B各10項目の質問に当てはまる回答の点数を記録。
全くない(0点)
少しある(1点)
まあまあある(2点)
かなりある(3点)
非常に強い(4点)

2.A/Bそれぞれの合計点(各40点満点)を計算。

3.総合点(A+B)を計算。

A.身体的疲労のチェック

1.微熱がある。

2.疲れた感じ、だるい感じがある。

3.一晩寝ても疲れが取れない。

4.ちょっとした運動や作業でもすごく疲れる。

5.筋肉痛がある。

6.このごろカラダに力が入らない。

7.リンパ節が腫れている。

8.頭痛、頭重がある。

9.喉の痛みがある。

10.関節が痛む。

B.精神的疲労のチェック。

1.よく眠れない。

2.ゆううつな気分になる。

3.自分の体調に不安がある。

4.働く意欲が起きない。

5.ちょっとしたことが思い出せない。

6.まぶしくて目がくらむことがある。

7.ぼーっとすることがある。

8.思考力が低下している。

9.集中力が低下している。

10.どうしても寝すぎてしまう。

合計点からの判定表
安全ゾーン 要注意ゾーン 危険ゾーン
男性 女性 男性 女性 男性 女性
A.身体的評価 0〜7   0〜8   8〜11 9〜13 12以上 14以上
B.精神的評価 0〜9   0〜10 10〜12 11〜15 13以上 16以上
総合評価
(A+B)
0〜16 0〜19 17〜22 20〜28 23以上 29以上
評価
安全ゾーン 要注意ゾーン 危険ゾーン
身体的評価 身体的な疲れはあまりないようです。この状態を維持するように心がけましょう。 少しカラダがお疲れのようです。休息をとって回復に努めましょう。 この状態が1か月以上続いているのなら要注意。半年以上続く場合は何らかの病気である可能性が高いと思われます。医師と相談しましょう。
精神的評価 精神的な疲れはあまりないようです。この状態を維持するように心がけましょう。 少し精神的な疲れがみられます。心のリフレッシュやリラックスを心がけましょう。 疲れに伴う精神症状が強く認められます。長く続くようでしたら専門医と相談しましょう。
総合的評価 全般的な疲れはあまりないようです。この状態を維持するように心がけましょう。 少し疲れがみられます。身体的評価、精神的評価を見てみましょう。 かなり疲れが溜まっているようです。身体的評価、精神的評価を見るとともに、長く続くようでしたら医師と相談しましょう。

3.自律神経の状態を機械で計測。

「自律神経については、心電図や脈波などを用いて心拍の周波数解析を行うことで、交感神経や副交感神経の活動や、自律神経バランスを客観的に判定することが可能です。そして、自律神経機能の変化を客観的に評価することで、疲労やストレスの状態を推測することができます」(倉恒先生)

たとえば、物流大手の〈ロジスティード〉では、自律神経機能を測定してトラックドライバーの体調、疲労度をチェック。車両挙動データなどと併せて分析し、リアルタイムでアラートを出し、事故防止に役立てている。

また、医療機関でも自律神経機能の測定を疲労の検査に用いるところが増加中。今後、より一般化していくことになりそうだ。

《VM600》自律神経を測定し脳疲労度とストレス度を可視化することができる。

《VM600》

《VM600》アプリ

《VM600》での測定結果は、連携しているスマホアプリ上に表示される。

医療機関やスポーツクラブに導入されているほか、企業での健康管理などに活用されている。本体価格220,000円。サーバー利用料3,300円(月額)。WEBサイト

4.酸化ストレス・抗酸化力の検査も有効な手段。

血液検査で、酸化ストレスと抗酸化力をチェックすることで、疲労状態を確認することができる。

「酸化ストレスは、急性疲労の場合も、慢性疲労の場合も値が高くなります。酸化損傷からカラダを守る抗酸化力が低いと、慢性疲労に繫がりやすく、急性疲労時は酸化ストレスとともに高くなる傾向があります。この2つの値から、疲労具合、疲労の種類を知ることができます」(倉恒先生)

酸化ストレスと抗酸化力を調べる血液検査は、医療機関で受けることができる。人間ドックなどとセットにして、定期的に調べてみるのもいいだろう。

〈MIクリニック〉(大阪府豊中市)で行われている「酸化ストレス測定」。

少量の血液サンプルから酸化ストレス度、抗酸化力を同時に測定できる酸化還元分析装置。

〈MIクリニック〉

血中の酸化ストレス度、抗酸化力を測定。評価とレポートがもらえる(より詳細なレポートあり)。テストの所要時間は30分程度(結果は後日郵送)。9,900円。WEBサイト